ほのかちゃんには幸せになってほしいの…。
「いたいけ」の意味に触れた上で、いじめの物語が始まる。何と残酷な幕開けだろうか、弱弱しく反抗の意思を見せることすらままならないほのかちゃんを見つめるのが序盤から既に辛かった。
そんな彼女と罰ゲームで付き合い始めた主人公に対しては勿論、良い印象は抱かず故に選択肢では毎回苦しめられた。本作には純愛√と陵辱√あり、どちらを先にプレイするかに特に制約はないだが、個人的には先に陵辱√やったほうがいいかなと。まあ当然といえば当然なのだが…。
陵辱√は非常に辛い。何が辛いって、選択肢が本当に可哀想で仕方ないのだ。陵辱描写はそこまでで、それはほのかちゃんもが案外、まんざらでもない表情をする時があるからである。そこに救われるというのは言い過ぎだが、そこまで不快感も沸きあがってこない。
必死に主人公への好意を見せてくる彼女に対して鬼畜な選択肢をし続けなければならない、それは苦行以外の何ものでもない。せっかく作ってくれた弁当を食べなかったり、いじめられている彼女を助けなかったり、また逆にいじめたり…。それらの行為自体もそうだが、何より彼女の反応が辛い。
泣いたり嫌がっている姿はまだいい、真に辛いのはそんな状況下にあっても主人公を想い、優しく微笑む瞬間だ。罪悪感に押し潰されそうになる。
そんな険しい道を歩んだ先に待っていた純愛√は本当に素晴らしかった。ただ彼女の想いが報われるだけでなく、主人公の成長が見ることができたり、スカッとしたり…最高の花道が用意されていた。
純愛√では弁当も食べ、手助けもしてやり、しっかりとデートもしてくれる。陵辱√の時の反応と比べるとくるものがある。心の底から笑う彼女が眩しくって眩しくって…。初めてトリプルチーズバーガーを食べて、初めてプレゼントをもらって…。その光景は幸せという他ない。個人的に陵辱√では髪留めをしていないなどの工夫があれば、もっと感動していたかなと思う。
また、謎だった「家の人」…つまり恵美子さんの登場も良い。拓巳と付き合うようになってから変わったと、そう少し嬉しそうに語る彼女を見てじんときてしまった。
そして、変わったのはほのかだけではない。この作品がこんなにも良いものに感じたのはここにある。
「最近の秋吉殿は、なぜかは話しかけやすかったでござるからな」
「秋吉殿は、我々の憧れの男性像でござるからな」
おたく達が良いキャラしていた。そこには嫉妬心なんか存在しない、ただ仲良くなってみたいという感情のみがあって、とてもとても温かい。引っ越しの話を聞いて残念そうする姿もすごく良い。
陵辱√では誰とも別れの言葉を交わさず学園を去った主人公が、この√ではみんなから別れを惜しまれている。なんて素敵なことなのだろうか、その光景にうっとりしてしまった。
また、今まで散々、イラつかせてくれた奴らにもきちんと制裁が加えられていたのも素晴らしい。主人公がかっこいいのなんの。飯島と岩田にも容赦しなかったのが最高だ。ああいうタイプが一番憎らしい。
へーきだけど、へーきじゃない。実にほのからしく、二人らしい結末に涙。良かったね…良かったねと…ただただ涙が零れ堕ちていった。エピローグで若干冷めてしまったが、振り返ってみるとそこは徹底したかったのかなとも。何はともあれ素晴らしい作品だった。最後まで読み切って本当に良かった…。