内容のわりに雰囲気は明るく、話のテンポも良い。言ってしまえば無難な作品だなと、途中まではそう感じていたのだが…無難から脱してくれてありがとう。
タイトルを見てもわかる通り、ループモノでその周期は一日。どれだけお金を使おうと朝を迎えるとまた元に戻っている。何か問題を起こしても一日たてばまた元通り。まさにやりたい放題の世界だ。しかし、変化のない世界でやりたいことをやり続ければ飽きも来るわけで、心も踊らなくなっていく。
そんな世界に切り込みを入れたのが主人公のタイラくんであり、彼の存在がルーパーズ達を、物語を大きく動かしたわけだ。はじめはその真っ直ぐ過ぎる性格に思う所がなかったわけでもないが、読み終わった今では彼のようなキャラクター出なかったこの物語は生まれなかったなとすら思う。少なくともミアの心を動かすのは彼のようなタイプではない駄目だ。
本作のメインヒロインにあたるミアちゃんは序盤こそ感情の起伏が小さい静かなタイプだが、タイラの登場によりどんどん色を取り戻していく。元々の彼女も可愛らしかったが、よく笑いよく照れるようになった彼女はもっとだ。「宝探しの伝道師に任命された」とうっきうきで話す彼女が忘れられない。
そして、ミアのタイラに対する気持ちは次第に感謝から恋愛感情へと変わっていき、二人は恋愛関係になっていく。中盤辺りまでを読んだ感想としては、楽しくはあるが内容はやや薄めかなと。題材のわりに絶望感はあまりなく、あったとしても軽い感じで解決する。褒めるべき点と言えばミアちゃんのとてもとても可愛らしい事ぐらいだなと思っていた。
その後、ミアが残ることになり、皆が助ける流れを見てもそんなに心が躍る事はなくて、皆で集まりローラー作戦を決行する所なんかは少し良いなと感じたが、それと同時に彼らと過ごす時間がもう少し濃かったらもっと感動に浸れただろうなとも。ロープライスの作品なので短めなのは仕方ないが、盛り上げるには積み重ねが少々足りなかったかなと。展開としては物凄く好きなのだけれど...。
そして、物語はやがて終着点へと向かうわけだが、まあなんだか助け出して目を覚ました終わりだろうと思っていた。ただ、別にそれを悪いとは感じていなくて、作品の流れを見るにそれが一番綺麗で安全な着地だろうなと考えていた。
そうやってスタッフロールを見ながら自分の中で勝手に終わりを迎えていたものだから、最後のアレには思わず唸ってしまった。ここまで奇跡を積み上げてきてそんなことするなんて…最高じゃないかと、最後の最後ではじめて笑顔を浮かべることが出来た。本当によくやってくれたと思う。
やはりロープライス故の物足りなさはあるけれど、期待は大きく超えてくれたかなと思う。次回作も楽しみにしています。