妹を溺愛する兄と、兄を溺愛する妹。そんな二人の極めて純真なやりとりは、眺めるだけで心に潤いを与えてくれる。ぶっ飛んだ展開も含めて思った以上に好きになってしまった作品でした。ぐっごっ!
鎌倉を舞台に綴られる恋の物語であり、主人公が音楽を始めるためにギターを購入するところから物語はスタートするが、それはあくまで導入。描かれているのは個性が豊か過ぎるヒロイン達との恋愛と、それから妹との甘くて幸せな日々でした。恋の物語とは言ったものの、学園で交流を深めて付き合ってえっちして幸せな結末を迎える...といったその辺に転がっているような凡作とは違い、読めない展開が待ち受けていたりもします。そこら辺が本作の魅力の一つなのかなと思いますね。
中でもみりん√なんかはキャラクターも話も不思議ちゃん全振りといった感じで、読んでいてなかなか愉快でした。ギャグ要員ではなく、時たま核心を突くような発言をしたり、好意を伝えるときは真面目だったりするみりんちゃんがユニークでとても愛らしかったですね。迎える結末があまりにも自由過ぎて吹き出しましたが、個人的には嫌いじゃないです。
ヒロインとしてはさと子がやはり魅力的に見えたかなと。自身のシナリオこそ地味で面白みに欠けますが、立ち位置が恵まれていたと思います。主人公とだけでなく、るなとの絡みも結構好みで、主人公との関係性について、るなは気にしていないけれどさと子は気にしまくっているのが実に彼女らしくてよかったです。作中一の乙女といえば彼女でしょう。
とまあここまではヒロイン√について語ってきましたが、本作が真に素晴らしいのはヒロインとのやりとりではなく、攻略対象ではない妹ちゃんとのやりとりになります。序盤に妹がお嫁に行くことを想像し号泣し始める主人公を見た時は若干引きましたが、ふたりを見守っていくうちにどこか安心感を覚えていきました。とにかくらみかちゃんが魅力的なんですよね。
濁りの一切ない純真な妹キャラというか、だからこそ愛おしいし、そんな彼女を溺愛する主人公の気持ちが死ぬほどわかる。そして、そんな気持ち悪いお兄ちゃんを大好きならみかちゃんはやっぱり天使で...といった感じで幸せスパイラルが最後まで途切れなかった。なら攻略対象でないことに憤慨するのではと思いきや、そうはならないんですよね。あの幸せな空間をオタクのエゴで壊そうとするようなことは、あってはならないのです。
また、兄と妹だけでなく、父と母がとんでもなく仲良しなのもいいですよね。此の親にして此の子ありです。自然が生み出した甘い甘い空間でした。
雰囲気ゲーかと思いきや想像していた以上に色がある作品で、そこにちゃんと自分の好きな色も混ざっていたのが嬉しかったなと。妹を攻略できるから妹ゲー...みたいな近年の商業作品に慣れ親しんでいる身としては、なかなかに新鮮でしたし、楽しかったですね。隠れた良作に出逢えてよかったです。