性別種族問わず魅力的なキャラクターが揃っていた。故に生まれる不満もいくつかあるが、それを差し引いたとしても良い作品だったなと。本当に楽しい時間だった。
タカヒロ×wagiの新作ということでまあ発売の時が待ち遠しくて仕方がなかった。長く続いた真剣で私に恋しなさいシリーズも終わってしまって、寂寥感に押し潰されそうになっていた身としては、またこのコンビの作品をプレイすることが出来て心底嬉しい。
さて今回の話はファンタジー世界での嫁探しということで様々な女性キャラクターが登場する。一作品でここまで登場人物の多い作品はなかなか珍しいのではないかと。しかもモブがたくさんいるわけではなく、しっかりと可愛い子達が揃っている。まさに選り取り見取りな状況だったが本作におけるメインヒロインは三人。皇帝、元首、王とこれまた豪華な面子だった。
また、本作にはファンタジー要素として「天眷」と呼ばれる異能が存在する。神や精霊と契約することで使える力で、これが強ければ強いほど戦闘能力も向上する。そして、主人公も漏れなく天眷使いなのだが、彼が契約している相手が作中でも一二を争うほどの力を持っていて、ここぞという場面で発動して勝ちにいくというのがお決まりの流れだった。
まあチートみたいな強さだったが、ちゃんと制限が付いているのが面白いなと。三日間力を溜めなければならないというのはかなり重そうだ。他にも様々なチート級の天眷は存在するが、私はアレクサンドラの天眷が一番強力なのではないかと思う。なんて言ったって「時間」を自由に操る能力だ、弱いわけがない。作中でも出番こそ少なかったが大活躍を見せてくれた。というか彼女がいなかったら物語はBAD ENDで幕を下ろしていたのではないだろうか…。
さて、周辺設定についてはこれくらいで、ここから主に三つの√ごとに感想を語っていきたいと思う。
◆ノア
グランスター帝国42代皇帝であり、剣の腕は歴代最強と呼ばれる彼女。しかしながらその性格は明るく元気な無垢な女の子といったところで、親しくなるにつれて徐々に素の部分を見せていく感じが良かった。真面目な性格故に冗談が通じなかったり、喜怒哀楽が激しい所なんか非常に愛らしい。
そんな子なので主人公に好意を抱き始めてからは乙女らしさ全開でちょっとしたことで顔赤らめたり、自分でも知らぬ間に嫉妬心を抱いたりするなど、眺めていて頬が緩んでしまうような光景を幾度となく見せてくれた。(ちなみにコスプレのシーンはメイド姿がダントツで可愛い)
この√のお話はかなり平和で、変にシリアスが入る事もなければヒロイン達に危機が訪れることもない。ラニエロの誘いもしっかり拒否し、パンテーラに対しても制裁を加えた。本当に彼女が強い女性で良かったなぁと。弱くて父親に利用されて胸糞シリアスになる事を一番恐れていたので彼女の芯の太さに感謝すら覚えた。
また、天魔族との戦いではダミアンが命を落とすという一部衝撃的な部分もあったが、最終的には「殺し合い」ではなくあくまで「試合」として戦いを繰り広げていたので安心して読むことが出来た。ただ、主人公vsエンドゲームは気合が入っていて良かったが、他は少し簡略化され過ぎていたなと。カンニバルの処理が雑なのも少し気になった。
何はともあれ一周目に相応しい優しくてとっつきやすい内容だったと思う。熱さを感じる場面こそ少ないが、掛け合いとヒロインであるノアの愛らしさを前面に押し出したような話だった。
◆エリン
タリオ連邦の元首代理という立場であり、次の選挙で元首の座を勝ち取ろうとしているエルフ族の女性。切れ長の目とエルフ耳の相性は抜群で、まさに美しいお姉さんといった感じであった。
彼女自身も大変魅力的なのだが、彼女の仲間である「コルミージョ」の面々がまあ良い奴らばかりで、そっちに目が行ってしまう事も多かった。特に彼女達と主人公が共に旅をしているシーンは印象的で、「こんな凄い人達と巡り合えた」と感謝する彼を見てなんだかこちらまで嬉しい気持ちにさせられた。他のメンバーがエリンとの出会いを話し始める所なんかも含めて素敵なシーンだったと思う。
そうは言ってもやはりメインヒロインはこの人という事で、恋人の関係になったエリンの攻めにはやられた。お姉さんらしく攻めるだが、実は内心は恥ずかしくてたまらない。それをフェイブリスに指摘されたときの彼女の可愛らしさと言ったらもう。世界で一番可憐な117歳だ。
核となる話は元首争いの相手、すなわちイグナシオが深く関わってくるのだが、見た目のわりに心が脆く、敵としては小者過ぎた印象。ただ、巫蟲兵器の存在をあそこで見せてくれたのは大きくて、後にクロネ√で語られる説明もしっくりきた。にしてもタカヒロは本当に巨大メカが好きなようだ。
結末も悲壮感はない二人らしく明るい終わり方で良かったなぁと。ツッコミ所はあるが、あれくらいのオチが丁度良いと思う。二人には最期の時まで共に過ごしてほしいものだ。
◆クロネ
天魔族の主であり、作中でも最強と言っていいほどの戦闘力を有する彼女。この√ではまだ交友関係が出来上がっていない段階で主人公たちの出会うため、他√では見られなかった天魔王らしさを存分に堪能できる。
城内でのやりとりはかなり面白くて、エビータちゃんが凄く良い働きをしてくれたのは勿論の事、エンドゲームの口から明かされる神と人との関係、それから世界の成り立ちには目を引かれた。なぜ天眷が存在するのか、それを残した者と理由がきちんと書かれているが良かったなと。
また、エンドゲームの説明とペッター主張から主人公がクロネの弟であることが判明するわけだが、そこからはもう雰囲気がガラッと変わる。最強凶悪な天魔王は弟大好きお姉ちゃんにジョブチェンジした時の驚きたるや、どこに隠し持っていたんだと言わんばかりの凄まじい姉パワーに私もやられてしまった。あの鋭い瞳がまた魅力的なのだ...。
主人公とエビータをきっかけに人間を見る目が少し変わり、やがて三国会談を開かれると世界は平和そのものになって、敵対勢力なんて本当に一握りになる。個人的に嬉しかったのがラストは実に優しさに満ち溢れた女性だった件で、彼女のお話をもう少し詳しく読んでみたいと思ったくらいには彼女に惹かれていた。
ただまあ最後に解禁される√がそんな平和なまま終わるわけもなくて、全く予想外の所から最後の強敵が湧いてくる。ただポッと出てきて舞を破壊するのではなく、回想にて彼の身に起きた事実が語られる点が良かったなと思う。だからといって八つ当たりにも近いような行動をするのちょっとアレだが、その憎しみの大きさを見ても力の強さを見ても最終ボスに相応しいキャラクターだった。
本当に規格外な強さで天魔王様がやられてしまった時はどうなる事かと思ったが、我らが天魔王様はその程度で終わるようなキャラクターではないのだと、圧倒的な力を身に着け大怨霊たるウォルナにしっかりと裁きを下してくれた。彼女が駆け付けた際のBGMも抜群に合っていて、改めてこの√の主人公は天魔王様だったなぁと。
そして、ミンジャラとシャオンによる最後の仕上げが待っているわけだが…予想外に好きな展開がきて号泣してしまった。
ウォルナを消すとミンジャラも消えてしまう。それはこれまで共に過ごし、共に戦ってきたかけがえのない存在を失ってしまうことを意味する。それでも彼はやらなければならなかったのだ。「こいつを倒したい!」と、友が言っているのだから。
加えてミンジャラが最期に選んだ場所も実に彼らしいくて良いなぁと。
「ちっ、俺は伝説の天眷だっていうのに。娘一人の病気すら治せねぇ」
彼が漏らしたこの台詞を思い出すと尚更そう思う。本当に素敵な神様だった。
◆総括
√が三つに分かれているとはいえ共通している部分が多く、メイン以外のキャラも攻略はできるが尺がかなり短かったりするなど思う所はいくつもあるが、最後の最後に素晴らしい光景を見せてくれたので読後感は非常に良かった。次回作も楽しみにしています。