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asteryukariさんのCLEARWORLD -クリアワールド-の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
CLEARWORLD -クリアワールド-
ブランド
クリアワールド・プロジェクト
得点
63
参照数
1188

一言コメント

「近未来SFアドベンチャー」、そんな魅力的な響きに誘われてプレイしたら大火傷した。これは尺がどうとかそういった問題ではない。ひたすらに虚無。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「クリアワールド」と呼ばれる海中の世界が舞台であり、そこには多くの謎が隠されている。おまけに各キャラクターは固有の異能を持っている…これはそこそこ面白くなるのではと期待した。最悪、薄っぺらい厨二異能バトルがメインになってもいいかなとハードルも下げておいた。しかし本作はそこにすら到達しなかった。

主人公の言動がやや浮きがちだったり、登場人物の感情の切り替わりが急だったり、序盤の日常会話の時点で少し怪しさは感じていた。ただまだ何も起きていないので大丈夫、焦る時間ではないと心を落ち着かせながら読んでいた。

と思っていたらいきなり襲われ、友人が雷パンチを解放。若干、驚きつつもようやく物語が動き出したかと、先の話へ期待し始める自分がいた。今思えばここからが地獄のはじまりだったわけだ。

「帳 アリレザ」というわかりやすい悪役が出てきて、そいつがなぜ能力者を集めているか、スパークス粒子とは何かが前もって語られるのは良かったと思う。ヒロインである真空の親との繋がりが見えてくるのも面白い。で、戦闘が始まるわけだ。

「…なんだこれは」と、そう感じなかったプレイヤーは果たしているのだろうか。そのままの状態でも十分勝てそうな敵さんがさらにパワーアップして異形な姿に変身したかと思ったら、数十秒には自らの力に肉体が耐え切れず自壊する。とどめは真空が刺す形になっていたがそれでも開いた口は塞がらない。が、まだまだこんなものではない。

この作品の凄いところは同じような出来事をもう一度繰り返してしまうところだ。真打登場!といった感じで現れた新たなる敵。相手の能力をコピーするとかいう最強クラスの能力者がこれまたパワーアップを図る。そして失敗してそのまま消滅...。いい加減にしてくれと叫びたくなる。

この作品、確かに強敵は存在したのだが勝手に自爆していくので戦闘らしい戦闘がほとんどない。だから熱さなんて欠片もないし、達成感もない。ただただ広がり続ける無を前にして泣きそうになった。

加えて最後にはヒロインの不自然な退場が待ち受けている。唯一の楽しみであった「ヒロインを愛でる」という行為すら没収されてしまった。これにより続編への可能性が生まれたわけだが、私としては中途半端に終わったなくらいにしか感じなかった。お前たちの戦いはこれからかもしれないけれど、その戦いを見る気は…ない。



読んでいてこんなにも絶望した作品は久々だった。ただ、見方を変えるとネタの宝庫でもあるのでツッコミを入れながら読んだりすると案外楽しめるかもしれない。

今、私が最も欲している異能は過去に戻る力である。無論、この作品を購入する前に戻るための...。