ハードなSMを期待すると微妙だが、ちょっといい話が見たいなんて方には良いのかなと。ギャグに見えたシーンも見方を変えると...こういう作品もアリかなと思う。
開始数秒で全裸にロープを巻き付けた女が出てきたので困惑した。なるほど、緊縛とは名ばかりではないなと、納得と笑いが入り混じったような気分に。そう、一周目は笑えるだけの作品だった。ロープを没収された時の主人公の言い訳といい、待ってましたと全裸で駆け寄る静弓といい、二人は本当に私を楽しませてくれた。途中、シリアスな雰囲気になったと思ったら、五分後には「ご、ご主人様ぁ、あっ、あはぁ...」なんて台詞を吐くようになっているから困る。ああ、笑えるだけマシだったかなとそんな感想抱きながら読み進めていた。
TRUEでは恋人という関係になり、ダイエットのためにランニングに励む主人公と、それに付き合う静弓の姿があった。いい感じの雰囲気を作りながらも縛ることは忘れない、そのこだわりを見てまた一笑い。
そんなギャグじみた作品に思えたが、二周目をやって印象がガラッと変わった。ヒロインの心情描写が加わるだけあのギャグみたいなシーンの数が光を帯びてくる。勿論、心が震えるとかそこまではいかないのだけれど、一周目の時よりは確実に物語に見入っていた。
プレイ中のキツイ言葉責めが彼女にどう感じていたのか、それを知ると選択肢にも意味が表れる。選択肢はプレイヤーの判断ではなく、ヒロインの判断に見えてくるのだ。乱れることで本音を隠すか、それとも自分の気持ちを少しでも相手に分かってもらうか。その時の判断が結末を分けるのだと思うとなかなか面白い。
TRUEも話自体は同じなのだが、今回は両者の気持ちを理解した上で読んでいるので、二人の関係の深まりをより一層感じられる。行為による誤魔化しはしない、本音で語らい、分かち合うことでようやく恋人になれたわけだ。話も縄も締まりが良い。
なんだか普通に読めるラブストーリーだったので、読後は不思議な気分に。そういう優しい物語は要らないという人も多くいそうではあるが、私はギャグ以外の道が開けていくあの感覚がわりと好きだったのでこういうのもアリかなと。また、先ほども述べたが最後までタイトルの「緊縛」を忘れない点も気に入っている。予想よりだいぶ楽しめた作品だった。