ErogameScape -エロゲー批評空間-

asteryukariさんの星空鉄道とシロの旅の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
星空鉄道とシロの旅
ブランド
しらたまこ
得点
75
参照数
663

一言コメント

途中で何となく物語の結末が見えてくるけれど、静かに見守っていたくなるような作品。黒い所もしっかり描かれていたのが好みだったなぁと。素敵な旅でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

物語はとあるツアーに主人公が参加することで始まる。心地良い夜風に吹かれ、気ままな一人旅。この作品のキービジュアルを見た際に感じた通り、幻想的な雰囲気が魅力の作品だった。その後、様々な乗客と出会い、交流を深めていく事で彼らの物語もスタートする。

本作は一本道であり、選択肢こそあるが迎える結末は一つ。物語そのものも決して長いとは言えないが、内容を見る限り丁度良かったのではないかなと思う。キャラクターの説明やストーリーの背景などもっと語ってほしい箇所もいくつか存在したが、変な話の引き延ばし方をしなかった点は評価できる。

内容について触れていくと、序盤はお互いを知り、交流を深めるという部分に力を入れていたなと。スウェーデンからやってきた女の子や売れなくなった役者、それから仕事に疲弊した鉄オタ等々、年も立場も全く違う人々が集まっていた。

はじめはぎこちなかった客員たちだが車内でのちょっとした会話、それから停車駅での探索を経て仲を深めていく。みんなでバーベキューをやっているCGなんかはとても印象的で、終盤でも使われたりしていた。

そこに主人公の回想を挟み、ねりという女の子の存在を意識させながら話が進行していくわけだが、このねりという女の子がまあ可愛くて、容姿は勿論なのだが少し小悪魔的な感じの性格がまた主人公と合っている。

彼女は主人公の事をお兄ちゃんと呼んでいたが、本当に姉妹に見えるくらいには仲が良い。まあだからこそ、その後の事実を知らされた時は主人公と同じように悲しみを覚えたが、そこで物語の繋がりも感じた。

心臓移植の話が出てきた時点で物語の結末は何となく見えたわけだが、一方で他の人物たちについては謎が残ったまま。なぜこの列車に乗っているのか、役割は何なのか。そこをぜひ回収してほしいなと思いながらプレイしていたものだから、明かされた真実にはまあ驚かされた。こんな大胆なキャラクターの使い方ができるのは同人ならではなのかなと。思い切ったことをしてくれた。

このツアーの意味、それから列車が向かう終着駅が何かわかるとそこからはもう想像した通りの展開が待っているわけだが、変な方向に舵を切らず真っ直ぐゴールしてくれたのでホッとした。特に主人公の言葉には彼らの正直な気持ちが詰まっていて良いなぁと。ただ綺麗事を言って終わりではなく、自分たちの行いを反省しつつ送り出すというのがとても好きだ。

カルハの回収の仕方がぶっ飛んでいて笑ってしまったけれど、彼女の性格がよく出た行動とも言える。何にせよ話の系統は好きだったので読後の気分は悪いものではなかったかなと。世の中を生きにくいと感じる人々にちょっとした優しさを与えてくれる良い作品だった。