アホみたいなやりとりが笑いだけでなく様々な関係を築いていく。いつの間にか変態達を眺めることに心地良さを覚えるようになっていた。
シチュエーションをひたすら妄想日記なるものに書き続け、それが性欲を抑えるための代償行為にすらなっている主人公。こんな手遅れな奴をどうヒロイン達と絡ませ、恋愛に発展させていくのか。その答えに唖然とした。変態は主人公だけではない、むしろ変態じゃない登場人物の方が少なかったわけだ。いやぁ、恐ろしい。
変態同士ということで会話のほとんどが下品もしくは理解できないようなものばかりだった。ただ、この「下品」が多くの場面で「笑い」に繋がっていくのが良かった。二人の将来に関わる大事な話をしている時にもいきなりぶっこんで来る、このブレなさはむしろ好きで、ちゃんと作品の味が出ていたと思う。
千景をきっかけに様々なヒロインが主人公の周りに集まってきて、身体の関係を迫ってくる。タイトルに偽りない光景が広がっていた。貞操観念と独自のルールに基づき本番だけはやらないというのが何とも律儀で印象深かった。てな感じで所謂バカゲーなノリで話は進んでいくわけだが個別√を迎えると流れは変わる。
今まで積極的に迫ってきたヒロインが急に大人しくなって、赤面してあたふたしたりもする。その姿本当に可愛い。特にりのが好きだった自分としてはたまらなかった。彼女は元々、三人の中ではまともな方だったのもあって初々しい反応をたくさん見せてくれた。
再会してすぐ襲い掛かってきた彼女が、初体験を終えた後は恥ずかしさのあまり口数が減ってしまう。ここに来てそんな反応を見せてくるだなんて…あまりの愛らしさに笑ってしまった。そして、その後はやたらと「彼氏」の部分を強調して話すようになるのが何とも可愛い。
また、選ばれなかったヒロイン達はそのままフェードアウトするのではなく、略奪愛に燃えたりするから面白い。でも最終的に決してそんなことはしなくて、ぶつくさ言いながらも選ばれたヒロインの背中をそれとなく後押しするのがまた良い。千景ルートの最後なんかは凄く温かかった。
序盤は変態的な会話と豊富なエロシーンがこの作品の魅力だと思っていたが、それだけではなかった。変態だからこそ話ができるし、理解し合う事ができる。それを繰り返すうちに人間関係も深まってきて、やがては友人や恋人といった関係になっていく。それこそが本作の最大の魅力なのかなと私は思う。今まで周りに自分以上の変態がいない故に孤独だった。そんな人たちがやっと仲間を見つけたんだと思うとなんだか感慨深いものがある。
あの喫茶店だってはじめはもっと静かだったはずだ。でもどんどん変態が加わって賑やかになっていった。無論、その会話の内容はとてつもなく酷いものばかりだけれど、それを誰も悪くは思わない。有珠ルートなんかはその辺の良さが色濃く出ていたと思う。夜の客はお前らしかいないと口にしつつも、どこか嬉しそうな有珠さんを見てとても心が和んだ。
振り返ってみて思うのはヒロインと主人公の関係だけでなく、ヒロイン同士の会話も用意してくれたのが嬉しかったなと。変態同士で意気投合できる。まさにリアルエロゲシチュエーションだった。