絶えない笑いとテンポのいい会話。終始、安定感のある作品だった。ただ、マンネリ化しているように感じる場面もあったため、それを上手くケアできていればもっと良かったかもしれない。
五人のヒロインがいて、五本のルートが存在するものの、それらはすべてハーレムルート。思い切ったことをしたなぁと、今まで見てきてSMEE作品とはだいぶ異なった切り口にややたじろいでしまった。でもそれは本当に最初だけの話で、読み始めてからすぐにSMEEらしい会話劇が始まってホッとした。
プレイするタイミングが合致したというべきか、毒の吐き合いのようなやりとりの多くがツボに入った。光ちゃんなんかは容赦のない、それでいてセンスの光る言い回しを連発してくるため、彼女の出番がくるともうどこか期待の眼差しを向けている自分がいた。
また、単純に発生するイベント事も面白くて、特に好きだったのは召喚系のくだり。人妻美尻スライムにタピオカクソ女、そして不憫すぎる弟。どれも本当に好きで登場する度に笑いを誘われた。主人公達が人妻美尻スライムの利用価値に気付いた時は天才かと思ったほどだ。
そして重要なのがヒロイン達。ハーレムということで複数人で登場することが多いため、キャラクターによってはタイプが被ってしまうのではないかと思っていた。でもそんなことはなくて、皆個性的且つバランスの取れたヒロイン編成になっていたかなと。まあちょっと影が薄いヒロインなんかもいたが、そこは分岐後のルートが補完してくれる。
分岐する五つのルートは基本的にハーレムだけれど、最後はきちんといい感じに仕上げてくるのが嬉しい。また、そのルートの担当ではないヒロインの意外な一面が見ることができたりして、ハーレムという状況を生かしたやり取りも多く見られた。
だからまあ楽しいのだが、やはり五つも似たような内容だと「またこのやりとりしているなぁ」と思わないこともない。そこはもう少し工夫してほしかったかなと思う。ただ、先ほども触れたイベント事は面白くて、その時は食い入るようにして画面を見ていた。
以下ヒロインごとの感想。
●ソフィーヤ
ヒロイン達の中でも一際お嬢様らしい彼女は天然というか、弄られやすいというか、毎回毎回おもしろいリアクションをとってくれる。他がわりと攻めっ気の強い女性ばかりなので、目立つことはないが、ふと心を落ち着けたいときに彼女が目に止まった。
手紙のエピソードは主人公にとってもなかなか重要なものだったのだが、光の影響でやや影に隠れてしまってたような、そんな印象を受けた。私の気持ちが光に向いているからというのも大いにあるとは思うが、固有のエピソードとしてはちょっぴり弱かったかなと。
●マル―
秘書のような立ち回りをしていた彼女がヒロインになる時点でまあまあ驚きだったが、実の姉と来たからもう衝撃。「近親相姦?ああ、この世界じゃ普通にやっていることよ、さあ愛し合いましょう」な展開はむしろ清々しくて良いなと感じた。そのまま姉を武器に攻めていく様はとても私好みだった。
彼女の話を聞くことである程度の謎が解ける。親のことなどは案外サクッと語られていたが、彼女の本音が語られたのは嬉しい。姉として、家族としてずっと想いを続けていて、それは今も変わらないのだと。ほっこりするお話を見せてくれた。
●キキ
奴隷から国王の妻へと一気にのし上がった彼女。でも決して偉そうにすることはなくて、むしろこんな自分が~と卑下するのが彼女の常であり、個性であった。自分を動物のフンなどと形容し、病んでしまう彼女にはちょっぴり面倒臭さも感じるけれど愛らしい。
大人たちにこき使われていた彼女が、年の近い男性と出会い、自分から役に立ちたいと思うようになっていく姿は実に美しく、癒しだった。ラストのシーンではいつもの受け身な彼女ではない、妻として強い覚悟を示してくれた。こういった変化はとても素敵だ。
●シャルローネ
ふわふわして妖精さんみたいな見た目をしている彼女。でも実は小悪魔ガールという…すごく好きな奴だ。彼女の魅惑的なアプローチの数々は計算しつくされたもの。冗談だと分かっていても騙されてしまう主人公を見て同情した。そりゃこんなに可愛い娘に可愛く迫られたらどうしようもない。
恋するきっかけとしては彼女のお話がとっても好きで、ベタながらも心を鷲掴みにされた。小生意気な表面だけでなく、私という個人を見てくれる。泣くほど嬉しかった彼女の気持ちが良く伝わってきた。エピローグで見せる正妻らしい余裕も素晴らしい。
●光
もはや恋愛感情などあるのか疑ってしまうほど仲が良い幼馴染。下ネタ会話など当たり前のその関係はもはや夫婦のよう。そんな二人がどうくっつくのか、非常に見物だった。
自分を救ってくれて、記憶がなくなった後も自分のことを大事にしてくれたから。光が主人公に恋するきっかけとなったのは事件の存在が大きいが、個人的に印象的なのはバレンタインデーの回想。
「私くらい、あんたにちゃんと手作りチョコ、渡してあげようと思って」
それは決して同情からくるものではなく、彼の嬉しがる顔が見たかったから。恋している女の子ならではの行動に打ちのめされた。しかもこのエピソードは主人公視点でも使われているのが良い。実はお互いがお互いを想っている、その美しき恋愛模様を見て何とも言えない幸福感に包まれた。
諦め切れずに想い続け、ようやく報われた恋。最後に見せた彼女の嬉しそうな表情が忘れられない。