作品の全てを使って読み手を楽しませようとしてくる。楽しくてあっという間に終わってしまったけれど、とっても充実した時間だったなぁと。本当に、信じてよかった。
この作品が世に出るのをずっと、ずっと待ち望んでいた。そして、その期待に十分すぎるほど応えてくれた。本当に最初から最後まで”楽しい”が続いていて、それはやはり至る所で読み手を楽しませる工夫が凝らされていたからだろう。まあ、恐らく私は普通のノベルゲームだったとしても超絶楽しんで読んでいたとは思うが…。
まずはもはや宣伝文句にもなっていた大量のスチル。クリックで読み進めていくことの多いADVにおいてとっても贅沢なことをしてくれた。凄い良い絵だと思ってみていたらすぐ切り替わって、今度はもっと凄い絵が出てきたり。いろんな食べ物を次々と食べていくアルコのように、一枚一枚を噛み締めながら眺めていた。
次にカートゥーンアニメの導入。アニメーションはてっきり序盤だけだと思っていただけに、その作り込みと熱意には圧倒された。私自身、あまり馴染みのないものだったので、その映像はどれも新鮮で見入ってしまった。発売前に公開されていたムービーなんて何度再生したかわからない。おかげで発売前にもかかわらずBGMが頭に残り続けることに。
BGMも場面に合わせたものが使われていて、アニメやゲームパートの時は電子音、ノベルパートの時はピアノ基調のものから盛り上がる激しめな曲まで、それから挿入歌などなど。作品を構成する一要素として役割を全うしていた。歌の歌詞がとても良い。読後に歌詞を読み返すとまた幸せになることができる。
他にもパロディネタが仕込まれていたり、嬉しいゲームパートが存在したりと常に読み手を飽きさせない作りになっていた。スペースインベーダーゲームなんか久々にやったし、故にすごく面白かった。もっともっとやりたいとすら思ったほどだ。
そして勿論、お話の方も非常に良かった。なぜあんなに楽しく、気持ちよくプレイできたのか振り返ると、それは大前提として物語が面白かったからだなぁと。友達だったり、家族だったり、相棒だったり。一本道の物語の中には様々な温かさが詰まっていて、だからこそ感情の動きも活発になった。読んでいて元気をもらえるし、自然と涙が流れ落ちる。とっても素敵なお話だったなぁと、読後はぼーっとタイトル画面を眺めていた。そしたら…あんな仕様が…。
マルコとアルコ、今はこの二人が共に過ごしていた日々を思い出すだけでうるっときてしまう。でもそれは決して悲しさからくるものではなくて、本当に温くて優しい日々だったから。お宝探しに銀河を駆け巡り、お腹が減ったらご飯を探す。序盤の二人乗りでバイクを走らせるシーンなんかは非常に印象的だ。あの時見た何気ない景色も、取るに足らない会話も全てが輝いて見えてくる。
そして、それは当の本人たちも感じていたことであり、アルコも言葉では表せないその気持ちは何なのかと聞いていた。食って寝て食って寝て、自由気ままなアルコがあんな表情をするなんてなぁ…終盤の彼女達二人の会話はどれも読み返したくなるものばかりで、セーブとロードの使用が止まらなかった。”アンタ”、”あの子”呼びになってるのが本当にもう…。
感動を失わせることなく、それでいて彼女達らしさも残す。その素晴らしい締め方に感謝の気持ちが抑えきれない。ああ、この作品を信じて購入してよかったと、心から安堵した。
他にもイセザキ姉妹や恩田姉妹、それから噴水の水をがぶ飲みする人とかとか…好きなキャラクターはたくさんいたので、彼女達に焦点を当てた話もちょっと見てみたかったかも。
あんなにも楽しい時間を過ごしたものだから、読後はどっと寂しさがやってくる。こうして感想を書いていてもあの時感じたモノが蘇ってくるし、ついつい起動してしまう。最高のエンターテインメントと最高の物語をありがとう。