第一印象とは相反して、とても純粋な愛の物語が描かれていた。話の深みやシーンの質を求めていくと少し物足りないが、読後感はなかなか良かった。
「遊郭」というくらいだから中身にはあまり期待してなかった。もっと言えばえっちなだけの作品だと思っていただけに、その中身の充実具合には驚かされた。
出会いの場面は主人公の下衆さが際立っていて、期待の火も消えゆく勢いだったが、そこからの追い上げ方は目を見張るものがあった。はじめこそ文字通り人形である心音は主人公の快楽のためだけに存在であったが、身体を重ね、共に生活していくうちに心音にも変化が訪れる。
これが素敵で、本作最大の魅力であると思う。人間のように感情を表に出すようになって、今まで受け身だった彼女が自ら接吻や愛のささやきをねだるように。誰から命令を受けたわけでもない、自分自身で「したい」と思ったからこその行動だ。成長を遂げた彼女のを見て軽い感動すら覚えた。
また、彼女の陰で努力している姿というのも良く、健気で愛らしかった。
「お前とヤってるのはオナニーするのと何ら変わらねぇ。もう飽きた」と主人公が言い出した時は、お前がそんなこと言うのかと、怒りで腸が煮えくり返りそうになったが、こんなにも良い場面を生み出すきっかけになったのならば不問にしよう。
ただ道具のように扱われるだけだった彼女が成長し、絞り出した行動があの最後のDGを生んだのだと思うと、ああ、本当に良かったなと、喜びに包まれる。また彼女の事を想い、止まることを選択した主人公にも拍手だ。物言いは乱暴だったが、彼もまた彼女を人形ではなく、一人の女として見ているということがわかってホッとした。
心音というヒロインに魅入られてしまったからだろうか、彼女の事を想い、考えるだけで胸が満たされるような、そんな作品だった。これからも主さまのお側で幸せな日々を送ってほしいものだ。
最後に一言、からくり人形の摩訶不思議な膣内とはどれほどのものなのか、実に興味深い...。