彼女達の想いに触れ、共に寄り添っていくような話作りに好感を覚えた。本当に素敵が詰まっている。
ピロ水先生の絵はどこまで進化していくのだろうか、初めて本作のキャラクターデザインが解禁された時にぼうっと見入ってしまった。こんなヒロイン達の様々な反応、そして物語を見ることができる。それを考えるだけで早くプレイしたくてしょうがなくなった。
三人ということで案外早く終わってしまうかなと思いきや、一人一人に十分以上の尺が与えられていて、読後はとてつもない満足感に包まれた。そして、その満足感は当然、尺があるという理由だけ生まれたものではなかった。
単に可愛いヒロインとのいちゃいちゃらぶらぶを描くのではなく、それぞれのヒロインの内面に重点を置き、その変化を丁寧に描いてくれたのが本当に嬉しい。そしてその変化には勿論、主人公が関わっているということで、恋愛物語としての質も上がっていた。
共通パートはともかく、個別パートに入ってから初めてのえっちまでのスパンが前作、前々作と比べてかなり長めで、慎重に作ってあるなぁと感心してしまった。そのためシーン目的で購入した層の中には不満に思う方もいるのかなと思うが、私としてはもっと二人の関係に目を向けてほしいなと。特にちとせルートはステップの踏み方が本当に良かった。
以下ルートごとの感想。
●玲
突如、主人公の部屋に居候することになった従妹。クールでマイペースなその性格と容姿が抜群に合っていて、プレイ前からかなり惹かれていた。
物事に合理性を求めていた彼女が「恋」という非合理に出会う。戸惑いつつもそれに手を伸ばし、やがては嬉しすぎて涙が出るほど感情が動くようになっていく。その光景がとても素敵で、告白シーンではうるっときてしまった。
付き合ってからは口癖の「合理的」が非常に可愛い変化を見せる。
例えば
「さむい…でも、寒くていいです。くっつけますし」
「合理的です」
とか言い出したりする。萌え死にさせる気かよと、そう叫びたくなる。自分の感情に沿いつつ、それを肯定するかのように「合理的」という言葉を使う。何ともまあ可愛い女のになってしまったのか。
非合理を楽しめることは決して悪いことではない。世界が広がったのだと、それを心と肌で実感しつつ幸せな表情を浮かべる彼女がたまらなく可愛かった。エピローグのもし生まれ変わったら~のくだりも実に彼女らしくて良い。
●結灯
優しくて明るくて積極的で、そんな絵に描いたような美少女キャラだと思っていたらまさかの...だ。本作の中で最も心情変化が面白いキャラクターだった。故に一番好きなヒロインであるし、一番好きな話だったかなと。理想と現実の違いに悩む姿を見て、共感せざるを得なかった。
「頑張って演じ続けても…どこかで必ず破綻する。私を知れば知るほど、崩れてしまう」
本当の自分をさらけ出すのが怖い、そもそも本当の自分とは何なのか。考えれば考えるほどわからなくなっていくその問題に、彼女はずっと苦しめられてられていたわけだ。
そんな彼女は主人公への警戒心も高く、自分のことを何も知らないくせに!と攻略開始時とは全然違う態度を見せるようになっていく。本当の自分を知って幻滅してほしい。もうこれ以上関わらないでほしいというのがよく伝わってきた。
主人公は本当によく頑張ってくれた。あれだけの粘りと優しさを前にして落ちない女などいるはずがない。徐々に女の子らしい表情と反応を見せるようになっていく彼女を見てガッツポーズしてしまった。赤面顔がいちいち可愛すぎるから困る。
そして、このルートで最も評価しているのがいちゃいちゃで誤魔化さずにきちんと彼女自身を問題に向き合わせる点。親とのわだかまりもなくなり、みんなからは素の自分を受け入れてもらう。彼女にとってそれがどれほど嬉しかったことか。急に涙を流した理由がよく分かるし、彼女の気持ちに同調して貰い泣きしてしまった。
いい子じゃなくてもいい、自分のことを好きになって大切にできること。その方がずっと素敵なことであると、それに気付き満足げな表情を浮かべる彼女はこれまで見てきた中で最も美しかった。本当に気持ちのいい話を見せてくれた。
●ちとせ
主人公のことが大好きなお姉ちゃん。でもその「好き」は「家族」としての好きである。それがやがて「女の子」として好きに変わっていくというのが本ルートの見所だ。あれだけ密着する機会の多かった彼女が自身の気持ちに気付き、恥じらいを持つようになっていく姿は何とも可憐。もしかしたらヒロインの中で最も恥ずかしがっているシーンが多かったのではないだろうか。
そんな姿も魅力の一つだが、彼女の最も素敵なところは「女の子として見てもらうために努力するところ」だと思う。ひとりの女の子としてもらうために主人公と同年代の子が着ているようなカジュアルな服を着てみたり、主人公をその気にさせるために大胆な下着を用意したり。いかに恋愛に真剣かがわかる。流石は恋に恋する女の子だ。
えっちに関しても、まずは下着姿、そして裸を見せあい、お互いの性器を手で弄り合った末にようやく初えっちをしてくれるから嬉しい。初えっちができた嬉しさのあまり自分で赤飯を焚いてしまう彼女の可愛さよ…。
最後の未来云々のくだりには少々戸惑ってしまったが、暗闇よりも恐れていた「好きな人がそばにいてくれなくなること」の不安を払拭してくれたのだと思うと悪い気分にはならなかった。これからもずっと一緒でいられる、安心して笑うことができるようになった彼女を見てほっこり。
なんというか、ヒロイン達に負けないぐらい幸せな気持ちになってしまった。また、毎度のことではあるが、立ち絵や一枚絵だけでなくSD絵が可愛かったのも地味に嬉しい点の一つだ。総じて満足度の高い作品だった。