相変わらず好感度高いキャラクターが揃っているだけでなく、母と娘の関係に焦点を合わせて、時に切なく、温かいドラマを見せてくれた。素晴らしい旅路をありがとう。
環境周りについては前作と同様に素晴らしいので、そこの感想については割愛させてもらう。それよりもシナリオだ。今まで何となく消化不良感が残るシナリオばかりだったSEQUELシリーズだが、今作に関してはべた褒めするしかない。
まずは今回の仲間について、今回はなんと一作目の仲間であるラビィが再び旅の仲間として加わってくれる。これがめちゃめちゃ嬉しくて、シリーズモノの良さを生かしてきたなと、思わず笑みが零れた。そこに騎士娘のオーリスとスケベなシスター、そして盲目の少女レステアが加わった計四人の仲間達と共に冒険を歩んでいくことになる。オーリスは見た目通りの堅物娘だが、可愛い物には目がなく食欲も旺盛という可愛い一面も持つキャラクターで、私の好みドストライクだった。
本作の物語は種族の違いについて扱っており、蟲と呼ばれる存在が大きなキーとなる。蟲の長であるシンの登場から物語は本格化していき、衝撃の事実が次々と明らかになっていく。実験施設等が出てきた時から蟲化が人為的なものだとは勘付いてたが、レステアがああいった形で物語に深く関係していくとは思っていなかったので、レステアの過去語りが始まってからはもう終わりまでノンストップで読み進めてしまった。
もうとにかくアマルダとシンが良い母親すぎて、彼女達への理解が深まる度に唾を飲み込むのが痛かった。特にアマルダとの最期の別れのシーンは、まさに望んだ通りの展開&台詞が用意されていて、途中にもかかわらず涙を零してしまった。レステアの気持ちを考えると本当に胸が締まる。
暴走したシンが辿る末路も、レステアのことを考えると辛すぎる上に、物語としても決してハッピーエンドとは言えないのだが、本作のダークな世界観には合ったものだと思う。人と暮らす日常の喜びを噛みしめていて散っていくのが凄く良いなぁと。それで彼女が救われたとは言えないけれど、優しいお母さんのままで逝ってくれたのが嬉しかった。
といった感じで本編だけでもかなり良かったのだが、本作の凄いところは後日談でもこの母と娘の物語を描き切ってくれる点である。本編の主人公をレステアとするのであれば、後日談の主人公はオーリスであり、新たな地アルツェットを舞台に新たな冒険が幕を開ける。
物語のメインはアルツェットという国の仕組みについてであり、敵を倒しながら国を動かす者に迫っていく。面白いと感じたのはここでしっかりとシスマの妖精について絡めてくる点であり、実験を行っていた者だけでなく、レステアを傷つけた騎士やロニスの刻印についても繋がりが見えてくる。
そして、その裏で描かれるのはオーリスとその母オリヴィアの物語。なぜオリヴィアがこれまで冷たく当たっていたのか、どうしてアルツェットを離れろと言ったのか。その真意がエイオンに近づくにつれて見えてきて、彼女に対する情も深まっていく。オーリスもそれは同じで、表情は変えずとも徐々に母に対する態度が柔らかくなっていくのが実に良い。
また、そうやって母を信じてみようとオーリスを後押ししたのがレステアなのもずるいなぁと。自分はもう叶わらない夢なのに…だからこそオーリスには自分と同じ思いはしてほしくないと…本当に強い子だ。オリヴィアのツンデレな回答を聞いて「…よかったなぁ。」と笑みを浮かべるレステアを見て、嬉しくて泣いてしまった。
まさかこれほどまでに自分好みのシナリオが用意されているとは思っていなかったので、読後はしばらく興奮が収まらなかった。王道でハッピーエンドが約束されているようなRPGではなく、なりふり構わず他者に勧めるなんてことはできないが、間違いなく刺さるユーザはいると思う。改めて素晴らしい物語をありがとう。