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asteryukariさんの千の刃濤、桃花染の皇姫 -花あかり-の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
千の刃濤、桃花染の皇姫 -花あかり-
ブランド
AUGUST
得点
75
参照数
620

一言コメント

ここが面白いとか、感動したといった場面は少ないが、各々のヒロインが掴み取った幸せ、それを見ることができただけでそれなりに満足感があった。これからも皆が皆、幸せでありますように。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

12人ものヒロインが攻略できるのに加え、それぞれのヒロインに対応した余談も豊富に揃っているため、全体としてのボリュームは十分。ただ、それ故に個々のエピソードが短いものばかりだったので、特定のヒロインが熱狂的に好きな方なんかは不満が残るのではないかなと。

しかし短い時間の中でそれなりに幸せの風景が描かれているし、本編で仲の良かったヒロイン同士の絡みを再び見ることができたので満足はできた。本編の後日談ということで、盛り上がる場面こそなかったが、戦が終わってようやく手にした平和を噛み締めている場面も多数存在したので読んでいて気分が良かった。

特に古杜音√の話ではそれが顕著に表れていて、最後の一枚絵も平和な風景が広がっていた。「こんな風に笑顔に溢れる神殿を夢見ていたんです」こう話す古杜音の声色がどこまでも嬉しそうで、本編のことを思い出すとやはりたまらないシーンだったなと思う。

また、環境が落ち着いたということもあり、妻になることが多くのヒロインの√で描かれていたことも嬉しい。告白とそれに呼応するように喜びの声を漏らすヒロイン達を見て、良かったなぁと一息。

奏海√ではそれにプラスして奏海と滸の関係も描かれていたのが良かった。幼なじみだからこそ自分から言い出さなければならない。彼女達の親密さをひしひしと感じた。「悔しくないって言ったら噓だよ」なんて言葉を滸が口にしたのも嬉しい。お互いが正直な気持ちを吐き出すその光景が私にはとても心地よかった。

まあ滸ちゃんは個人的に武人らしい振る舞いをしていた頃が好きだったのだが、女の子らしい反応をする彼女が可愛くなかったかというとそれは嘘になる。余談にて宗仁の妻になった喜びを隠せない姿なんて非常にかわいい。


振り返ってみるとやはり少し攻略対象ヒロインが多かったかなぁと思うが、もしどのヒロインを削るかという話になったらユーザー間で戦争が勃発しかねないし、どのヒロインにも平等の幸せを与えるという意味ではこれで良かったのかもしれない。これからも彼女達には笑って生きていってほしいものだ。