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asteryukariさんのどっちのiが好きですか?の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
どっちのiが好きですか?
ブランド
HOOKSOFT(HOOK)
得点
77
参照数
2435

一言コメント

独特なシステムを取り入れつつ、それがうまく機能していた。手を抜かずにきちんと二つのお話を描いてくれた、それが一番の喜びであり、評価したい点でもある。中だるみを感じる瞬間もあったが、熱のこもった良い作品だったなと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「リードする恋愛」or「リードされる恋愛」
本作は一人につき二つの恋人関係が選択可能ということで、この新しい試みのせいで発売前から気になって仕方なかった。私はてっきり、結末が分岐するくらいだろうと考えていたのだが、読み進めて行くとそんなことはなくて、それぞれきちんと違う物語がそこにはあった。

シーンの構図なんかは似ているものがあったりもするが、基本的に使いまわしはしていない。特にCGの使い方が印象的だったなと。ただでさえ美しい一枚絵を分岐した物語に合わせてベストなタイミングで入れてくるのだ。丁寧に作ってあるなと思わず見惚れてしまった。

そして、個々の話のボリュームもしっかりしているから凄い。まあこれに関しては飽きが来てしまう人もいるとは思うが、私としてはとても嬉しかったなと。前作は一つ一つのお話が短かったのもあって、制作陣営の作品に対する熱を感じた。

また、話に満足できたかどうかに関しては、当然ながらキャラ及び選択によって異なっているので、個々の話について触れていきたいと思う。


●小柚子
成績優秀、人望もある、美人ということで男子から告白されまくりの高嶺の花。そんな彼女との出会いはまさかのナンパ。もう終わったんじゃないかなと思いかけたが、勿論そんなことはなくて、主人公補正で雰囲気も和らいでいた。そこに引っ越しイベントを加えてくるから恐ろしい。どん底から一気に頂点まで上り詰めた主人公なのであった。

この√の魅力は彼女の性格にあって、高嶺の花かと思いきや案外いじられた異質で、それに対する反応も面白い。後々ポンコツっぷり溢れる場面も多々出てきて、元生徒会長とは何だったのか、ただの可愛い可愛い美人さんだった。彼女がこんなにも素を見せるようになったのは距離が近づいた明確な証拠であり、見ていて心地良かった。

また、ここまで可愛いキャラクターに仕上がったのはまあ、声優さんの力が大きいだろう。相変わらずの安心できる声の張り上げ方に笑みが零れた。

分岐に関してはどちらを選んでも、お隣さんになって会話も増え、共にボケとツッコミができるようになった二人らしいとても自然なくっつき方をしていた。

でも肝心の中身は結構変わっていて、「リードする」を選んだ場合は彼女の弱さが目立つお話になっていた。自分で強いと思っていながらも実は寂しがり屋だったり、嫉妬深かったり。それを吐露する彼女が印象的だった。

変わって「リードされる」を選んだ場合はとても活き活きとしていて、主人公と付き合った後も変わらない反応を示してくれるのが嬉しかった。自分の夢に関してもとても前向きで力強い、ああ、やはりこの人はこうでなくてはと、そう感じるお話だった。お姉さんらしさ溢れる非常に私好みのものだ。

全√終えて小柚子について振り返ってみると、この娘との距離の縮め方が一番自然だったように感じる。ゼロからのスタートだからこそ、ここまで良いものに仕上がったのだろう。


●ハンナ
ヒロインの中では唯一別の学校に通う生徒。学園生活を共に送れない分、登場シーンが少ないかなとやや心配したものの、そんなことはなかったので安心した。また、彼女の場合、周りの存在が大きく話に影響していて、それが個人的に好きなポイントだったかなと。

ハンナ狂信者とも言えるほどハンナと仲良くしたい紫子は友人キャラとして、とても魅力的であったし、どの話においてもぶれなかったのが好印象だ。加えて妹のリサちゃんはというと…もう愛おしくて仕方ない女の子だった。足が不自由という設定をものともしないくらい明るく元気な女の子で、終始癒されていた。ハンナとの姉妹関係が良好なのも嬉しい。

「リードする」方では紫子を通じて家族の存在の大切さを再確認するような話であり、内容のわりに踏み込みは浅いなと思っていたが、そこは「リードされる」方の話でしっかりと触れてくれた。まあその話が好みだったかと問われると微妙なところではあるが…。


●摩耶
校内でも悪名高いドSな生徒会長。序盤のピアスの件では度肝を抜かれた。(あれは仕込みだったようでホッとした。)加えて非常に負けず嫌いで、何かと小馬鹿にしてくる光景を見て、果たしてこの娘が主人公と付き合って女の子らしく振る舞うことなんてできるのかと不安になった。だからこそ彼女の付き合い始めてからの変わり具合には唖然とした。なんなんだこの娘は…可愛くなりすぎだろ…と。

この娘のお話は基本的に日常の延長のような感じで、ひたすら仲睦まじい光景を魅せられ続けることになるのだが、不思議と不快感はない。なぜならこの摩耶という女の子があまりにも可愛らしい女の子だから。CGも特別なシーンというよりは彼女の魅力が光る瞬間に使用されることが多くて、使い方を見ても、絵の綺麗さを見ても作中で一番しっくりきた。

「リードする」を選んだ場合の彼女はあまり自分に自信がないようで、度々不安を零していた。周りなんて気にしないような彼女が実はとても気にしているんだと、それが意外だった。彼女もただの女の子だったわけだ。

まあその分、「リードされる」を選んだ場合の話は彼女らしさが存分に発揮されていて、見ていて気持ちがよかった。あまりのはりきり具合に主人公のツッコミが追いつかないことも多々あり、それが笑いを誘っていたかなと思う。最後の「どうも、あの時の女の子です♪」という台詞を発した時の勝ち誇った表情が忘れられない。やはり彼女は主導権を握っている方が合っている。


●芽愛
作中屈指のおバカ&いじられキャラ。すぐ騙されるし、すぐからかわれる。それなのにやけにハイテンション。人によっては「やかましい」だけで終わってしまいそうな子ではあるが、私はかなり好きなタイプの女の子だ。

彼女の性格は付き合った後も変わらなくて、間抜けな場面が多い。でもそこには確かに可愛さがプラスされていて、自ら墓穴を掘って赤面する時なんかは最高だった。この子も声優さんが抜群に合っていたと思う。

「リードする」側の話は不安を感じる彼女が多く映る、結末としてもわりとアバウトな感じになっていたが、彼女らしいといえば彼女らしいのかもしれないなと。

そして「リードされる」側のお話というと…めちゃめちゃ頑張っていた。言いたいことははっきり言うし、えっちには積極的だし、それでいて主人公が体調を崩した時には看病しに来たりもする。「リードする」側で自分のことを考えるだけで精いっぱいだった彼女を見ていると、凄い変わりようだ。なぜここまで変わったのか、それは主人公への信頼の気持ちが関係しているのだと思う。友人男子のアプリ―チを断る時なんかまさにそれで、本当に良い女に成ったなと、軽く感動してしまった。




全分岐を攻略して見て感じたのは、私が好きなのは「リードされる」方だということ。やはりヒロインが主導権を握る方が、そのヒロインの個性が出ていて好きだったのだと思う。