話にはそこまで過度な期待は抱いていなかったので、良かったとは言えないがまあこんなものかなと。でもシーンには想いを馳せていたので、単調且つ同じようなシチュエーションの数々を見て少し悲しみに包まれたり。数は十分だがもう少し質を上げてほしかった。ただ、あるENDでヒロインの心情の変化及びその気持ちの強さが伝わってくるなど良い部分も少しあったので、気分としてはそこまで悪くはない。
開幕早々、地球と異世界が融合してしているなんて衝撃的な事実をサラッと語ってくる。そして現在は異世界から嫁を貰うことが大流行しているという…。その波に乗るが如く主人公も異世界に向かったわけだ。
癒しを求めて異世界に向かったのに魔王の生まれ変わりだの、故に狙われているだの雲行きが怪しい話がどんどん出てきたが、結果的に何もなく主人公の思い通りに進んでいったのでホッとした。ただ、同時に面白い点も少なかったのが残念。
もっと魔王らしさが見たかったりもしたが仕方ない。というか各ENDを見てみると魔王にならないENDの方がしっくりくる、あるいは読後感の良いものが多かったので始めから魔王としての魅力なんてものは描く気がなかったのかもしれない。魔王という設定を使った方が面白くなりそうなのに、一般人のままの方が面白いという中々不思議な作品だった。
ヒロインはフィアちゃんとクロロウルードが好きだったのだが、どちらもただの奴隷のような扱いであり、そこに愛はなかったように見えた。ただ、シャルティエは良かった。流石は一番初めに出逢ったヒロインと言うべきか、恐らく彼女の性格が上手くはまっていたのだろう。あんなにも主人公を魔王にすることにこだわっていた彼女が、女として成長していく姿は見ていてなかなか心地よかった。
魔王の素質を失い、ただの人間に成り下がった主人公を愛する彼女。
「やっと気がついてくれたか?わらわは、本当に康介が好きなんだよ」
「わらわは、できるだけ康介の側に居たいと思っている」
あんな愛なんて言葉すら知らないような態度だった彼女がこんなことを口にしてくれるなんて。今までの彼女は「魔王」を愛していたが、今回は違う、康介という一人の男性を愛しているのだ。その事実に気付くと何気ない性交が一段と輝いて見えた。やっと本当の意味で彼らは愛し合うことができたのだ。
シーンについては結構期待していたモーション付きシーンが微妙だったり、ワンパターンなシチュエーションばかりなのが少し残念だった。スライムと触手を多用しすぎなのだ。多用しておきながらそこまで良いシーンでもないのが更に悲しい。あとこれは個人的な願いでもあるのだが、クロロウロードはもっと悪魔という設定を生かしてもよかったのではと思う。悪魔らしい妖艶な振る舞いが見たかったのだ。なんだあの受け身女は…。
総評するとそれなりに不満が募る作品だったが、キャラクターデザインは秀逸だったため、何となくこんなもんでいいかと思ってしまう自分いる。やはり見た目は重要だ。