実のところ三人攻略した時点ではもう駄目かなと、ほぼ惰性で読み進めていたのだが、ちゃんと待っていてくれた。彼女に出会えた事が作品においての唯一にして最大の喜びである。やはり幼馴染は強いのだ。
突然女の子がメイドを志願してきたり、獣耳のお姫様が転入してきたりと、導入から色々な要素を盛り込んでくる。読み進めていくと飼っていた猫まで人の姿に成り始めたりしてくるものだから序盤は中々楽しかった。
が、楽しかったのはそこまでと言わんばかりに退屈なお話、思わず首をかしげるようなお話が続いていく。正直なことを言うと、ヒロイン二人を攻略した時点では絵が可愛らしいことしか褒める点がなかった。このまま終わってしまうのかと、半ば諦めモードで読み進めていたのだが最後までプレイして本当に良かった。救いはあった。
以下√ごとの感想。
○ソフィア√
お姫様という立場でありながらその性格はとても親しみやすく、実際に主人公達の中に溶け込んでいた。生活能力がないというデメリットを上手く生かしてメリットに変えていたなと思う。勿論、積極性もあり、この辺はお姫様らしいなと。
この√ではソフィアの真っ直ぐな性格がよく出ていた。基本的に主導権は主人公ではなく彼女が握っているようで、どちらかという彼女が行動を起こして、それに主人公がついていくような場面が多かった。そしてそれは行為の際も同じであり、主人公よりもカッコいいなと感じる瞬間もしばしば。
だからまあ彼女と主人公の付き合い方自体はそんなに悪くなかったのだが、お話としては面白くない展開になってしまった。しかもそうでもないのに最後まで引っ張ってくるものだから困る。手紙のシーンなんかは親御さんが優しくて真面目な方たちだと伝わってきて良かったのだが。
○ひより√
主人公のことが好きで好きでたまらなくて思い切ってメイドに志願してしまった女の子。抜けたところもあって、初見ではかなり好感度の高いキャラクターだった。ただ、話を読み進めていくうちに気持ちは変わっていった。
なんであんな面倒くさくて終着点も曖昧なヒロインに成り下がってしまったのか。好きだからメイドになったんじゃなかったのかと、思わず首をかしげてしまった。しかも、まあそれならそれでと思った瞬間にやっぱり付き合うと言い出す。クエスチョンマークが飛び交ってしかたなかったが、まあ彼女の気持ちを考えてみた。結局のところ先行きの見えない未来に不安を抱いていただけなのだろう。でもだからといってあの切り替えの早さは…。
そんなこんなでようやく幸せな二人の死活が始まったと思ったのに…またしても爆弾をぶち込んできた。しかも何となく解決するものだから読後感も非常に悪い。プレイしていてなかなかに厳しいお話だった。
○アイ√
32歳の無職!真実を知った時は衝撃だった。そしてそれを知ってから改めて彼女行動を見返してみると黙り込んでしまう。まあでも可愛いし何も問題ない、むしろ養いたいまである。
彼女の√は起伏こそないものの、雰囲気を損なうものは差し込まれないので比較的安心して読むことができた。ただ、アイとの日常を送っていく。そう、これくらいでいいのだと、ひより√をプレイした後なのもあって強く感じた。
また、王族でありながらその立場を捨てて、人として生きる道を選んだというのも良い。ここにきて王族と絡みだし、また面倒事を持ち込まれてはかなわない。これからも有馬アイとして、優しいお母さんとして頑張っていってほしいものだ。
○都√
マイペースで純粋無垢な女の子。しかしその純粋さが時に周りをドン引かせるトリガーにもなっていて、いやはやこの娘と付き合っていくのは大変そうだなと。声はまあ好きなのだが、特に他には惹かれる部分がなかったので、はじめはそんなに気にしていなかった。
いやー、この娘が残っていてくれた本当に良かった。やっぱり幼馴染は信頼できるなぁと、喜びに包まれるようなお話が待っていた。
まあ、そんなことを言うと大袈裟になってしまうがとにかく良かった。幼馴染の距離感を上手く伸ばしたお話が展開されていた。初めて主人公を異性として意識し始めた都ちゃんが可愛いのなんの。
そして結ばれた後の会話よく、特に主人公が都にして欲しいことを聞いたときの会話が印象的だ。
「ゆーとくん、いつも私のお願いを叶えてくれちゃうから」
「命令してまでしてほしいことが、なくなっちゃたの」
これだよこれ。ずっと側で歩んできた、幼馴染だからこそ言える台詞だ。二人の関係を愛おしく思ったし、そんなことを臆面もなく言える彼女を見て更に好きになった。
後半は問題事を盛り込んでくるものの、彼女の気持ちを描きつつ、周りの印象も底上げされていたので中々良かったのではないかと思う。誕生日に繋げるのも素敵だ。
エピローグもエリデュローネの人々と交流が盛んになったことがわかる素敵な締め方で、読み終わった後、清々しい気持ちにさせられた。本当はソフィア√でやってほしかったのだが笑。
都√を最後にやったからこそ、作品全体としての読後感の良さにも繋がったので、本当に都ちゃん様様だ。改めて幼馴染の魅力に気付かされる作品だった。