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asteryukariさんの抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? 2の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? 2
ブランド
Qruppo
得点
80
参照数
1771

一言コメント

SSヒロイン達のお話が見れるというだけで嬉しかったのに、こんなにもボリュームのある作品に仕上げてくるとは...。最初から最後まで余すことなく楽しませてもらった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作に引き続きとても楽しませてもらった。正直なところボリュームに関してはあまり期待していなかったので、読んでも読んでもまだ続く、されど楽しく読めるシナリオが用意してくれて本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。

前作ヒロインのアフターなんかも、ただえっちして終わりではなく、きちんとその後のお話が描かれているのも好印象。しかもそれなりに尺があって、普通にこれだけでもFDとして売り出せたことだろう。しかしそこで止めずに新たな物語を作ってくれるから凄い。

本作のメインであるSSビッグスリーの内容に加えて、熱くて笑える共通√とTRUE ENDまで…恐らく前作よりも長い時間プレイしていたのではないかと思う。それでも飽きずに最後まで突っ走れたのはやはり楽しいからだ。

以下√ごとの感想。


<奈々瀬アフター√>
開始早々その後の二人の幸せな生活風景が描かれてほっこりする。くだらないことを言い出す主人公と、それを笑って流す奈々瀬。ああやっぱり彼女こそが正妻というやつなのかもなと。その往年の夫婦の様な掛け合いの数々に妙な心地良さを覚えた。

しかしまあ、前作でも感じていたことだが奈々瀬はお母さんみたいだ。そしてそれに関してもバッチリ皆から突っ込まれているのが面白い。「ダメ男生産機」まさにそれだ、そう指摘され狼狽えつつも主人公の魅力を語ってしまう彼女がまた可愛い。

まあ彼女はあのままでいいのだ。母親のような態度で主人公を優しく包み込む、それこそが彼女の魅力であり、彼が惚れた女なのだから。


<ヒナミアフター√>
「ロリじゃないですけど!?」を久しぶりに聞けてちょっぴり嬉しかった。前作ではヒナミと礼の絆の深さが描かれていたが、本√でもそれは同様であった。長期に渡り私情を殺し、家族のために、ヒナミのために条例に従っていた礼を見て涙を流す場面なんかは、ヒナミの気持ちが流れ込んでくるよう。

礼はヒナミに感謝していると言っていたが、それはヒナミも同じで、そんな二人の関係はやはり素敵だった。結婚式の場面なんかでも礼が挨拶代表になっていたりと、ずっと一緒に仲良くやってきたようだ。皆と喋って、皆で笑って。そんな風にして式を迎えたヒナミはさぞ幸せだっただろう。


<美岬アフター√>
更にパワーアップして帰ってきたやばいやつ。いや、多分最初からやばかったのだが..。相変わらずぶっ飛んだ思考回路をしている。特に集中線が付いたときの彼女の発言はキレッキレだ。「フルメタボジャケット」はつぼに入ってしまった。

まあこの√で最も印象に残っている話題といえば「ぬきデブ」になるだろう。もう訳が分からないし、その説明を聞いてもなお理解できていない文乃の気持ちもよくわかった。もう勢いだなぁ。くだらなさを感じながらも楽しく読んでいる自分がいた。

麻沙音の「ヒロインがデブサップのわけわからんクソゲー作ってたら始業式になっていたんだもん!」という台詞があまりにも笑える。

可愛くない言動と、話題の数々。そんな中でも美岬を可愛いと感じてしまう瞬間があるのはどうしてなのか。きっとそれは私自身も「美岬らしさ」に惹かれているからだと思う。


<麻沙音アフター√>
この√だけミニシナリオとのことだったがまあ十分だったのではないかと。彼女とのアフターはどう描くのか気になっていたのだが、文乃をくっつけることにしたのは英断だった。彼ら兄妹仲が生み出す自然な雰囲気が崩れることなくそこにはあった。

三人で一緒に買い物に行ったり、一緒にご飯を食べたりする。代わり映えの日常だが、それこそが尊いものだと、そう思えるようになった主人公には拍手を送りたい。これからも何事もなく三人の平和な日々が続いていくのだろう、それがわかるとミニシナリオで十分だったと思える。


<文乃アフター√>
むべむべ、むべむべ。いやぁ…文乃ちゃんってこんなに愛らしい生き物だったっけ、とまさに主人公達と同じ反応をしていた。そりゃあカメラも連射するよ。何事にも一生懸命で常に主人公の側についてまわる姿が何とも可憐だ。私も貯金したい。

猫を拾ってからの話はにんまりしてしまう瞬間ばかりで、もうほとんど礼と変わらぬ目で見ていたと思う。猫に対しても一生懸命な彼女が尊くて尊くて…。猫と二人きりの時に、主人公からもらった指輪を眺め、涙を流しながら感謝の言葉を零す場面なんて素晴らしい。こんなの泣いてしまう。

最後には主従ではなく、夫婦として対等な関係になっていって…。尊さの塊のようなお話だった。


<共通√(水引シナリオ)>
なんなんだこのボリュームは…。SSビックスリー√に派生するまでのおまけ程度の話だと思っていたのに、その面白さに翻弄されるばかりだった。

SSビックスリーと、どうやって仲を深めていくのかが気になっていただけに、ああいった展開に持っていってくれたのは嬉しかった。彼女達と共にSSとして活動し、共に生活していくことで惹かれ合っていく。とても自然でいい流れだ。

また、このお話を通して今まではただの変態集団のようであったSSにも、大切な関係があることがわかる。SSとはSSビックスリーが鍛え、育て、そして一人前に仕上げた家族なのだと。そんな家族だからこそ大事にしたいし攻撃なんてできない。そんな彼女たちの気持ちが胸に突き刺さった。だからこそ、その子供たちが助けに戻ってくるといった流れは素晴らしくて、それを喜ぶ彼女たちの姿を見て胸が熱くなった。

水引との対決はもう無茶苦茶だ。笑いをこらえながら読み進めていたが、スクリーム・ショットでもう駄目だった。「…翔ぶことができる!!」じゃないんだよなぁ…。

そんなふざけたような戦いの中でも語り合っていることは真剣で、その気迫から熱さすら感じた。あの語り合いの中で出てくる「理解」というワードは桐香関連の話でも度々出てくることから、やはり人と人との関わりの中で最も重要なことなのかなと考えてみたり。

本当にこれで十分グランド√の役割を任せられるのでは思う程ボリューミ―なお話だった。


<礼√>
彼女も前作でお気に入りだったヒロインだっただけに攻略できるようになって嬉しい。この√では前作ヒナミ√で語られた礼の過去について、より掘り下げられた話が描かれていたが中々辛い。まさかあんな拷問みたいなことをされていたとは…。あまりの理不尽さに目を瞑りたくなるし、母親に対しては怒りしか湧いてこない。母親と和解するシナリオなんかじゃなくて本当によかった。

そしてそんな過去があるから主人公とは付き合えない。資格がないとか、汚れているとか言っていたが、結局のところ彼女は不安だっただけで、その気持ちをどう前に向かせるかというところだったのだが…。またしてもヒナミちゃんがやってくれた。

心が折れそうな彼女を助けてくれるのはいつだって彼女なのだ。いったい彼女はどれだけのものを私にくれるのか、礼はそう考えていたようだが、それはお互いさまだと、今まで彼女が自分にしてきたことを嬉しそうに話すヒナミだった。こんなの眩しすぎて涙が出てくる。本当にこの二人の関係は素晴らしい。

そこからはバカップルの日常みたいになっていくのだが、それこそが礼の望んでいた者だと思うとむしろ素敵な日々のように見えてくる。また、二人が付き合った後もヒナミの苦労は続くようで、嬉しいことがあるとすぐヒナミに連絡してしまう礼が可愛らしい。

卒業してもずっと一緒に歩いていこう、そう主人公から言われた彼女の笑顔は心底嬉しそうだった。願わくばその笑顔がこれからもずっと続いていってほしいものだ。


<郁子√>
元々いい子だなと思ってはいたのだが、これほどまでに株を上げるとは。自身の√でも他√でもとにかく役回りが絶妙で、度々良いキャラしているなと感じた。

特に傘を差し伸べるところなんかは良くて、彼女が優しくて大切な存在であることがわかる。一人じゃない、主人公にはこんなにも慕ってくれる仲間がいたのだ。その事に気付いた時の主人公の喜びはどれくらいのものだっただろうか。また、このシーンは前作にて行き場を失くした郁子に対して主人公がしたことと重なる部分がある。こういった工夫はとても好みだ。

また、自身の√ということで次々と新しい萌え要素を追加されていく彼女。特に方言なんかは非常に可愛くって、桐香も中々良かったのだが、こればっかりは郁子に軍配が上がる。

加えてあっちの世界にいる時も性帝と呼ばないように自分を戒めたり、告白に関しても同情とか状況には左右されたくないなど、良い女っぷりにも磨きをかけていく。こんなの最強ではないか、主人公共々魅了されてしまった。

また、主人公の事を心から愛するようになってから彼女の心情にも変化が訪れる。序盤でエロゲの話をしている時に彼女はハーレム√でもいいと言っていた。でも今は違う、自分だけを見ていてほしいし、ずっと一番じゃなきゃ嫌だ。そんな恋人らしいことを言うようになった彼女を見て嬉しく思った。

最後は作中でもかなりぶっ飛んでいるお話になっており、淫石のくだりはついつい笑ってしまった。アホ過ぎるだろうと、でもみんな真剣なのがまた面白いし、つっこんだら負けなのだろう。ああ駄目だ、「つっこむ」とか下ネタに見えてくる…。

そんな祭が終わってベンチで語らう場面はとても素敵で、その幸せな掛け合いに心を満たされた。本作で郁子の事が大好きになってしまったし、故にこの√が一番好きだった。


<桐香√>
この作品を買う理由の八割が彼女の√にあった。前作では恋心を自覚し終わってしまった彼女だがとうとうこの√で結ばれるのだと、そう考えるともう楽しみで楽しみで仕方なかった。彼女の駄目っぷりには驚いたが、それは即座に愛らしさに変わった。そんな桐香を世話することで彼女の事を好きになっていく。ああ、とーかちゃん係になりたい。

今までは何となく主人公を自分のものにしたいと、そう思っていた彼女が恋心を自覚し徐々に女の子らしい反応をするようになっていく光景はまさに至福の時で、何度も何度も悶えてしまった。特にデートのシーンではその可愛さに礼、主人公達共々撃ち抜かれた。なんだあの可愛さは、反則だろう。

また、彼女に理解したいという気持ちが芽生えたのも恋をしてからの事だろう。たくさん文句を言ってほしいし、いっぱい叱ってほしい。これは今までのような単なるM気質からくるものではない。それを理解し、なおしたいのだ。

主人公に好きでいてもらうために努力し続けたい。そうしていった先で主人公が笑顔で幸せそうにしている姿を見られることが彼女にとって嬉しいことなのだと。彼女が手品を好きな理由なんかもここで生きてきて、なんだかとっても幸せな気持ちにさせられた。

エピローグでは温かい家庭を築き上げていて、SSにいる時もそうだったように、家族を大切にしているよう。結局、何もできない人間のままだし、そんな母親に呆れる娘だったが、その空気はとても穏やかなものだった。


<黄金乃秋>
文乃TRUEといった内容で、話自体はそれほど長くないし、使われる絵というのもそれほど多くない。だがとても嬉しかった。あれから長い年月が過ぎて、あの頃はあんなことをしていたよなとか、今はこういう状況だとかを語り合う。そこに特別な面白さはないのだが、やはりずっと彼らを見てきた私からすれば、それは言葉では表せぬほど美しい空間だった。タイトル画面が変わる演出も素晴らしい。




振り返ってみると、とても楽しい作品だった。やはり笑えるというのはとっても大切なもので、記憶にも残る。そして終わった後にとても清々しい気分にも。十分以上に楽しませてもらっただけに今は少し寂しさを感じる。まあ何はともあれお疲れさまだ。次回作の予定などはまだ不明であるし、出ないかもしれない。だが出るとしたら喜んで買うことだろう。素敵な次回作お待ちしております。