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asteryukariさんのMissing-X-Link ~天のゆりかご、伽の花~の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
Missing-X-Link ~天のゆりかご、伽の花~
ブランド
Fluorite
得点
77
参照数
1240

一言コメント

題材的に好きそうだと思っていたが、期待以上のものを見せてくれた。一見BADに見えるあの結末も私としては大好きなものだった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

自立型ロボットである「オートマタ」や遺伝子操作により生まれた「エディテッド」、「電子の海」など心躍る単語がまばらに散っていた。近未来が舞台の作品はどうしても好きになってしまう。

始めたての頃は「オートマタとの恋愛」が描かれた作品だと思っていたが、エディテッドである遊離に関しても話が掘り下げられていたり、亡くなった優灯なんかもお話に深く関わってくるため、「誰を愛するか」が描かれた作品だったのかなと思う。

それが濃く描かれているのはやはりENDINGだろう。優灯と、姫風露。最終的にどちらを取るか、それを選択することになる。その結末というのが全然違うもので、衝撃を受けた。

優灯を選んだ結末というのがまあ俗に言うメリーバッドエンドで、今まで共に過ごしてきた人々との関係を壊し、当人達だけが幸せになるというものだった。こういった結末はかなり好きで、姫風露が好きだった分、姫風露の主人公への想いの強さを再認した。

自分のことを「心の隙間に間借りしただけの存在」と言い放ち、「あるべきところに、あるべきものを。」と、自らは身を引く。自分の幸せより主人公の幸せを優先したのだ。誰よりも彼の事を愛しているから迷わずこういった行動がとれるのだと、遊離が涙ながらに語っていて、ああ、確かになぁと気付いたら私も涙を流していた。

姫風露の想いの強さ、優しさというのは勿論ここだけでなく、多くの場面で見られた。というもの主人公が度々、身勝手な発言をしていた分、純粋な彼女が映えていた。特に終盤のチェスの場面では、まるでキープ発言をするような主人公を見て吐き気を催した。「どうしてそんな酷いことを言えるのですか!?」全くその通りである。

正直どちらを取るかという選択肢が出た時は姫風露以外のありえないだろうと思ったが、いやぁ、やっておいて本当に良かった。

そして本命の姫風露ENDだったが、こちらは逆に私の好みから大きく外れていった。きちんと優灯を消したことには拍手を送りたいし、あの花畑の意味も…。散桜花のシーンなんかは号泣していた。ちなみに散桜花は作中一番好きなキャラクターだったりする。彼女の内面の弱さが実に私好みだったし、そこからくる行動も愛らしかった。

姫風露が命を落とす場面までは素晴らしかったのだが、その後の展開が少し合わなかった。

唐突に彼女が消え、主人公だけでなく私自身もかなり気を落とした。あまりにも理不尽な死に方に読み進める手が止まった。だからこそ実は生きていたという展開自体は嫌いではなかったのだが、その入れ物というのが。

私としてはオートマタの彼女が好きだったため、全身義体とは言えど、人間に限りなく近い存在になった彼女を見て複雑な心境になった。勿論、やっと人として人を愛し、愛されることになったのは素敵なことだと思う。

ただ、個人的にはオートマタのまま愛を育んでほしかったなぁと。人を想い、尽くす彼女。人か機械かなんて関係ない、そんな純愛を描いてほしかった。なので姫風露のENDに関しては初めの方が好きだ。