とにかく読み進めていくのが楽しくて仕方なく、読み手を楽しませるための努力と工夫を感じた。また、終盤はミステリーとしての面白さだけでなく、キャラクターの光る場面というのも見られ、プレイし終えた時は純粋に「ああ、楽しかった」と思った。
初めてタイトルを見た時から独特なタイトルだな、面白そうだなと思っていたが、プレイしてみるとその期待以上のものが見られた。序盤から謎が積み重ねられていき、本当に読み進める手が止まらない。久しぶりにミステリーものに触れたからだろうか、主人公と一緒に考え、選択する作業というのがとても楽しかった。
作業と言えば開幕の人探しから、遺体の外傷調査、はたまた爆弾解除などの際に用いられた画面クリック機能も中々面白かった。特に爆弾解除の難易度が丁度良く、恥ずかしながら三回ほど失敗した。が、それ故に解除出来た時の達成感は大きく、本当にその場にいたかのようにとまではいかないが、自分も作品に参加できたような、そんな喜びを感じた。
また、背景なども凝っていて、エレベーターの仕様には特に驚いた。この価格でこんなところまで力を入れているのか、凄いなと言う気持ちと、逆にこれだけ凝った作りをしているのに本価格で済ませてしまったのは申し訳ないなと思う気持ちがあった。これは何も演出に関してのみ言えることではなく、内容に関してもそうなのだが...。
内容について触れると、初めに言った通り、ミステリー作品らしい先が気になる展開で、すべての謎が明らかになるのが終盤になってくるのだが、終盤は終盤でミステリーものとしての面白さだけでなく、今までは見られなかったキャラクターの想いなんかも見えてきて、軽く涙してしまう場面なんかもあった。
爆弾解除同様、謎解き部分もすんなり一発でとは中々いかず、三、四回ほど犯人に切り刻まれた。"ウィザーズ"はパッとわかったのだが、犯人が"窓から入った"という選択肢を中々選べず地味に苦戦した。今思うとなるほどなぁと思うが、これを一発でクリアした方には素直に拍手を送りたい。そしてインストールに手間取ったので、「これもバグか!?」と思った自分を殴りたい
キャラクターは今まで臆病で逃げ出してばかりだったねね子が成長していく姿なんかも良かったが、回想にて、序盤に出てきた時に一目惚れした影響もあり、アウロラの健気さに一番心を打たれた。自分の腎臓を移植するのに「病気とその娘が元気になるなら、それはとても素敵なことだわ」なんて言える。何でこんな良い娘がこんなことに、挙句の果てに化け物にされてしまったのか。悲しかった。
最後にシゼルと一緒にチラッと出番はあったものの、化け物となった彼女自体はあっさり朽ちていったので、欲を言えばもう少し丁寧に扱ってほしかった気持ちもある。まあエイダさんにしっかりと事実を伝えるという所まで描いてくれたので、満足と言えばそうなのだが。
あとはやはりリールがベタだが泣けた。振り返ってみると、リールは全体的に損な役回りをする場面が多かったと思う。池田が最後に言っていた彼女とのもう一つの約束、それはリールから情報を聞き出している時、ふと彼女が零した願い。一枚絵に関してはあれが作中で一番良かった。あんなの...響かないわけがない。
シロナガス島の悪魔が実在したということで、特に終盤はSF色の強い物語となっており、途中こそ少し気になりはしたが、最終的には楽しめたので良かったかなと思う。タイトル回収も見事であったし、終始読み手を楽しませてくれる良い作品だった。次回作があるのであれば、ぜひ買わせていただきたい。有意義なひと時をありがとう