作品が良かったと言うよりは私が望んでいたものを提供してくれたと言うべきか、とろけるような甘さが妙に心地よかった。
延期に延期を重ね、じっくり仕上げた本作のお味はというと…非常に甘かった。甘すぎて甘すぎてもう大変だった。じゃあそれは不快な甘さだったかというとそんなことはなくて、望んだ通りの甘さだった。これでいいのだ。
変にシナリオに凝ったりせず、終始甘々な日常を描いてくれたのが私としては嬉しかった。ライターさんがノリノリでしょうもないシリアスを入れてきたりしたら目も当てられない。というか1√くらいはそんなシナリオがあるかなと思っていたので、そんなことはなくて安心した。
また、甘々な関係になるまでの過程も自然で、共通√で互いをよく知るためのエピソードを挟みつつ、個別√に入ったらデートや相手を意識する場面などを経て告白までもっていく。そしてこの告白がとても良くて、どのヒロインも手紙を通じて自分の気持ちを伝えるというのが素敵だった。手紙を用いることでこれまでの流れがより一層、丁寧に思えてくる。
付き合った後は基本的にえっちシーンが多くの割合を占めていて、起伏はないかもしれない。だが、彼女と彼が望んだ幸せこそがあのシーンなのだと思うと、そこまで気にはならなかった。まあ少しは話的な面白さを求める瞬間もあったが。
以下ヒロインについて個別に語っていく。
<悠羽>
初めてこの作品を目にした時からこの子がお気に入りで実際、購入理由の8割は彼女にあった。弓道を嗜むクールな女の子、そんな印象だった彼女が実はちょろくて、まさかお母さんプレイをするような人だったとは。主人公に惹かれ始めてからの彼女のぞっこん具合と言ったら…作中で一番主人公のことがしゅきしゅきなヒロインだったのではないだろうか。それは日常生活を見ても性行為の際にも強く感じだ。初めての時も彼女の嫉妬から至ったものであったし、エピローグでも相変わらず彼女主体で行為が行われていた。いつまで経っても主人公のことが好きで好きでたまらない彼女であった。
<葉月>
パロディネタを多用する明るい女の子、なんとなく好きにはならなそうだなと思っていたが、そんなことはなかった。彼女自身に魅力があったのもそうだが、それ以上に彼女の√で差し込まれる一枚絵が素晴らしかった。あれのおかげもあって無事彼女のことを好きになることができた。特に一つのイヤホンを二人でシェアする場面。あの使い分けは見事だった。彼女の心境の変化がよく伝わってきた。
<なのか>
委員長気質な女性で、それは共通√にてよく描かれていたかなと思う。豚汁の件なんかは最も活躍したのではないだろうか、そりゃみんなでお礼を言いたくもなる。またそんな真面目な彼女が主人公に惚れる理由というのも納得で、彼の行動が正しかったかどうかはさておき、重要なシーンだった。真面目ゆえに天然というのもベタだがキャラにあっていて良かったかなと思う。きょどった時の表情がとても好きだ。
<茉衣>
優しくて礼儀正しい後輩ちゃん。彼女を一目見て庇護欲に駆られた。所作がいちいちかわいい。そんな子があんなにも淫乱になってしまうのは驚きだったが、それはさておきこの子は素敵な話を持ってきてくれた。それは何かと言うとまあモンブラン作りの話になるだろう…まさかあんな家族に関わる温かい話を入れてくるとは思わなかったし、胸糞要素がなかったのも評価できる。
特に盛り上がる場面なんかはないが、求めていたものを提供してくれた作品であった。手紙の仕様については私が読み方を合わせられなかったのもあり、マイナスに感じてしまったのだが、主観的に読むタイプの方なら大いに楽しめるのかなと思う。