ErogameScape -エロゲー批評空間-

asteryukariさんのSugar*Styleの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
Sugar*Style
ブランド
SMEE
得点
76
参照数
1514

一言コメント

ボロボロの寮なのに、いざ住んでみると結構住みやすく、楽しい。そんな思いが生活風景を見ていて伝わってきた。寮生活という状況を活かした掛け合いの数々、共に生活しているからこそ起きる騒動など、見ていて飽きなかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ゼロから始まる共同生活ということで、名前も顔も知らないヒロイン達と同じ屋根の下、暮らしていくことになるのだが、まあ羨ましい。友人キャラである晃とぴろしの気持ちがよくわかる。なぜこんな状態で学校は放っておくのか、恐らく学校中の男子が主人公の事を妬んでいたに違いない。しかも主人公は主人公で、その状況を満喫しているというのがまた何とも…。

まあその辺の話はさておき、内容についてだが、主人公が中々に良いキャラしていたと思う。基本的に彼はボケ役の場合が多く、それにヒロイン達が突っ込むというのが定番の流れになってくるのだが、個別√に入ると何気なくヒロインを気遣ったり、またはヒロインのために行動したりと随所でカッコいいなと感じる場面が見られた。ただの馬鹿で変態ではない、良い主人公だったと思う。

しかしまあ、キャラの配役上、不快に思う方がいる可能性も十分にあるので、ここでは自分に合った主人公だったと言っておこう。

続いてヒロインに関しては、良い意味で面倒臭いヒロインが多かった。初心故の愛らしさとでも言うか、とにかく皆、初めての恋人関係に戸惑いながらも、イチャイチャしたいと必死だった。

始めは主人公の事を毛嫌いしていたあの娘も、馬鹿にしていたあの娘も、個別√に入るともう主人公に夢中だった。皆口々に主人公の親しみやすい、優しい性格に惹かれたということで、やはり主人公の人柄の良さが際立っていたと思う。

友人キャラに関しては、せっかく二人もいるのだから、もう少し出番を増やしてほしかったなというのが正直なところである。だがよくよく考えてみると、この作品のメインは”寮生活”なので、彼らが入って来られるのは学校内のイベントだけであり、出番が少ないのは仕方ないのかもしれない。


以下√ごとの感想

○共通√
寮生活らしい日常の細かい出来事について、それぞれの生活観の違いから揉めたり、男女間で何かとトラブルが発生したりと、まさにドタバタ生活だった。目玉焼きのエピソードなんかが印象に残っている。両面焼きか、片面焼きか。そして目玉焼きには何をかけるか。一見するとどうでもいい話にも見えるがそこは譲れない。それぞれの意地がぶつかり合う。まあ躍起になる気持ちもわからなくもない。ちなみに私は片面焼きでかけるのはソース派。

また、ハチのエピソードなんかも何回も見た。というのもこの作品、共通√と指定したヒロインの話が交互に進んでいき、そのヒロインの個別√につながるというかたちなので、「共通終わり、あとは個別だけ」というのが効かないのである。しかしまあこの作品は共通に見所がかなりあるため、繰り返しても異なる日常パートがいくつも存在するし、楽しめる。

本作では”選べる4つの「男の役割セレクト」”というシステムが存在しており、これにより、共通パートをさらに盛り上げていると言えるだろう。

○初楓√
からかい甲斐のある寮のまとめ役的な真面目な女の子、と思いきや実は妄想癖があったり、真昼間から部屋で自慰行為をしたりと意外とスケベな娘。はじめ主人公がそれを目撃した時はどうなることになるやらと冷や冷やしたが、抜きげーのような話にはならずホッとした。

主人公の押しに負け、攻め切られてたと語っていた彼女も実は内心相当嬉しく、初めてのお付き合いということもあり、わりとデレが強めだった。付き合い始めてから部屋の写真立てにちゃっかり主人公の写真を入れてしまうところなんて愛らしい。少し行き過ぎた気もするがそこはご愛敬。

終盤になり、先生を送り出すにあたってまだ気持ちが整理できていないという話になったわけだが、√の締めとしては少し弱かったように感じる。というのも実際パンを作っている場面が少なかったり、パンの話はしていたがやはり物足りなさを感じた。

○かなめ√
面倒くさくて、うざかわいい。優等生だが性格というか考え方というか一癖も二癖もある女の子。その実、恥ずかしがり屋さんでスマホに告白の練習をしていたりと、まあなんともお茶目な娘だ。陰キャであることを自負していながらもなお自信満々なのが面白い。

彼女は日頃の態度からそうは見えないが、誰よりもひだまり寮を愛していて、自分と仲良くしてくれている寮生達に感謝している。昔から家柄のせいで友達と満足な付き合いが出来ていなかったというのだから、彼女の喜びは相当なものだっただろう。そして寮生の中でも特に自分を気にかけてくれた主人公に惚れたと。

彼女の√は彼女のえっちっぷりが炸裂する。このままヤリまくりなシナリオになるのではと危惧したが、そこまでではなかった。揉めていた家族との関係が驚くほどあっさり解決してのは拍子抜けしてしまったが、あそこで粘られてもあれなのでまあ。中身がないと言えばそうだが、「たとえ質素な暮らしでも、あなたが隣にいてくれればそれだけで私は幸せだから」、そんな彼女の台詞を聞けただけで儲けものだったかもしれない。

そういえば主人公が初めて学校に来た時、”DTMに興味がある”と言っていた。それをつなげたのは成程と思うが、それについて学んでいたかというと...。まあこれは他の√にも言える。

○真央√
デレ多めのツンデレ後輩。ノリがよくて反応も面白い。そして小さくて可愛らしい。彼女がデレた時の可愛さといったらなんの。個人的に「お兄ちゃん、お兄様」とふざけ合うシーンが好きだった。というかこの娘主体となる共通√は大体面白かった。

恥ずかしがり屋故に好意を裏返してしまう、そんな自身を責めていた彼女を想い、告白に迫る主人公はかっこよかった。プラネタリウムでの会話もくさいながらもかっこいい。この瞬間は永遠なんだと、有名な漫画にもある台詞。うーん、好きだ。

付き合い始めてからの彼女は半ばヤンデレにも迫るようなデレデレっぷりで、可愛いという言葉に尽きる。特に初めてのキスシーン、あれはCGが素晴らしかった。つま先立ちを入れてくれたのが本当にありがたい。

そして最後の結婚指輪のくだり。何とも素敵な終わり方をしていた。こうして見ると真央√に一番力を入れられていたのではないかと思う。

○晴√
運動バカと言われる彼女。足も速く、力も強い。でも心は弱い。作中一女の子らしかったのではないであろうか。相手の事を考えて試合で手を抜く。なんだこいつは、贅沢な悩みだなと思った。だが話を進めていくうちに彼女が本当に弱いんだと分かってくると、まあそうかと。

彼女は付き合い始めてからはイチャラブ生活がメインで、見所といえば、彼女が主人公をえっちに誘った時、彼女の怪我を気遣って主人公が断るシーンになるだろう。良い彼氏過ぎる。

彼女の母親にも応援され、このまま終了かなと思っていたところにぶち込まれた晴の夢の話。「いつか自分が本気で好きになる相手、その人と人並みの恋愛をして幸せな時間を送る」。今までのイチャラブ生活こそが夢の一部だったんだと、そう思うと中々感慨深い。本当に幸せそうなCGなんかも挟んできて、最後の最後でやられた。

○総評
寮という舞台を活かした掛け合いの数々の主人公の人柄の良さ、そしてヒロインの可愛さ。発売前からこの作品に求めていた要素が十分に詰まっていて、満足のいく作品だった。