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asteryukariさんの捻くれモノの学園青春物語 ~俺と彼女の裏表~の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
捻くれモノの学園青春物語 ~俺と彼女の裏表~
ブランド
りびどーそふと
得点
76
参照数
2716

一言コメント

全体的に話が短いし、シナリオの質も決して優れているとは言えないが、中には良い話もある。私としては全く意識していなかったキャラクターが、話を追うごとにどんどん良いキャラになっていくのを見られただけでも大きな収穫だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

捻くれモノということで、リア充を目の敵にしている主人公だが、正直、彼も青春倶楽部とかいう部活で女の子たちとキャッキャしているし、学校生活においても普通に人と慣れ合っている。同じリア充じゃないかというのが第一印象だった。

まあ、"捻くれている"というのは本当だが、それも各個別√における重要な場面で見せるくらいのものであり、普段は何かと人を気に掛けたり、指示に従う極めて普通の学生。だからこそ、作品全体を通して見た時に主人公がどこか薄っぺらく感じる。実際、何となく問題を解決する主人公の見せ場がない√もあるため、そこが残念だったなと思う。

シナリオも特筆して良いものはなく、どちらかというと絵の使い方、表情の動きなどグラフィック面において秀でていた。キャラデザインに関して言えばピカイチで、もちろん私の好みに合っていたのもあるが、今年見た新作の中ではトップレベルに好きだった。

また、ゲーム性に関してはクイズシステムが単純に楽しかった。他にどういった問題があるのか気になり複数回やるなどなかなか夢中になれた。ただ、密かに期待?していた独白モードがあまりにも単調且つ毛ほども面白くなかったため、要らないところに時間割いてないでもっとシナリオの分量、質にこだわってほしいなと思ったり。

そう、シナリオが全体的に短かったのが一番の不満である。それも短い中に良質なシナリオが詰め込まれているなら話は別だが、そういうわけでもなかった。しかし良い話がある√も確かに存在したので、その辺の話も含めて個別√ごとに感想を述べていく。

●さやか√
発売前から目をつけていたヒロイン。その期待に応えるような、支えてあげたくなるようなか弱いヒロインだった。実に可愛い。喋ることが苦手ということもあり、喋り声がいつも弱弱しく感情の起伏がわかりにくい彼女だが、嬉しい時は嬉しそうな表情をするし、悲しい時は悲しい表情をする。決して感情表現が苦手なわけではない良い子だった。

この√、さやかちゃんはとても可愛いのだが、主人公のあたりがいちいち強いのが気に障った。なんでそんな強い口調しか言えないの、弱い者には強く出るのかよ、とここにきて捻くれモノっぷりを披露してくれたわけだが、不快でしかなった。そしてそんな彼に惹かれるさやかちゃんを見ていて辛くもあった。

●雫√
正直ノーマークだったため、彼女キャラの濃さには驚いた。しかも良い方面にキャラが立ってる。彼女はこの√で、自身の恋愛観について悩み、最後には女の子らしい本音でぶつかってくるわけだが、彼女の魅力はこの√よりも別の√で描かれていたような気がする。勿論、共感がやがて恋愛感情に繋がるというのはリア充であれば辿りにくい恋路であったし、読んでいて面白かった。

●唯√
このお話は最後こそ唯に関する話が展開されていたが、慶介と主人公がぶつかり合うシーンが印象的だっため、何というか消化試合のようであった。

人気者に嫉妬して、自分だって負けていないと自分に言い聞かせ、必死に自尊心を保つ。これは陰キャラだからとか、スクールカーストが下だからとかに関わらず、誰もが生きてく上で一度は経験したことがあるのではないかと、ふとそんなことを考えたり。俺は努力したぞ、君も努力しろよと、慶介はそんなことを言いたかったしょうね。

●朔夜√
めちゃくちゃ可愛い、それに尽きるがそれ故にお話は残念と言わざるを得ない。なんであの京子というブスを混ぜてきた、話としても何も面白くなかったし、朔夜と京子の仲のみならず、朔夜と主人公の障害にもなった。せっかく恋愛に関するトラウマから脱却し、結ばれた二人だというのに...。ハッキリ言って邪魔だった。

ただ、この√で雫の株が爆上がりした。登場機会はほんの一瞬ではあるのだが、それでも彼女の想いの強さには恐れ入った。本当に好きな人だからこそ、その人の恋を応援する。それは好きな人の幸せを誰よりも願っているということであり、なんていい女なんだ、かっこいいなぁ...と、ため息すら出た。この場面を見た後に再度、滴√をプレイするのも面白いかもしれない。

あと、朔夜のアイキャッチが非常に可愛い。

●観月√
グランド√のようなものであり、正夜という新キャラが物語に加わっていくわけだが、微妙だった。何が微妙なのかと言うと、純粋に話が面白くなく、結末もあっさりしている。観月も話に関わっているようで立場からか傍観者になってしまっている。まあ容姿が私好みだったので可愛さで言えば満足なのだが。

また、この√においても雫が重要な役割を成していたと思う。本当に良い女である。

たださぁ…なんでさやかちゃんを失恋させたんだ、それもCG使ってまで。物語においてそういう役割だったと考えても、やっぱりさやかちゃんの事が好きな私としては悲しかった。


シナリオに関してはそれなりに不満もあったが、雫が非常に良いキャラしていたし、グラフィック面も素晴らしかったので収穫は十分あったと言ってもいいかもしれない。