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asteryukariさんのROBOTICS;NOTES DaSHの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
ROBOTICS;NOTES DaSH
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
78
参照数
189

一言コメント

まさか主人公まで乗っ取ってしまうとは...流石は天才ハッカーだ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本編から半年後の世界ということでまず感じたのは、やはり懐かしさだ。数年越しの続編、キャラクター達もだいぶ変わってしまったかなと思いつつ、読み進めてみると全然変わっていなくて妙な安心感があった。ただ、翔だけは結構な変わり様だったかなと。人の話を聞かずにキルバラキルバラ言っていた彼がよくまあこんな真人間になったものだ。それだけあの事件の影響は大きかったということだろうか。でもあき穂との関係は進展なしというのが何というか…彼等らしいなと。

そんな彼らの下にやってきたゲストが「STEINS;GATE」でお馴染み通称ダルこと橋田至だったわけだ。本作をプレイしようと思ったきっかけでもある。翔とのダブル主人公体制でやっていくのかなぁと思っていた私としてはかなり驚かされた。完全にダルが主人公を独占してるじゃないか...。

一章から既に大活躍のダルだったが個々のルートでもそれとなく介入し、キャラクターを助けてくれる。シュタゲでいつも厨二病の友の手助けをしていた彼だ、相変わらず距離の取り方が絶妙だった。にしても一章からもう君島コウが登場するから驚いた。のわりにはあっさりふざけた方法で妨害されてしまうから苦笑。まあ彼が本領を発揮するのは後からなのだが…。

以下ルートごとの感想。

★フラウ
相変わらずのネットスラングと腐りっぷりに笑ってしまった。しかも時代に合わせて新しいネットスラングも使っている。そういえば「今でしょ!」とかあの頃はまだなかったもんなぁとか時の流れに浸りつつ彼女の発言を聞いていた。あとやっぱり髪下ろした時のこなちゃんマジ天使。

どんな話が待ち受けているのかなとしばらく彼女の動向を窺っていたらまさかのまさか…ホモォ...。初見はふざけているようにしか見えなかったのだが読めば読むほど涙腺が刺激されていく。単純に動物とのエピソードに弱いのもあるが、先輩たちが卒業した後のフラウのことも重ねて考えるとくるものがある。

「ひとりなのは慣れたはずなのに」昔とは違う彼女だからこそまた生まれてしまった感情、そしてそれをホモォと関連付ける。実に良い話だった。最後のムービーも地味に嬉しい。あの声で歌う声優さんの実力よ。


★淳和
ロボ嫌いがまだまだ治っていなかった彼女がどうやってロボを動かすのか、まあすぐピンときた。シナリオとしてはごくごく普通のものなのだが、眼鏡との絡ませ方がわりと良かったかなと。でもやっぱりこのルートでくっつくことはなくて、一貫してロボ嫌い克服に向かって前に進んでいく彼女が描かれていた。


★愛理
前作から可愛くて可愛くて仕方がなかった彼女だが、数年ぶりに見る彼女はまた一段と輝いて見えた。ブルマ姿なんかたまらん、「ナイスブルマ!」と叫びたくなった。思い返してみると綯さんと同じくらいエロ担当だった。

彼女の話はと言うと…とても切ない。てっきり癒しに満ちた話が待ち受けているとばかり思っていたので鋭いカウンターをもらった気分だ。お姉さんに成長して、これでようやく「妹」の立場から卒業できる、もしかしたら彼女にだって…。そう考えていただろうに結局最後まで子ども扱いだったわけだ。

無論、それが翔の選んだ答えであり、そこがぶれなかったのは嬉しいが愛理ちゃんの気持ちを考えると...。階段のCGでおいおい泣いてしまった。私が幸せにしてやるからな…!


★昴
まさか彼のルートまであるとは。どうせネタだろうと、軽い気持ちでプレイしたらとんでもなく良い話で驚愕した。何なら本作において一番好きな話だったかもしれない。本編で消化不良だった父親との関係にきちんと区切りをつけてくれた。

親が初めて買ってくれたロボット、私も覚えている戦隊モノのやつだ。もう回想がいちいち泣かせに来る。そして、父親の言葉が刺さる刺さる。普段は頑固に見えるからこそ、ほろりと零れる優しさに泣かされるのだ。昴の”今”の夢を認め、今日からそれが自身の夢だと語る。素敵な父親過ぎる。

最後の一枚絵がまた良いのだ…。

★綯
綯さんが吹かせるお姉さん風にいつも打ちのめされてしまう。ダルも言っていたが良い女になり過ぎだこの人は。ダルが絡むということで序盤から未来ガジェット研究所の事を語ってくれる。彼女がJAXAを志したのはやっぱり彼らが影響していたことを知りとても嬉しい気持ちになった。

このルート、とあるキャラの使い方があまりにも酷かったのであまり好きではないのだが、彼女が東京に帰らない理由がわかった時は笑みを浮かべてしまった。自然とそこにいたいと思う、そこにいるのが心地いい。そこが居場所なのだ。

★あき穂
ロボット大好きな彼女が普通の女の子になるべく我慢…というのはおまけ程度の要素で、最も見せたかったのはみさ姉に二人の関係を知ってもらう、認めてもらうことだったのかなと。「本当に私でよかったの?」、彼女はずっと姉と自分を比べていたのだ。(私はお姉さんの方が…)

また、再び君島コウが出てくるということでダルが大活躍する。なぜガンつく2に物理的な影響が及んだのか、登場人物達と同じように疑問を抱いていたがまさかそういう仕掛けだったとは。渋谷でピンときて「現実化」の発言で確信を得た。アレが簡単に扱えるツールになっているなんて…凄い時代になったものだ…。

最後の「運命石の扉の選択だ」はシュタゲ好きからしたらたまらないだろう。

★ダル
最終章ということでやっと妄想科学シリーズらしい内容がやってきた。またしても君島コウの襲来ということで、そろそろしつこさを感じてくる。が、その被害はこれまでの比ではなく、「シンギュラリティ」なんておたくの心に刺さるワードが出てきたり。

これまで以上にシュタゲ色が強くなってきて、オカリンからのメールが来たり、ツイポでラボメンの動きが活発になったり。意外だったのは真帆までも登場する点。ゼロをプレイ済みで本当に良かった。真帆とフラウの会話を見てみたかったなぁ。

本来の主人公である翔はこれまで以上に影が薄まって、ダルが大活躍。元々のハッキング力も魅力だが、他のハッカーたちとの日々の交流が生きるのが本当に良かった。人望は強力な武器だとしみじみ思う。

「我が頼れる右腕、橋田至。お前ならできる」

彼の言葉は間違っていなかったわけだ。締め方も素敵で、またシュタゲをやり直したくなった。



続編というよりはFD、それも妄想科学シリーズ好きな人向けのFDだったかなと思う。そして、だからこそ自分は楽しめたんだろうなと。改めてダルというキャラクターに良さを感じた。ちゃっかり「科学ADVライブ2018」で混ってきて爆笑してしまった。こういうの大好き。