一つ一つのお話は良いのに構成がそれらを喧嘩させているような、そんな印象を受けた。ただ、最後の流れは予想していない、それでいて好きな終わり方だったため満足だ。深野という舞台が好きでたまらない
人と人ならざる者、「妖異」と共存している世界のお話ということで、そうだよこういう世界を待っていたんだと言いたくなるほど好みの舞台設定だった。
お互いの生活感、価値観の違いからもめ事が起きてしまうこともある。そんな人と妖異の間に入り、平穏を保つ役割として魔法使いがいる。良い、導入から好きそうな設定ばかり並べられてどんな話が待ち受けているのか楽しみで仕方なかった。
共通部分では妖異のお悩み解決相談という感じで、主人公の魔法使いとしてのスキルが存分に発揮されていた。経立なんかは最初見た時は不気味で仕方なかったのだが、読み進めていくうちに段々と良い奴だということがわかり、愛らしささえ生まれた。
人狼とのエピソードはそこ辿りつくまでのスパンが短いのもあり、感動に至るほどではなかったが、ほっこりできる良い話だった。私自身が友情見溢れるお話に弱いのもあり、互いに本音を零し、友として認め合う光景が印象深かった。
当然、妖異との話だけでなく、ヒロインとの出会いと生活風景が描かれていてとても自然で良い共通√だったと思う。もっとばんばん妖異を出してくれても良かったが、そこが本筋ではないのだろうから仕方あるまい。
個別√は正直に言えばなんだこれ、ここで終わるの?と感じるものが多く、不安に駆られる瞬間もしばしばあったがグランド√である白√が中々良かったのでまあこんなものかなといったところ。
以下個別√の感想。
○花子√
一見近寄りがたいが、話してみるとよくボケるしよくキレる。単にクールな女の子というわけでもなかった。というか気に入らないことがあると排除しようとしてくるタイプだから全然クールではない。
お話は彼女の「普通の女の子になりたい」という意思を尊重し、それに関わってくる問題をどう解決するかというわけだが、うーんとりあえず猫川の妖異長というキャラが小さすぎる。小さいし気持ち悪いし見ていて不快でしかなかった。そしてそんな者に振り回されるというのも...。ただ、ゴンゲサマと経立が応援に書き付けてくるシーンはよかった。頼もしいなんてもんじゃない。
○みだり√
妖魔ということで、まあえっちえっちな話になっていくのかなぁと。キャラクターデザインが中々好みだったのでそれも良いかなという感じだったが、まあその通りだった。不満という程はないに内容があるわけでもないが、あえて言うなら度々掟の話を引っ張っていたが、その重要性がイマイチ理解できなかった。
結局、最後も手続きを踏んで会いに来ちゃうし、あの話は要らなかったんじゃ…と。あとイマニエルお姉様とガブリエルお姉様の立ち絵を見せてください。エリートと言うんだからさぞえっちなんだろうな…。
○由岐奈√
自信家で実際に力もある、だけど実は寂しがり屋。ヒロインの中でも最も主人公に近いところにいたのかな。主人公をも上回る桁外れの霊力を持っているという設定が良かった。魔法使いとしてはまだまだだが、いざという時に頼りになる。そんな場面が自身の√でも他の√でも見られた。
彼女の√は実に惜しかった。最後まで蒔奈との話を描いてくれたらどれだけ綺麗なお話になったか。まあそれだと主人公が空気になってしまうので仕方ないと言えば仕方ないのだが。由岐奈が彼女から解放され、ようやく恋が出来るようになった。その終わり方を否定する気は毛頭ないが、最後の一枚絵のどこかに蒔奈を描いてくれたりしてくれたらなぁと。
○白√
タイトル画面で白の姿が消える仕様には驚いた。そしてこれから始まるんだなと、気持ちの高ぶりが戻ってきた。
面倒見たがりの小さなお姉ちゃん。うーんかわいい。彼女の表情はどれも甲乙つけがたい可愛さであるが、一番はやはりふくれっ面だろう。声優さんの力もあってその破壊力は凄まじかった。
彼女の√は話の構成自体には不満を覚えるものの、その結末が美しかった。奇跡が起きて白が人として生きることになるか、それともそのまま消えるか。この二択だと思っていたので主人公の選択には驚いた。彼もまた先代のマスターと同じ選択をしたのだと思うと、あの憎たらしい悪魔の存在も無駄ではなかったのだなと。
来世でまた再び出会い恋をすると誓い共に消える。タマユラのように不確かな未来に想いを馳せ旅立っていく姿は綺麗だった。
この結末を見ると「この時が、ずっと続けばいい。」という言葉は中々意味深く、美しい。
また、ED曲の「Re:promise」という曲が素晴らしい。約束だよ…。
目に余る部分も多く、進めている時は不安を感じることもあったが、最後までやって良かったなと思う。成長した二人がいつの日か出会い、愛し合い、子を成すことができたのなら、それ以上の幸福はない。