読み始めの頃は内容を見ても、操作性を見ても暗い気持ちになるばかりだったが、クリア後は気分爽快に。不満がなかったとは決して言えないが、それにしても良い作品だったなぁと。みんな本当にありがとう。
開始して早々に左目をくり抜かれた死体が出てきて驚いた。そしてこういったシーンは始めだけでなく、読み進めていくうちに次々と出てくることになるわけで、中にはもっとグロテスクなシーンもある。これだけでもだいぶインパクトのある本作だが、そういったシーンは事象の一部に過ぎない。「夢と現実を捜査し、失った記憶と因縁の殺人犯を追う、ある刑事と相棒の物語」、それが本作の最大の見せ場であり、素晴らしいものなのだ。
人に話を聞いたり、ものを調べたりする「操作パート」を終えた後、重要参考人の夢の中で捜査の手掛かりを探す「ソムニウムパート」へ。基本的にこういった流れで話が進んでいく。操作パートはものや人を逐一ボタンで選んで押す必要があるし、ソムニウムパートはただの連打げーなどではなく、キャラクターを操作し、制限時間内にクリアしなければならない。そんな訳でスラスラ読めるなんてことはなく、言ってしまえばテンポは非常に悪い。
しかしながら後者のソムニウムパートについては繰り返しプレイしていくうちに段々と慣れてきて、楽しいと感じてくる。実際に私も、序盤は面倒且つ面白味なんてないなと思っていたが、終盤はどっぷり嵌っていた。終盤になるとそれまで軽視しがちだった「timer
」の使い方が非常に重要になってきて、工夫しないと絶対にクリアできないものまで出てくる。廃工場、お前の存在は決して忘れないだろう…。
こんな感じでソムニウムパートについては実に楽しんでプレイしていたわけだが、捜査パートは正直いまいちだった。「聞き出すこと」が目的なので、話の続きを聞く為には逐一ボタンで選んで押さなければならないというのもわかるのだが。
だからシステムについては何とも言えない。まあ普段、私がこういったタイプの作品をあまりやっていないことも大いに関係していると思う。ただ、ソムニウムパート自体は本当に楽しませてくれたので、感謝の意を捧げたい。
そして肝心なのが物語の内容についてだ。いやぁ、とても良かった。ミステリーとして考えるとどうなのかとか、黒幕としては便利すぎやしないかとか、思う所は多々あるのだが、それらを差し引いたとしても十分面白かったと言える。特に三人の話を読み終えた後から一気に面白くなってくる。「遺灰」から「相殺」に移る時なんかは多くのプレイヤーが興奮したのではないだろうか。
と言っても三人のお話も前菜などではなく、それぞれにきちんと良さがあった。
応太君の話は家族の愛を感じる良い話だった。まゆみがとても良いキャラクターしていた。途中まで頭のおかしいおばはんくらいにしか思っていなかったので、彼女のひたむきな息子への愛を目撃し、震えた。だからこそ全滅編は心が痛い…。
また、イリス編は作中の中でも一二を争う程、アクションシーンが面白かった。黄金横町のところなんてもう最高だ。笑えるしワクワクした。この作品、意外に笑いを多く取り入れていて、それは日常の会話からも、アクションシーンからもわかる。アクションシーンでエロ本を投げるくだりは、もはや恒例になっていてそれが地味に好きだった。
そして、みずきちゃんのお話はというと…もうたまらなかった。まず大前提として、みずきちゃんが可愛過ぎるのだ。初見の時からは考えられないくらい口が悪いのもとても愛おしいし、弱る場面ではとことん弱るのも素晴らしい。それでいて戦闘力は非常に高いというのも良し。彼女の強さを目にして萎縮する主人公が笑える。
主人公の相棒はアイボゥだが、主人公の家族はみずきちゃんなのかなと思う。この話のソムニウムパートは本当に好きで、プレイしながら画面が滲むこともしばしばあった。昔を懐かしみ、実は伊達が物凄い気を使っていたことに気付く。彼女の気持ちを考えるともう涙が止まらなくて…。最後の「おかえり、伊達…」は本当に、心からの喜びを感じた。
これらを読んだ後に向かえる最終√。その内容はまさしく最後に相応しかった。三人が助けに来るシーンは中々熱いし、何より私の大好きなみずきちゃんが大活躍なのが良い。大切な友達のために、怒りのままにたこ殴り。流石だ…。また、猛馬も非常に良いキャラしていて、全編通して優遇されていたなと思う。
まあでも一番の活躍はやっぱりアイボゥだろう、これまで共に歩んできた紛れもない相棒だ。挟まれる回想でうるうるし始めて、「俺はおまえが、大嫌いだ..。」でもう駄目だった。本当に素敵な存在だ。そしてかわいい所もちゃんとある。事件後に明かされる「41205」という数字の秘密を知って、悶え死にしてしまった。
最終的に切なさなんて残らない、実に気持ちの良い終わり方をしていた。あのEDなんかが象徴的で、クリア後に追加される「DANCE」でもう一回見てしまった。
結構やり込んだのもあって、読後の爽快感は凄まじかった。
素敵な物語をありがとう。