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asteryukariさんの機神咆吼デモンベインの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
機神咆吼デモンベイン
ブランド
NitroPlus
得点
85
参照数
1355

一言コメント

熱く、笑えて、愛おしくて。止めどころに悩むほどこの作品に夢中になっていた。話も登場人物も魅力的という…紛れもない名作だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

その知名度、設定から面白いんだろうとは思っていたがまさかここまでとは。話のボリュームは十分以上、それでいて最初から最後まで飽きない面白さを提供し続けてくれた。本当に切りどころがわからなくなるほど、のめり込んで読み続けた。

ここまでハマった作品も中々久しぶりで、それは単純な面白さのおかげもあるが、パート分けがしっかりしていたからだと思う。ひたすら熱い戦闘パートと笑いに富んだでもどこか穏やかさを感じる日常パート、それに加え主人公とヒロインの中の進展を描くパート、どれも抜かりなく素晴らしいものだった。

そして何よりキャラクターだ、もう敵味方関係なく魅力的な人たちばかりだった。アルや主人公である九郎はもちろん、悪役としてこの上ない存在感を放ち続けたマスターテリオン、ムカつくけど憎めないドクター・ウェスト、お姫様やその他もろもろ。一言で語るのは難しいのでキャラクターごとの感想を語っていく。



○九郎
はじめこそ気だるげでとてもじゃないがこれから戦っていくような主人公には見えなかったが、それはまあお決まりの設定であり、徐々に逞しくなっていくのが王道で胸が躍った。本当に許せない相手に出くわした時は心底怒りをあらわにするなんてのも人間らしくて良かったかなと。

終盤なんかは誰かに催促されたわけではない、己の意志で戦いに赴いているのがよく伝わってきた。それでも元々の性格的な部分は残っていて、突っ込んだりアホみたいな行動に出たりと、最後まで人間味のある主人公だった。

この作品において「人間」というのは非常に重要で、それを主張したいがために主人公に対してこれほどまでに人であることを貫かせたのだろう、非常に好感度の高い主人公だった。


○アル・アジフ
久しぶりに胸がときめくヒロインに出逢えた気がする。彼女の普段の頼れる感じも好きだが、日常で見せる面倒くささ、それからいじらしさというのがもう堪らないものだった。何かと服装やら髪型を変える彼女も愛らしいし、マギウススタイルの時の姿なんかもとてもとても可愛らしい。

そんな彼女は√に入るともう可愛さ大炸裂という感じで、彼女と九郎の掛け合いの全てが今では愛おしく感じる。本当に全て良いのでどこが良いとかも中々抜粋しにくいのだが、私は風呂での会話が一番頭に残っていて、ああ心地よかったなぁと思う。

「いや、何。何処の世界にこうして揃って風呂に入り、夜空を阿呆みたいに見上げる魔導書とその所有者がいるかと思うてな」

この場面の二人の表情といったらもう…。共に生活をしてきた二人だからこそ作り上げることが出来る自然な雰囲気、戦いばかりだったからこそ映えるつかの間の休息。ため息が出るほど好きなシーンだ。

これ以外にも終盤でアルが感情を吐露するシーンなんかはどれも好きで、度々同調して涙を流していた。まったく、なんて面倒くさくて素敵な女の子なのだろう。


○瑠璃
ただのお嬢様と思っていた時期もあったが、それは違う。彼女もブラックロッジを討とうという強い意志を持っていて、その意志の強さが厳しさとして発言に反映されていたのかなと。

彼女、口だけではなく、自身の√では自らが剣を取り戦闘に入り込んでくる。彼女のマギウススタイルを見た時は正直驚いた。ただ嘆き悲しんでいても仕方ない、そういった心持ちだろう、そういう意味でもやはり彼女は強かったと言える。


○ウィンフィールド
真面目で運動なんてこれっぽちの縁もない、そんな印象を抱いていたからこそ彼の活躍ぶりには驚くばかりだったし、同時に大好きなキャラクターへと昇華した。グラブをはめていない自分がどれほど危険か、その台詞に違わないほど彼の強さはむちゃくちゃだった。ボクシングというのがまた人間らしく、良いチョイスだなと思う。

彼が活躍するのは主にティトゥス戦で、どの場でもその存在感を発揮していた。アル√では戦いには参加できなかったが、ティトゥスが死に際に思い出した人物はやはり彼だったようで、その人間らしさを捨てない姿勢を評価していた。


○ライカ
ヒロインの中で唯一の民間人だと思っていたが、まさかこんなに重要なキャラクターだったとは。彼女の√は彼女の魅力が光るというよりむしろ純粋な面白さが光っていた。正直あまり期待していなかっただけに愛の絡んだ復讐劇に魅了されてしまった。


○メタトロン
最初は取っつきにくいが、彼女なりの正義で動いていることがわかると段々と良いキャラに見えてくる。アル√の終盤なんかは背中に主人気を乗せてアルの下へ届けに行くなど、彼女なりに彼らを認めたようで、なんだか微笑ましかった。

まあ彼女の魅力が発揮されるのはライカ√だろう、彼女の戦う理由というのがどこまでも真っ直ぐなもので見惚れてしまった。


○サンダルフォン
やたらとメタトロンに復讐心を剥き出しにしてくる彼も実はきちんとした生い立ちがあり、理由がありでこの作品は本当に凝っているなと。ライカと何か関係があるとは思っていたがまさか弟だったとは。

彼の行動理由は身勝手も甚だしいものだったが、そのキャラクター性というのは誰とも被っていなかったのは良かった。だからこそ作中で独特の存在感を放っていたのかなと。


○ドクター・ウェスト
本作においてもっとも笑いに貢献してくれたキャラクターだろう。彼のぶっ飛んだ思考と行動の数々が輝いていた。もう何回笑いを零してしまったかわからない、本当に意味の分からない発言をするから困る。

序盤に読み手の心を掴んで終盤あんな立ち位置につくなんて…。こんなの好きにならないわけがないだろ、気に喰わないから抜ける、その堂々たる理由もかっこよかった。

ライバル視していた九郎をいつの間に戦友扱いするなど、作中で最も「良いキャラ」していたのは間違いなく彼だ。裏切ったにもかかわらず、ブラックロッジの面子に見せるあの横柄な態度。まったく最高だ。


○エルザ
ドクター・ウェストには感謝してもしきれない。こんなにも可愛い女の子を生み出してくれてありがとう。ロボ娘は基本的に大好きなので、この娘もかなりお気に入りのキャラクターになった。単純に見た目、性格が好みなのもあるが、ただ可愛いだけに終わらず博士同様、物語において大きな役割を担ってくれた。

彼女の存在がなかったら、アルが消えた後九郎は戦っていくことができなかっただろう。そして博士はやはり天才だなと。エルザも愛するダーリンと一緒に戦うことが出来て本望のようであった。


○マスターテリオン
その異様な強さから最後まで倒すビジョンが見えなかった。だからまあ、謀反で倒された時はこの作品大丈夫かとも疑ったが杞憂に終わった。絶対悪の立ち位置を守り続け、最後の最後にようやく人間の魅力に気付く、宿敵に相応しいキャラクターだった。


○エセルドレーダ
彼女は最初こそマスターテリオンの飼い犬くらいの認識だったが、終盤はご主人様を取られて感情をむき出しにするなど、少女らしい姿を見せてくれた。こんなにも尽くしているのにマスターテリオンの目に留まるのはアルと九郎だけなんだと、その事実に気付いたときの彼女の感情を考えると中々辛い。


○ティトゥス
アンチクロスの中では一番好きで、彼の独白シーンは作中でも屈指の名シーンだと思う。

人の身で在りながら、戦士の路を突き進む者こそを、闘いの神は祝福する。それを捨て、安易な選択をした自分が、どうしてその恩恵を授かろうか。

自分の過ちに気付き満足げに散っていく姿が忘れられない。



話が面白くてキャラクターも魅力的なものばかり、そうなったらもう好きな作品にしかなりえない。素晴らしい作品だった。