世界観に上手くハマり、ヒロインに愛着が湧いた私が楽しめないはずなかった。思い出に残る冒険譚をありがとう。
RPGでありながらレベリングは必要ない。戦いはクイズやタイピングゲームで進行していくのが新鮮で面白い。だからどの敵で詰むとそういったことはなかったが、場面によって偉く難しいクイズがあったりするのでそこはやり直したり。本当にどこから引っ張って来たんだよと言いたくなるくらいマニアックなものもあって、それが面白さに繋がっていった。
また、ただのクイズゲームで終わらないところがこの作品の素敵な所。序盤はうなさかちゃんと戯れながらクイズを解いていく軽めな内容だと感じていたが、研究所に入り、この作品の世界観に詳しく触れた途端に面白くなる。
興味深いのはやはりセントエルモス・ネットワーク。利便性を求め、幸福を追求した結果、人は電子の世界に閉じこもってしまうようになった。やがて現実世界は退廃へと向かっていくことに...。SF作品でよく出てくるタイムカプセルに近いものがあるなと。こういった系統の話は大体好きになる。
世界の崩壊を食い止めたのが王と天使だったわけだ。この王関連の話がこれまた良くて、なるほどここに来て彼らと絡ませてくるのかと。王が護りたかったモノはなんなのか、それを主人公ではなく彼らに語らせるのは本当に素晴らしい。これまでの何気ない交流の数々がここに集束する。終盤にかけてのキャラクターの魅せ方はピカイチだった。
そして、忘れてはいけないのがこれまで共に冒険してきたうなさかちゃんの存在。そんなにボリュームのある作品でもないので、号泣してしまう程でもないが、それでもこれまでの歩みを振り返ると中々にくるものある。王との戦いでは「───よい、旅を!!」と叫んだけれど、自分達の旅もこれで終わりかと思うと無性に寂しくなった。
本当に数時間程度の付き合いで、手で数えるくらいしか主要キャラが存在しない。にもかかわらずこんなにも楽しい冒険だったと思わせてくれるのは凄い事だと私は思う。
また、クリア後の会話では本作のちょっとした裏事情だったり、次回作の事が聞ける。私は元々、次回作である「MECHANICA-うさぎと水星のバラッド-」に興味を持って本作に触れたのだが、想像以上の話の面白さに舌を巻いた。過去作は全てプレイ済のため、シナリオの面白さは知っていたのだけれど、「ノベルじゃないから...」と感覚的に軽視している節があったのだ。こんなにも充実感に浸ることができて嬉しい。そして、次回作への期待が一層高まった。