途中でどういったお話になっていくのか予想はできますが、展開以上に綺麗なお話が多く、特に最後が好きなお話が多かったです。
この世に未練を残して死んでいった人達の第二の物語。未練がなくなれば消えることになるっていう設定が中々ずるいんですよね、感動的な展開を作るのに非常に適している。共通√で客を通じて世界観を理解させ、個別√ではその世界観に沿って今度は従業員の話にという動きが綺麗でした。個別√はやや不満もあるものの、どの√も終わり方が良かった印象を受けました。
以下ルートごとの感想になります。
●共通√
キャラクター同士の関係性を描きながら、中盤の侍もどきとの決闘と後半の殺人犯との騒動で、ここでの死とはを実証しつつ、「祓い」というものについても触れられていました。これから個別√に入るための土台作りのようなものに感じました。
●ネコ√
普段は"ネコ"として明るく人懐っこい様子で主人公に懐いている彼女が実は真面目で、急に敬語になって恥ずかしがったりするギャップがとても可愛らしかったです。彼女の未練は若くして亡くなった少女らしいもので、主人公の後押しのおかげもあり自分の未練を解消することが出来ました。しかし未練がなくなると当然ネコは旅館にはとどまれなくなるわけで、それに途中で気付き後悔し始める主人公に対してはどうなのかと思いましたが、ネコが消える場面のCGは良かったです。何が良かったかというと、CGに主人公の口元だけ映す演出が非常に良かった。また、エピローグの本当かどうかはわからない、幻覚という形で物語の幕を閉じるのも好みでした。
●小羽√
この√はだいぶまことの我が強過ぎる気もしましたが、まことがわりと好きなキャラだったため、不快感はなく最後まで楽しめました。ただ、まことに気持ちが傾いていた分、逆に主人公と小羽に対しては不満がありましたね。小羽の性格を考えると仕方ないのですが、自分の状況も考えずにまことに対して口を出しているシーンがあまり好きではなかったですし、彼女の味方をする主人公も好きでは…。ただ、小羽が本気で料理に打ち込むようになり、そこからまことが消えるまでの流れは本当に良かったです。今までは板前と従業員くらいの関係だったのが、最後になってようやく師弟に成れたのかなと。
●咲奈√
この√は咲奈の過去と同時に、主人公の過去についても触れられるのですが、後の傘√のせいか全てのルートが終わった時には二番目の女のもしもの物語みたいにしか見えませんでした。また、歌津とかいうクソ女の性格上、仕方のないことなのですが、祓うことで強引に解決するのもあっけなかったです。ただ、共通√で登場した祓いを使うタイミングがここしかなかったのは事実なので、何とも言えません。物語の結末も咲奈の甘えに主人公が応じてしまったようなもので、この作品の中では一番しっくりこないものでした。
●傘√
実質グランド√であり、咲奈√で少し触れられた主人公の過去がより深く掘り下げられていました。過去は非常に胸糞で、主人公が救われなさすぎると思うばかりでした。そんな主人公の未練はやはり妹のことであり、たった一人の家族として生前も今も想い続けていたことが伝わってきました。それも純粋に家族として想っており、話の展開的にありえないのですが、「結婚してんじゃんあああああ!」とはならずに、ただただ妹の幸せを望んでいたというのが素敵でした。また、未練がなくなり消えることになった主人公との各キャラクターの会話が物語の終わりをしみじみと告げているようで良かったですし、エピローグではお互いわかっているのではなく、傘だけが知っているというのも、冷めない良い終わり方だったと思います。
総評しますと展開は予想できるものの、良い作品だったように感じます。ただ、ヒロインと主人公が結ばれるエピソードが弱かったり、ヒロインは主人公のことが好き好きでしたが、主人公は性行為の流れで付き合った感じで、後半こそヒロインのことを想っていましたが、付き合い始めは本当に好きなのか疑問でした。また、傘と主人公の話に不満はなかったのですが、傘√とは別にTRUE√で主人公関連の話をと思いました。が、シナリオの量とかいろいろ考えると難しいところですよね。