テキストこそふざけたものが多いが、話は純粋に面白い。が、まあこの作品の魅力はキャラクターにあるだろう。それもサブであるところのSSヒロイン達に。礼、郁子、桐香様、この三人が作品の出来を何倍にも上げていた。
発売前から注目の的になっていた本作。すぐやらなかったのが勿体無いと思う程、内容的にもキャラ的にも満足のいく作品だった。内容的には飽きない良い話が続いていたのだが、やはり下ネタ連呼はどうしても飽きてくる。始めは笑みを浮かべていたが、やはりどうしても後半は冷めてしまうし、だからと言ってそれをやめたらこの作品らしさというものも失われてしまうであろうから難しいところである。
この作品の一番の魅力は展開や下ネタを多用した独特な作風でもなく、キャラクターにあると思う。まずキャラデザインが非常に良い。本当にどの女の子も可愛く、それはメインヒロインだけでなく、サブヒロインにも言える。なんだろうか、目の描き方が好きなのか、実に私好みだった。
そして見た目以上に中身に魅力を秘めたキャラが多く、特にそういった姫たる良さというものが見られたのが"SS"のヒロイン達だ。敵キャラなのになぜこれほどまでに良い奴らが多いのか、もうこれはこの娘がヒロインなのではと思うものもあったりして、正直、「作中で一番好きなヒロインは」と聞かれたらSSヒロインズから選ぶことになるのではないかと思う。勿論、メインヒロインにも魅力があるし好きなのでその辺を個別√ごとに語っていきたいと思う。
●ヒナミ√
「ロリじゃないですけど!?」もう可愛いに満ち溢れた先輩ロリ。年上ロリ最高と言いたくなるほど健気で可愛い。そのキャラクターから物語ではマスコット的な立ち位置になることも多い。不満ありげな表情をしていても皆がおだてればすぐに機嫌が良くなる。そうしてお姉さんパワーを振りかざし張り切る彼女が堪らなく好きであった。
また、コミュニケ―ション能力に長けており、それは老若男女問わない。これが彼女の一番の魅力であり、それがこの√でも他√でも役に立つ。この√においても礼が彼女を気に掛ける理由、きっかけというのはヒナミがとても大切な友達であり、かつて友達がおらず一人でいた自分を救ってくれた恩人であったからだ。恐らくヒナミ自身は気に留めていないだろうが、それがまた彼女の人柄の良さを表している。
この√、ヒロインはヒナミで間違いないのだが、話の関係上、礼が大活躍する。だからこそ礼に惹かれるし、彼女を好きになったが最後、どんどん話を好きになっていく。普段は厳しい風紀委員長も実は優しく、面倒見がいい。この時点で私としてはああ、どこまでもついていきますという感じだったのだが、そこに家族を想う気持ち、友達を想う気持ちなんか追加されたらもう、一生ついていきますという感じになってしまう。
家族のためにこの島に来て、嫌悪感を必死の努力で消して、性行為のための知識を勉強し、覚える。必要以上に淫乱な言葉を並べていた彼女の裏にはこんな努力があったのかと思うと、ただひたすら驚くばかりである。また、一見して過保護にも見えるくらいヒナミを護ろうとする姿からは、あの時本当に嬉しかったんだなという気持ちが伝わってくる。
礼のことが好きな私としてはなるべく彼女を話に絡ませてほしかったのであの結末は理想と言える。友情をテーマにしたちょうっぴり不器用だけど、とても素敵なお話だった。今後の礼の立ち位置を考えるとなかなか複雑ではあるが、あの三人なら上手くやってくれるだろう。信じてるぞ主人公。
●奈々瀬√
処女ビッチの奈々瀬ちゃんだが、まあオカン属性の高いこと。面倒見が良すぎる。本人自身も主人公の表情、仕草に母性本能を刺激されることが多いらしく、度々「頭撫でてあげようか」など聞いてくる。その筋の人なら堪らないだろう。日頃から世話を焼いているせいか、他の√でも彼女のオカンっぷりは健在で、主人公の事を誰よりも先に心配し、主人公が何か悩み事を打ち明ける際も親身になってきいてくれる。
彼女がかつての女の子だと分かった時も彼女自身それを武器にするのではなく、あくまで過去にあった事実だと主人公に遠慮気味に言う所なんか彼女の良さが光る場面であり、あれを見て本当に良い子なんだなと感じた。主人公の事を想っているからこそ、第一に主人公の気持ちを考える。主人公の正妻という意味では彼女以上に相応しい女性はいないのではないだろうか。
そしてこの√でも絡んでくるSSヒロインズ。その中でもトップに君臨する桐香様。もうなぜ彼女の√がないんだと叫びたくなるほど好きなキャラクターだった。お嬢様かと思いきや貧乏であったり、強さの裏に暗い過去を秘めているところなんかが実に私好みだし、何より彼女の行動心理に心を動かされた。
初めて人に興味を持ち、その人のそばにいたいと思う。「私を、先輩の一番にしてくださいね?」とはまたなんと不器用な愛情表現なのか。咲きかけの恋心と言ったところか、そんな姿を見てなんだか好きになってしまったし、彼女の恋が実る日が来るといいなと願い続けるばかりである。
●美岬√
妹ちゃんには酷い言われようだったが、まあ天然の入った面白くも可愛らしい女の子である。主人公がこの娘に惹かれるの頷ける。
この√、事態の解決方法や打開策というのはふざけたモノばかりだが、なぜかそれを自然と受け入れられるし、面白い展開だと言わざるを得ない。面白みを感じる理由の一つとして新メンバーの加入だろう。そう、SSヒロインズである郁子が仲間になるのだ。あのサイコパスが仲間とか大丈夫かよと思った瞬間もあったが、家族も同然だったSSから弾かれ、泣き続ける彼女を見てそんな懸念は吹き飛んだ。
助けてくれた、仲間として認めてくれた主人公への恩返しをしようとする彼女は健気で可愛らしかった。それでいて彼女である美岬のことを考え、主人公に過剰な接触はせず、あくまで仲間として立ち振る舞うのも良かった。主人公への愛情以上に仲間という存在が本当に好きで、大切に思っていたんだなと思う。
●文乃√
むべむべ、むべむべ。何だこの可愛い生き物は、何度そう思ったか。もう庇護欲に駆られるとかそういうレベルの話ではない、なんとしても死守して見せる、そんな気持ちにさせてくれるほど尊い存在であった。基本的に敬語のヒロインというのはどの娘も等しく素晴らしい。なんとか江戸時代くらいの夫婦関係を取り戻せないだろうか、常々思っていることである。
この√はグランド√なだけあってとにかく熱い。今まで敵として立ちはだかった手嶋に主人公が弟子入りするというのが少年漫画らしいというか、中々に心躍る展開だった。そしてピンチの時に駆けつけるのがもう最高だ。「不肖の弟子の尻拭いをするのは、師匠の役目だろ?」お前どれだけ株上げるんだよと、そう言いたくなる。
また、SSヒロインズ全員が味方に付くのも王道で面白い。仲間になるとこれほどまでに頼もしいのかと思う程スラスラ敵が倒されていく。こいつらを一気に屈服させた主人公の凄さがわかる。
主人公を見つめながら決して届かない声で「...あなたのこと、本当に気になってたんですよ、先輩」とつぶやく桐香様が切ない。失恋の瞬間である。
最後には仁浦から娘を託され、ドスケベ条例も改正され全てが綺麗に収まる。それがちょっぴり寂しいと思うのはきっと楽しかったからである。始めこそノリに抵抗があったが終わってみると非常に有意義な時間だったように感じる。