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asteryukariさんの雲上のフェアリーテイルの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
雲上のフェアリーテイル
ブランド
COSMIC CUTE
得点
69
参照数
381

一言コメント

話の作りといい、ヒロインの扱いといい不満の募る作品ではあったが、模索すれば良い部分も見えてくるのかなと。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作「空のつくりかた」の世界観を引き継いだ作品ということで、前作の世界観が馴染んでいた私としてはかなり期待していた。前作の主人公とヒロインの間にできた娘が本作のメインヒロインという設定もまたそそる。あわよくば前作のキャラ達が出てきてなんやかんやしてほしいなと思っていた。

結論から言うとあまり楽しめなかった。その理由は大きく二つ。

一つ目は物語が進むにつれてキャラクターの持つ個性が失われていった点。個別√に入ることでヒロインと主人公との距離が縮まり、やがては恋仲になる。そしてそれが主軸となって話が進行していくのだが、それに伴ってヒロインの持つ設定が薄くなっていくのはいただけない。

主人公にぞっこん状態になるのはいいがやる時はやれよと、そう言いたくなる場面がいくつもあった。勿論、全員が全員そうだったわけではないが、共通の頃の方がまだ面白かったかなと。

二つ目は起伏の生み出し方がとても杜撰であった点。共通部分はそこそこ読めたのだが、個別√に派生し、えっちシーンの連発後に始まるお話はどれも微妙。そう感じたのは一つ目の理由が大きく関係しているからだろうが、展開自体も見るに堪えない。起伏は存在したがそれに意味はあったのか疑問に感じてしまう事が多々あった。

物語を締めくくるナツ√に関してはこれまでの出来事、過ごした時間を考えるとそれなりにくるものだったが他は…。それならばむしろ恋愛に特化して終始いちゃいちゃを書いてくれた方がマシだったかもしれない。

とまあ他にもたたけば不満はいくらでも出てくるような作品だったが、良い所も確かに存在した。それは既視感を覚えるやりとりを用意してくれたこと。

例えばわかりやすいのが、序盤のダリアと勢いで性行為に及んでしまうシーン。挿入こそしていないが射精はしてしまい、運悪くその場を他のヒロイン達に見られてしまう。ああ、ユリカの時と同じだなぁと、懐かしさに浸りながらその光景を眺めていた。

他にもナツ√で主人公とナツが会話するシーンでは、母親と父親のやりとりを思い出したりもしていた。直接的ではないが、プレイしたことのある者なら気付くことができる。そういったシーンが無数に存在した。悪く言えば流用しているだけだが、私の目には「良いもの」として映った。

全体としては負の感情に傾きがちな作品だったが、好きなところもいくつかあったのでまあまあ。エンディング曲なんかはかなり良かったのでそこは収穫でした。