攻めるべき所はしっかりと攻め、その上でまとまりも持たせる。全体的によく出来ていたと思います。そして何より結末が非常に私好みでした。
タイトル画面の時点でやばめの雰囲気が漂っていたので警戒しつつ読んでいたのですが...初っ端からグロ満載で思わず顔をしかめてしまいました。絵は控えめなのですが音に気合が入っていて、特に肉塊なんかはとても気持ち悪くてよかったです。某純愛ゲーを思い出しました。沙耶ちゃん大好き!
とまあグロ方面については十分堪能できたかなと。続いてヒロインはどうだったかというとまあ可愛い。どのヒロインもメインを張れる可愛らしさでしたが、一番はやはり十重ちゃんでしょう。和遥キナさんは黒髪キャラを描くのが上手な絵師さんなので、それはもう最高に愛らしいヒロインが誕生していました。
十重ちゃんは序盤こそ不気味ですが終盤になると凄く可愛くなる…といった感想を抱く方が多いかなと思います。ただ、私は序盤から既に心惹かれていました。日本人形を抱えてぼーっと授業を受けている様があまりにも可愛らしくて…ちょっと頭のおかしい感じが逆に魅力的だったんですよね。
なのであの不良には憤りしか感じていませんでしたが、後の話で良い具合に処理してくれました。あの「シャチホコ・グレートデイズ」は内容としては浮いている、もっと言ってしまえば不要だと感じたりもしていましたが、不快感を拭うという意味では役に立ってくれたのかなと。十重様を応援する彼の姿は私の生き写しのようでした。頭から落としにかかったあの女は許せない...。
気持ち悪いものは気持ち悪く、美しいものは美しく描く。ビジュアル面については文句なしに良かったですね。背景もあの方が担当しているということで綺麗でしたし。
で、肝心の中身についてですがなかなか良かったです。話が動き出すのはわりと後ろの方なので序盤は盛り上がりに欠けるものの、後で話の繋がりを整理する時なんかには序盤の話の存在意義も理解できたりして面白かったです。この辺はライターさんの色が出ていましたね。
終盤は好きなシーンがいくつもありますが、一番はやはり迎える結末でしょう。よくやってくれた。主人公が火葬場から目覚めたときは「おいおい…」と天を仰いでしまいましたが、しっかりと作品の定めたルールに則ってくれました。しかしまあ、楽しい時間を挟んだ上で再度絶望に叩き落とすというのは何というか、いやらしい。本当にこのライターさんはこういうことばっかりする。
奇跡によって部員たちは霊障が見えやすくなり、それが彼女たちの荒んだ心を癒す。無論、彼女たち以外の者からは涼や先生の姿は見えない。それをハッピーエンドと呼んでいいのか…私が大好きなタイプの終わり方ですね。霊障を見えなくするために奮闘していたのに、結果的に霊障に救われるなんて…何とも皮肉で素敵な結末だと思います。
話も纏まっていて、ボリュームも丁度いい。女の子のビジュアルに惹かれてプレイした人達からしたらどうだったのか気になるところですが、私はよくできていたかなと。十重以外のヒロインの話をもう少し見てみたい気持ちもありますが、あまり長くなってしまっても仕方がないので良い判断だったと感じます。面白い物語をありがとうございました。