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asteryukariさんのKing Exitの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
King Exit
ブランド
深爪貴族
得点
83
参照数
366

一言コメント

仲間の温かさに包み込まれるような、プレイしていて非常に楽しく、嬉しい一作だった。過去の使い方が本当に好きだ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

監獄から始まるRPGということで前々から気になっていた作品だけあって、プレイがすごく楽しみだった。かつて人類を救った英雄として称えられた主人公がある日突然、仲間も家族も失い地下監獄へ幽閉される。何ともまあそそる導入である。


システムは個人的に馴染み深いRPGツクールVXAceが使われており、移動は勿論、戦闘も見て楽しく、聞いて気持ちの良いものに仕上がっていた。難易度も比較的緩めで、特にレベリングをする必要もなければ、詰まるような場面もない。最終章だけは敵が異常にタフだったりするので時間的な意味合いでやや苦戦を強いられるが、基本的にユーザーにも優しい作りだったと思う。


で、RPGの肝となるストーリーについてだが…これが非常に良かった。何もかも奪われた監獄からのスタートというだけでも心躍るが、現実と夢の世界の二人に分かれて物語が進行していくのが本当に良かったなあと思う。ただ過去回想を流すのではなく、実際に過去を冒険させることにより、主人公の気持ちをより理解することが出来る。その丁寧な作りに何度も感謝を覚えたほどだ。


はじめにも述べた通り導入の時点でもろに私好みだったので、どの章をやっていても楽しかったのだが、その中でも特に面白くなったと感じたのは六章の後半部分。具体的に言うと古城でサミダレ様が仲間になった辺りくらいだ。


ああ、こういった形で登場させてくるのかと、その先の展開を考えると思わずにやけてしまうほどに嬉しい展開だった。「実は生きていた」とかではなく、死が確定している状態なのが残酷で、本当に面白い設定だなと。そして、そんな状態にもかかわらず眩しい笑顔を浮かべるサミダレ様は本当に素敵な御方だ。ちなみに好きなキャラクターはサミダレ様とゲオルイース。


また、八章ではサミダレ様以外の過去の仲間達とも現実で会う事になるわけだが、こちらも同様に素晴らしかった。かつての仲間が敵として現れる、そんな一見悲しいイベントを見てあんなにも心が温まったのは、夢の世界で共に冒険をさせてくれたから。一緒に戦って、会話をして、彼らの性格を理解できたからこそ、何の違和感もなく「試練」だと受け入れることが出来たのだと私は思う。台詞といい、戦闘突入時の立ち絵といい、本当にかっこいい奴らだった。


この作品は本当に仲間の存在を大切にしていて、それが最後まで続いてくれたからこそ、こんなにも楽しんでプレイし続けることができたのだと思う。最終章の総力戦なんかはまさに私の望んだ通りの王道な展開であり、自然と口角も上がっていった。


そして、そんな仲間達からの旅立ちを描いてくれたのも非常に嬉しかった。ここがきっちりしていたからこそ本作を大きく評価していると言っても過言ではない。結果だけ見ればまた一人ぼっちになってしまったけれど、決してそんなことはないのだと、それを「光景」で見せてくれたのが素晴らしかった。




物語を振り返り、こうやって思い出を綴っているだけでも胸の奥が熱くなってくる。プレイ前はわりと凌辱を売りにしている印象を受けたので、どうなのかなぁと待つ時間が長くなってしまったが、今はもっと早くやっておけば良かったなぁとつくづく思う。それほどまでにストーリーが面白かった。

最近発売された同サークルの新作「Demons Roots」も非常に面白そうで、しかも本作よりも大ボリュームとのことなので即プレイしたいと思う。今度はどんな冒険が待っているのか、楽しみで笑みが零れてしまう。