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asteryukariさんのRe;Lord 第三章 ~グローセンの魔王と最後の魔女~の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
Re;Lord 第三章 ~グローセンの魔王と最後の魔女~
ブランド
Escu:de
得点
80
参照数
561

一言コメント

これまでの物語がこの章のために用意されたのだと思うと自然と納得がいく。ちょっぴりダークで心躍る展開に何度も笑みを浮かべてしまった。いつまでも続編待っています。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今回はついに第三の魔女が出てくるという事で、今度はどんなタイプの女の子が出てくるのかなと、わりと軽い気持ちで読み始めたものだから序盤はかなり動揺した。主人公が魔王として行動していて、街を襲撃している。挙句の果てにはエーリカちゃんをテロリストに仕立て上げ、そのまま自身の手で命を奪うなど、これまでとは比較にならないくらい攻め攻めな始まり方になっていて、気付けば画面に食い入るような状態になっていた。

序盤の過去編はさくっと終わるものの、容赦のない内容は続く。イリス関連の話なんかは思わず顔を顰めてしまうようなもので、これまでの二作とは明らかに雰囲気が違う、核心に至る章なのだという事が容易に想像できた。

SLGパートは基本的な部分こそ今までと同じだが、スキルが装備扱いになったり、戦闘ではジャストアタックやリベンジあった区といった新要素が追加されたりと変更点はいくつかあった。が、個人的にスキルはポイントにより成長していく形で良かったと感じるし、新たに登場した地下道の存在もイマイチ。言ってしまえば前作の仕様が一番肌に合っていたなと。

敵に関してはこれまでより少し温くなった印象で、苦戦したのは終盤のアリシア戦くらいだろうか。花びらがやや狙いずらい位置にあるため、二回ほどやり直した。ラスボスに関してはヒットポイントに注意して殴り続ければいいだけなので、あまり強いとは感じなかったというのが本音。

で、シナリオについてはこれまでのようにがむしゃらに魔女を倒すために動くのではなく、魔女の目的とそれから過去に起きた出来事に軸を置きながら進行していく。そして、四話の後に続くやや長めの過去編を経て、元凶であるリアの存在にもスポットライトが当てられていくわけだ。元凶ではあるが、同時にメインヒロインとしても描かれていたのが非常に良かったなと思う。あれを読まされて彼女に情が湧かない人間はそう多くないだろう。本当に彼女のための物語だった。

また、そんな彼女のために文字通り全てを費やしたヴィルフリートくんはこれまで以上にかっこよくて、例え魔王になろうとも彼女を助けようとする姿勢にとても心を打たれた。普段の彼とのギャップも相俟って、より一層ヴィルフリートというキャラクターを好きになってしまった。

そんなわけで大満足のストーリーが描かれていたわけだが、気になるところがなかったわけでもなくて、それはアリシアの存在意義。第三の魔女として大役を担うものばかりだと思っていたので、その捨て駒としか言いようのない扱いには少し笑ってしまった。おまけに主人公に大した行為も持っていないのでヒロインとは言えないし、本当に何のためにやってきたんだという感じで、軽い同情すらした。次作は恐らくヴィルとリアの話になるだろうし、印象的にも薄いまま終わってしまいそうである。

後は個人的な希望として、エーリカに何かしらの形で救いを与えてほしいなと思う。ただでさえ悲惨な事実が待ち受けている上に、ヒロインとしてリアに敵わないことも自覚している。そんな完膚なきまで負けている彼女にどうか、ささやかな祝福を与えてやってほしい。

と色々語ってきたが、何にせよこれまでとは比べ物にならないくらい面白いお話を見せてくれた。ただ、話が進むだけでなく、個々のキャラクターにもきちんと焦点を当てた作りになっていたのがとても素敵だ。続編がいつ出るかはわからないが、その時が来る日を楽しみにしていようと思う。