演出力が目を引く本作だが物語自体の出来もかなり良く、本当にあっという間に時が過ぎていく。読後はfaultという作品の事を一層好きになってしまった。ああ、リガン様…。
開幕早々えらい仕掛けをぶっ放してきた。突然ウィンドウが消えた時は何事かと思ったが…そんなことも出来るのかと、この媒体でしかできないことを見せてくれたわけだ。こんなの気分が高揚しないわけがないし、実際に「すごっ!?」と声を漏らしてしまった。今思えばこの時点で本作に心をがっちりと掴まれていたのだと思う。
また、演出の凄さは最初だけでない。特に最後の数分間はもう絵の効果を最大限に使っていて、息を呑むのを忘れるほど画面に見入ってしまった。クリックシネマ近かったかな。あまりにも良すぎたので終盤あの部分については二、三度ほど見返した。絵の躍動感が本当に凄い。
ここまで演出について語ってきたが物語の方も負けていないのがこの作品の素晴らしい点。というか良い物語があったからこそ、こんなにも心に響く内容になっていたのだなと。そして、本作がここまで面白くなったのはセルフィーネにあるだろう。セルフィーネと言っても普段の彼女ではない、エンペレスシンドロームを発症した時に出たリガン様の事だ。
誰に対しても高圧的な態度をとり、きちんと実力もある。加えて相手に対して容赦がない。こんなにも眺めていて気持ちの良いキャラクターを生み出してくれてありがとう。不快なキャラは数多くいたはずなのに、それらは全て彼女の魅力を引き立てるために用意された駒のようにすら感じた。また、自分が認めたものに対する接し方も素敵だ。流石は王といったところか。
リトナやルーンは勿論の事、次第にソルの事も高く評価しており、称賛する場面もすらある。また、ミルとも冗談を交えながら会話することができるようになるなど、決して厳しいだけではないことがわかる。そうやって和やかな雰囲気が作られていったのだが、それで終わることはなかった…。ただ、だからこそ面白い。
あの薬剤師を絶対悪にしてくれたのは良い采配だったと思う。仲間内の連中すら軽く引くレベルの外道。奴のしたことは到底許せない。そして、そんな私の思いをそのまま行動に移してくれたのはやはりリガン様だった。
にしても真っ先に掴みかかる所だけでもカッコいいのに…こんなの反則だ。惚れない方がおかしい。彼女のそれはまさしく王の行動であった。厳しい面だけでなく、思いやる優しさも持っている。
また、その責務をしっかりと受け継ぎ、同時に罪も受け入れたセルフィーネもまた素晴らしい。それが彼女にとってどれだけ重く辛いことだったのか、それが最後の一枚絵に集約されている。
良かったのがEDムービーで、ご都合主義を混ぜてこなった点が嬉しい。希望は与えるけれど、奇跡は起こらない。その筋の通ったシナリオ作りに惚れ込んだ。タイトル画面で彼女の努力が実っているのもまた素敵だ。きっと彼は笑顔を浮かべているだろう。
こんなにも面白い作品に出会えて、今は凄く嬉しい。続編は未だ開発中とのことだが、動きはあるみたいなので楽しみに待つとする。…頼むぞ!