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asteryukariさんのつよきすFESTIVALの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
つよきすFESTIVAL
ブランド
CandySoft(きゃんでぃそふと)
得点
88
参照数
552

一言コメント

最終作に相応しい内容だった。これをやらなけらばつよきすは終われない、彼らと共に歩んできたなら見届ける義務がある。そしてここまで連れてきてくれて、本当にありがとう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

つよきすシリーズの最終作ということで期待と寂しさを胸にいざという感じで読み進めていったが、まあ凄まじかった。無印からNEXTまでのキャラクターたちを存分に使い、話を展開していく。サブキャラも立ち絵はないが声だけは付いていたり、それが逆にハッとさせられて、気付くことが出来て嬉しかったり。ファンサービスの大盤振る舞いだった。

この作品、プレイする前は単なるFDだと思っていたのだが、そうではなかった。集大成とでも言うべきか、つよきすシリーズの幕を閉じるにふさわしいものだった。キャラなどのファンサービスも凄いが何よりテキスト量が半端じゃない。END数の多さに加え、プロローグで会話を全て拾うなどしていると時間が泡のように溶けていく。だが、懐かしさと楽しさからそれが全く苦ではない。むしろ他の未だ見ぬ会話が見たいと思う一方だった。

内容はもう何というか、感謝しかない。無印のキャラクター達の登場機会をこんなにも用意してくれて、そしてNEXTヒロインの話にも絡ませてくれてありがとうと、ライターさんにファンレターを送りたい気持ちだ。それと同時に発売直後にプレイしておけばと後悔の念も少々。まあ私情はさておき√ごとに感想を述べていきたいと思う。

★NEXT編
前作のヒロイン達のアフターとサブキャラのきつね、そして本作の追加ヒロインであるところの勝気を加えたボリューム満点なものとなっていた。サブキャラのENDも最後に解禁される「祭りのあと」のために見なくてはならない。まあ正直サブキャラの話はおまけ程度の内容だったが。

アフターの内容も基本的にはイチャラブ生活をさっくりと見せるようなものだったが、中には本編の時に語られなかった秘密が公開されるものもあり、概ね楽しめた。また、きつねと勝気の√もキャラクターの個性を活かしていて、中々いい出来だったように感じる。

●はかり√
乙女さんと蟹の登場により一層騒がしくなり、はかりちゃんが消えてしまわないか不安だったが、まあ頑張ってたと思う。相変わらず天然とお姉さんという属性をうまく使ってくる。シーンの表情も大人っぽいものが多かった。

内容について言うことはあまりないのだが彼女の真価は祭りのあとで発揮されるのでこの辺で。強いて言えばレオとの絡みが見てみたかったかなと。

●音子√
もうしっかりナギのペットになってしまった彼女。行為の最中は「あううううもっと、もっと可愛がって」なんて言っちゃう。本編ではナギがドSなだけだと言っていたが間違えいない、キミがドМなんだ。まあ普段厳しく振る舞ってる分、彼氏には甘えたいのだろう。まったく、ギャップ萌えというものをよくわかっている。皆の前でお姫様抱っこを披露したり、日々の惚気話を仲間に聞かせたりとナギも大概だ。結局こいつらがNEXT勢で一番バカップルしていたかもしれない。

●チェリ√
チェリの”うち”という一人称の由来がわかる話。いつ見てもあの自転車に二人乗りしているCGは良い。結局、何もかもがあの修学旅行で変わったんだと、あの出来事の重要性を改めて理解した。

舞妓さんが言っていた、「他人の声なんて全部無視。自分が楽しいと思うことだけ考えとればええ」というのはわりと大切なことで、辛い辛い言うより楽しいことを考える、私自身もそうやって日々過ごしている節があるなとふと思った。結局それが一番いい。

そしてチェリの舞妓姿がとてもとても可愛かった。個人的に中学生の時の黒髪のチェリも好きだったので予期せぬ収穫だった。まあでもチェリはそのままが一番かな。

●子羽√
前作の最後に兄であるスバルと再会した子羽だったが、やはりそう急には距離は縮まらない。時間が空けた二人の溝は想像以上に深かった。まあ二人とも人と慣れ合うのに慣れていないというの大きいだろう。そういうところも似ていて微笑ましかった。

結局、兄妹の仲が完全に元通りとはならなかったがそれでよかった。急に仲良くなっても困る。これから時間をかけて距離を縮めていく。その第一歩が料理の共同作業。うん、良い落としどころなんじゃないだろうか。

●澄香√
乙女さんと仲良しなのが意外だったが噛み合っていた。乙女さんが大人の女性らしくなったのが大きいだろう。もともとしっかりしていたのとは別に、人としての優しさも身につけたように感じる。まさにお母さんみたいな、そんな感じである。

澄香と言えば前作ではお兄ちゃんが多大な迷惑をかけていたがすっかり丸くなっていて、ホッとした。まあ相変わらずオラついてはいたが、あれはきっと彼の性分なのだろう。

●きつね√
白状すると本編ではかなり嫌いなキャラクターだった。自分の崇拝する人のためならばなんでもできる。自分勝手な行動をする。履き違えた正義を振りかざし物事を力で解決する。などなど不満だらけだったわけだが、本作では何とか受け入れられた。

その理由はズバリえっちだから。そう、彼女は非常にえっちなのだ。ナギに屈服させられて従順になってからの彼女はまあえっちだった。ご主人様を見つけたと言ったところか、まさしく愛に溺れていた。だからまあ好きにはなれなかったが、えっちだったので良かったという感じだ。

●勝気√
姫以上の天才ということでどういった話になるのかまったく想像がつかなかった。正直、ボクシングが始まった時は”違うな”と感じた。天才でカリスマ性がある彼女がそんな泥臭い勝負をするというはどうなんだろうか、そう思いながら読み進めていたが、まあ上手く弱点の話に繋げたと思う。

どんな天才にも弱点があったと、壁にぶつかるとすぐ泣いてしまう。痛いのが嫌だ。内面は弱い女の子だったというわけだ。それをナギが支えてあえることで試合としても、恋愛としても上手くいく。バランスが取れている良い話だった。

そして姫との戦い。いや、VS伝説世代。ふざけているようで内容は良かった。セ―シュンは何兆円よりもはるかに価値がある。ここにきてセ―シュンなんてワード使ってくるのはずるい。

この話で何よりすごいのは、姫が立場上、悪役だったのにまったく不快感を感じなかったというところだ。これも彼女の性格のおかげだろう。「基本は頭いいんだろうけど、調子乗ると微妙にアホの子になる」うん、その通りだ。それが彼女の弱点でもあり、良い所なのだ。この性格に作品としても救われたのではないかと思う。

★伝説世代編
乙女さんに始まり、蟹、フカヒレ、スバルと懐かしい面子が登場。この時を待ってたんだと言わんばかりに画面にかじりつくように彼らの会話劇に見入っていた自分がいた。本作での彼らの会話はどれも”大人になった”と感じるものばかりで、以前のようなふざけたことを言い合うような場面は少なかった。それがちょっぴり寂しかったり。もちろん良い意味で。まあフカヒレくんは相変わらず変態じみた発言ばかりしていて、何もかもオヤジになってしまったなと苦笑した。

そう、もうオヤジみたいじゃなくてオヤジなんだと…。もちろん、彼らも二十代でまだまだ若いがやはり学生時代と比べるとどうしてもそう感じるし、伝説世代たちの会話もそういった類のものが多い。そしてそれが一番私の胸に響いた。学生時代の仲間と再会し、酒を飲みながら昔を懐かしむ。ああ、なんて素敵な時間だろう、こういった描写にいつもいつも心を掴まれる。

先程、ふざけたことを言い合うような場面は少なくなったと言ったが、キャラクター達はあまり変わっていない。もちろん外見はかなり変わったが、性格は昔と変わってないし、交友関係だってそうだ。むしろ昔は仲が良いわけでもなかったやつらが仲良くなっていたりもした。

例えば洋平なんかがそうだ。立ち絵はなかったが、彼の出番もちょくちょくあった。昔は乙女さんに憧れ、スバルに対抗心を燃やしていた彼が、今じゃスバルに”いつもの”なんてお酒を頼む。個人的に仲良くなってほしいと密かに思っていたので、これが地味だがかなり嬉しかった。

もともとお互いスポーツマンなので、何回か会話しているところもあったのだが、やはり別の組ということもあり何かといがみ合うことが多かった。それも卒業してわだかまりが解けたと言ったところか。ビジュアルファンブックに洋平のラフ絵が描かれているも良い。

また姫と瀬麗武もまた本作で仲を深めたと言えるだろう。中を深めたというよりは利用されているというのが正しいが。いつまでも乙女さんに決闘をけしかけているだけの彼女じゃ困る。だからこそ姫と組ませたのは非常に良い考えだと思った。瀬麗武自身、姫の護衛がしたくてと言う感じではないため、よっぴーと取り合いになることもない。そういえばよっぴーは相変わらず怖かった…。

とまあ新たに仲良くなったキャラ達について語ってきたが、昔から仲の良かったキャラ達も勿論良い場面に溢れていた。生徒会メンバーがスバルのバーに集まり語らうシーンなんて素晴らしい。昔は馬鹿みたいに学校ごと振り回した彼らも大人になり、お酒を飲みながらしみじみ語り合う。

乙女さんの「明日も仕事だから」と言って酒を遠慮するシーンなんかは彼らが大人になった、なったしまったことを実感させる。一緒に話している面子は同じなのに、あのころとは何もかもが違う。そんな切なさがCGからも口調からも漂っていた。でもそんな切なさが堪らなかった。

●乙女さん√
この√が一番懐かしさを感じた。乙女さんとレオが再開し、街を見て回る。彼らと共につよきすという物語を歩んできた私としてもくるものがあった。学校に着いた時にパッと出てくる過去のCGがズル過ぎる。特に三学期のグランド√の最後で使われた集合写真、あれはいけない。

●甲殻類√
この√がダントツで胸に突き刺さった。もう刺さり過ぎて今も抜けてない。血の代わりに涙がドバドバ出てくる。この√でのレオは外回りをしている。開幕早々、相手先が”片瀬様”で笑ってしまった。恋奈の顔が見たくなった。

昔は一度駄弁ると2、3時間は当然だったのに、今じゃ10分で別れる。そんなサイクルに慣れたのはいつだったか、こんな生活が当然になってしまったのはいつからだったか。この√、懐かしさを感じるだけでなく、学生から社会人になったプレイヤー達に現実味のあるシナリオで襲いかかってくるのだ。そういった意味でも辛い。

そしてスバルの登場及び、あのCGにはやられた。あのCG、レオがフカヒレやスバルと会っている時だけレオが笑ってるというのがまた凝ってる。まあ、一人の時に笑っていたらアレだが。表情差分を入れることで社会人の辛さと、友達と会う楽しさを表しているんだと、そう思うと胸を締め付けられる…。

さなぎ達を見て昔を思い出すのもずるい。というか昔の立ち絵出すのは反則だ。あの瞬間、懐かしさがブワーッと溢れ出てきた。それでも今の生活が大切で幸せだと家に帰っていくレオは学生ではなく、社会人に。子供ではなく、親になっていたんだなとしみじみ思った。

●姫√
尻に敷かれていると思いきやまさかの姫にスパンキング。普通に笑ってしまった。本編の時も思ったがこの二人も良いコンビだ。姫らしく、雌らしく。特別に見えて案外普通の夫婦なのかもしれない。

●なごみん√
一番普通に妻としての道を歩んでいた気がする。ちゃっかりウェディングドレスを着ていたが、この作品で一番かわいかったんじゃないかと思う程、よく似合っていた。というかビジュアルが綺麗すぎる。加えて表情も妖艶で、フカヒレが美人捕まえやがって~と言っていたのも頷ける。結婚して嫁さんに変わったことはあるかと聞かれて、「名字が変わった」と答えるレオがかっこよすぎる。

●よっぴー√
勝気√でもレオが帰ってくると知ってこっそり会う約束をしようとしていた彼女。昔からレオの事が大好きだったもんなぁ…未だに好きなのは珍しいと思いきや他のヒロインもそんな感じなのが面白い。素直とか蟹とか瀬麗武とか。あとスバルも。

●素直√
勝気√では、レオと海外にいたことからか皆からデキてると噂され、まんざらでもない彼女。相変わらず可愛い。そしてこの√では自身の夢も諦めず、主人公も手に入れて、それはもう幸せそうだった。そんな彼女だが、プロローグでは「後悔すると思う」とか「素直にね」と言った言葉を零している。どこまでも女の子らしい。

●瀬麗武√
武闘派というのは大人になっても変わらないようで、レオと一緒になっても何かと落ち着かない彼女だったが、性行為の時には大人しくなる。もはやつよきすあるあるだが、やはりこれが好きだ。彼女の眼鏡は”知的に見えるから”という理由で掛けているらしいが…うん、やっぱりそういう所も変わってないんだな。

★祭りのあと
尺が短いのと、EDがないのは少し寂しかったが、伝えたいことはハッキリ伝わった。乙女さんの言葉ははかりを通して我々へ問いかけていたのだろう。「やっぱり寂しいか?お祭りが終わってしまうのは」寂しいに決まってるだろ、もうマウスをクリックする手が止まった。急に寂寥感が押し寄せてきた。そりゃわかっていた、伝説世代編に入ったあたりから終わりが近づいてきているのはわかっていたが、やはり駄目だった。喉の奥が締まり、涙が零れた。

★総評
一番に感じるのは終わってしまったという寂しさ。はじめはギャグだけの作品だと思っていたのに、進めていくうちに熱い展開が来たり、かと思えばちょっぴり切ないお話を入れてきたり。そうして次作に期待を抱けば裏切られたり、また持ち直したり。長いようで短かったなと、本当にそう思う。

ここまでつよきすシリーズを引っ張って来てくれたスタッフの皆さま、そしてキャラクターのみんなに感謝。ありがとうございました。