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asteryukariさんの天気雨の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
天気雨
ブランド
ぐみそふと
得点
82
参照数
301

一言コメント

自然に囲まれたのどかな地でキツネ娘たちと出会い、触れ合い、生活していく。本当にそれだけでありながら、ここまで充実感を得ることができたのは作品の目的と己の目的が合致したからだろう。まさに至福の時を過ごさせていただいた。ありがとう…。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

別に大きなイベントだったり、盛り上がる場面というのは特になく、本当にただただキツネ娘たちと戯れるだけ。では、なぜこんなにも充実感を得ることが出来たのか。それはこの作品のコンセプトにある。

この作品、木々に囲まれたまさしく自然が舞台となっており、そこが魅力の一つでもある。まあこれだけでは単なる雰囲気ゲーで終わってしまう所だが、この作品は違う。自然の中で生活していく上で、大きいイベントは入れることなく、あくまで自然の中での生活のみを描いていく。花火なんかのシーンはあるが、それは夏祭りやら花火大会などではない。

小さくて、でも夏の思い出にピッタリな手持ち花火なのだ。自然の中でどかどか音を立ててはいけないし、そんな大きな火の塊など打ち上げてはいけないのだと、その時、強く認識した。現に手持ち花火でも白や狐は怖がっていたし、慣れてきても最後まで自分達ではやらずに主人公がやっている姿をただただ眺めていた。

また、白や狐は人間世界とは縁のない、あくまで自然の中で生きて生きた女の子であるから当然、人間との間に認識の壁が存在する。木の実や魚、それから山や辺りの地形に詳しい彼女達は、一方でテレビやネットはおろか、男女の違いについてだって理解しちゃあいない。

そんな状態であるからこそ、性の知識などは皆無で、あんなに誘ってきたりからかってきた狐ですら、わけもわからず好奇心で咥えてみたようであった。それが私はとても嬉しかった。これは当然、ギャップやらなんやらで嬉しかったと言っているのではなく、ああ、本当に人間と深く関わらず自然の中で生きてきたのだなと、それが如実に彼女達に表れているなぁと感じたからだ。

そうして知らなかった性の知識を覚え、快楽に溺れていく姿なんかもまさに獣のようであるし、納得のいく?はおかしいな。正直に申し上げると、とてもとてもえっちだった。まあそこについては明らかに力を入れていたので一応良かったよと一言。

結局この作品を通して、この作品に何を感じ、何がコンセプトだと思ったか。
それはこの作品は自然を舞台にしながら、この作品自体の作りまでもがとても自然で、故に違和感が全くないということ。だからこそ自然らしさというのも出てくるし、そういった部分を楽しもうと思っていた私としては歓喜のあまり震えた。

そしてメーカーはこの「自然さ」で勝負がしたかったのだと思う。彼女達の言動、行動は先程述べた通り、主人公に関しても就活生という立場でありながら、それについて深く言及する、あるいは非難する要素は一切ない。そしてそのために登場人物を親ではなく、祖父祖母に限定したのだろう。

また、動きといえばキャラクターに動きをつける「E-mote」もとてもうまく機能していた。耳や尻尾を動かすことでより「っぽさ」が出ていたかなと。

正直なところ、まあ最低でもケモノ娘といちゃこらできればいいやくらいの気持ちだった私としては満足過ぎた。こういった作品がまだまだ世に溢れているというのならば、やはり当分はこの「エロゲ―」という媒体から離れられそうにない。