独特のシステム、周回のせいもあって攻略にやや時間がかかりましたが、やってよかった作品でした。その場限りの恋愛ではなく、将来を見据えた付き合い方について描かれていたのが良かったです。
始めた当初は物語を進めていくためのシステムの面倒さに辟易していましたが、進めていくうちに解放されていくショートストーリーや、組み合わせで変化していく好感度をモチベーションに攻略していきました。ショートストーリーは共通ルートの役割を果たすと同時に、各ヒロインの個別√の話に繋がるような内容を含んだものもあるので、見たことのないものは読んでいった方がいいです。個別√も思った以上に内容があるお話が多く、このヒロインの話だけおもしろいというよりは、どの話もそれなりに踏み込んだ話があり、中には悪い意味で期待を大きく裏切ってきたシナリオもありましたが楽しめました。
個別√は特にリンカが非常に良かったですね。リンカ√は作品特有の告白エンドと通常エンドの二つのシナリオを用意するというのが功を奏したと思います。告白エンドに入って追い詰められた主人公がリンカを突き放すようなことを言ってしまった時のリンカの対応に思わず涙を流しました。付き合い始めたきっかけが所謂「ごっこあそび」だったにも関わらず、すぐに身体の関係を結んでしまったり、嘘ばかりでなかなか本音を話さなかった彼女が、付き合っていくうちに本当に主人公のことを好きになる。
主人公のそばに寄り添いこれからも支えていきたいがために夢を諦め、いつもと変わらない表情で再び主人公の元に戻ってくるなんて涙を流さない筈がないんですよね。ただ、主人公が奇跡で回復する展開と諦めたはずの夢が数年後という形で叶うのには賛否両論があると思いますが、個人的に後者に関してはリンカが主人公を想って歌に未練がある事を嘘で隠していたという事実が明らかになるのが良かったですね。それについて叱責する主人公には「いや何言ってんだお前のせいだろ、こんなに良い子なのに」と少し嫌悪感を抱きましたが。
また告白エンドに対し通常エンドでは、お互い夢を追うために別れ、数年後に再開するというのが綺麗で読了感が良い話であると同時に、悲劇が起きることで夢を諦めることになった二人への救いの話になっていて良かったです。
また友希のシナリオも告白エンド、通常エンド共に出来が良く、少々くどかった下ネタも主人公を追いかけたい一心から出てしまうようになったことや、夢を追う主人公に寄り添っていこうとする姿からは幼馴染としての魅力が感じられました。特に素晴らしかったのが告白シーンで、告白シーン自体は他のヒロインにもあるのですが、個人的に幼馴染が好きなのもあり、セリフを覚えるくらい見返しました。幼馴染だからこそ伝えられる過去から現在にかけて変化してきた想いをこれでもかというくらいセリフに含んでいて、この告白シーンに幼馴染の魅力が全て詰め込まれている、そんなシーンでした。
まひるは、告白エンドで自分の恋よりも友人関係を優先するまひるの優しさが描かれていたのは良かったのですが、通常エンドが謎展開で少し勿体無かった気がします。千穂はその設定とシナリオの長さは必要だったのかと思いますし、彩雨に関しては、彼女のキャラを考えると重いシナリオにする必要はなかったとですぅし、結末も問題の解決には至らないので、このようなシナリオを彼女に課してしまったのが残念ですぅし、お気に入りのキャラだったため結構凹みました...。
この作品は絵が好みのキャラが多かったのでプレイしたのですが、想像以上に自分に刺さる要素を含んだシナリオが多く、Hシーンも構図や液体の描き方が良い上に動くものもあったのでとても良かったです。またライターさんが範乃秋晴さんということで日常の中でキャラの魅力をうまく描写しており、読んでいて楽しいと思える作品でした。