本当に読み進めるのが楽しく、いつまでも終わってほしくない冒険であった。単にキャラクターを引っ張ってきたのではなく、彼らに再び光を当て、新しい物語の担い手として活躍されてくれたことを大変嬉しく思う。
タイトルのごとく過去作に登場する様々なキャラクター達を一つの世界に呼び寄せた作品であり、言わば全てのファンディスク。懐かしのメンバーに再開できることは勿論、他作品のキャラクター同士の会話が意外と弾んでいたり、逆に喧嘩していたりとまさにお祭りのような作品に仕上がっていた。
元の世界の異なるキャラクター達が生きるために協力し、戦いを繰り広げる。思えばえるまにも似たような作りの作品だったが、本作はそれをさらに大きく広げ楽しいものにしていたなと。懐かしさと新鮮さが入り混じるあの感覚は本作の大きな魅力の一つだろう。
また、過去作で死亡したキャラ(特に魔法少女なんかは多数存在した)はどうするのかなぁと思っていたが、考えられる最高の手段で登場させてくれた。天界を舞台にしてしまうだなんて本当に天才的な発想だ。違和感もなくごくごく自然、喜びだけが湧き上がってくる最高の話運びだった。
そして、ワイワイ騒いで終わりなわけではなく、集まった彼女たちが今度はもう一つの物語の主人公として再び歩みだしてくれる点が本当に素晴らしいし、そういった作りにしてくれた事に深く感謝した。
ここからは話の中身について触れていく。
まず良いなと感じたのは、先にも述べたがやはり他作品のキャラクター同士が共に行動する事で交流を深めていく点。ルーティ、千代子、雪という異色な組み合わせから始まり、アトリア、グロッサと仲間がどんどん増えていく。個々の作品で積み上げたキャラクター像を壊さず、それでも一致団結していく様は流石だなと。千代子は何だ感がリーダー気質だし、ルーティは相変わらずおバカなエルフだった。
その後、6話にて現実世界ではもういないアルハヨットとの再会をきっかけにそこから様々な死者たちと出会っていく。個人的にかなり胸に来たのは唯で、まあ魔法少女で一番好きだったキャラクターなので何も思わないわけがなく、彼女が出てきた際は悲鳴を上げてしまった。
「知り合いを見つけたから助けるだけ」だなんてそんな...冷たいようで実はとても優しい心を持った彼女は全く変わっていなくて、おいおい泣いてしまった。おまけに遥とも仲良くやっているとのことだったので、もう涙が涙が...。魔法少女でふと零した彼女の唯一の願いがこの天界で叶っているのだと思うと、それだけでもう満たされた。
加えて後にテロメアと出会った後の会話も涙を誘うモノばかりで、彼女への救いがそのまま私への救いになっているような、そんな感覚だった。救ってくれてありがとう。
また、遥についても同様に涙腺を刺激する場面はあったのだが、彼女に関して言えば感動よりは笑える場面の方が多かったかなと。何がそんなに面白かったかというと、それは要とのやりとりだ。
衝突するだろうなと思っていたが...遥は千代子の事を「神」と呼ぶ要を「キモ」と一蹴し、挙句の果てには要の前でわざと千代子とイチャイチャしたりと、それはもう火に油を注ぎまくっていた。今にも殺しそうな勢いで「悪魔」「悪魔」と連呼する要を見てこちらは大爆笑だった。
そして、復活するのは仲間だけではなく、かつて倒した敵さんも同じだという事で、サダルメリク、アークトゥルス、シナプス、仮面の男とも再開することになる。まさかここまでやってくれるとは思わなかったので、彼らの再登場は単純に嬉しかったし、仲間のパート以上に彼らの動向が気になる瞬間もあった。協力するとしたら誰がリーダーになるのかとか、本当に色々な事を妄想しながら楽しく読んでいた。
ここまでのシリーズをやってきて薄々気づいてはいたが、やはり仮面の男は別格だった。ありとあらゆる知識、技術を吸収し、強力な存在になっていく彼。誰かに力を与えられるのではなく、あくまで学習して強くなっていたのが非常に好感が持てる。そんな彼との最終決戦が燃えないはずもない。
最終決戦についてはアクエスやテラが協力してくれたり、最後の最後まで仮面の男のキャラがぶれなかったり、色々と褒めたい点はあるが一番はやはり千代子、ルーティ、シリウスの三位一体攻撃で幕を下ろす点だろう。もはや他に誉め言葉が見つからないくらい最高だった。再びルーティがとどめを刺しているところも良い。
笑えて熱くて楽しい冒険にもやがて終わりは訪れるわけで、私としても覚悟はしていたが、唯が号泣しているのを見て駄目だった。なんでお前が泣くんだよと、彼女の気持ちを痛いほど理解し、私も泣いた。
はじめは彼女達を邪険に扱っていた天界の精霊たちも最後にはぐちゃぐちゃに泣いて彼女達を見送っていた。精霊たちの中では特にシーが良いキャラしていて、その強さからもわかるが精霊たちの中でもかなり重要な立ち位置にいたかなと。普段の楽天的な発言も良いが、仲間想いな一面も素敵で、中でも現代に帰す方法がわかってしまった際のミーとの会話は印象的。
「ミーは楽しくなかったのか、この冒険私は生まれてきて一番楽しかった。」
「みんなこの天界に尽くしてくれた偉人。そして私の部下であり仲間、友達なのだ。」
私自身もみんなと共に冒険してきたからこそ彼女の言葉、想いがよくわかる。
他にも朱莉とツィーの関係だったり、恋する琴音ちゃんの事だったり、語りたいことは山ほどあるがとりあえずはこの辺で一区切りにしておこうと思う。
改めて、素敵な冒険をありがとうございました。