ぶっきらぼうな主人公が無垢な少女を拾い、共に生活していくことで主人公自身が変わっていく物語。成長物語でありながら、その人にとっての幸せとは何なのかを考える話でもあり、結末には驚かされた。「拾い子と一緒に暮らす話」が好きという方には是非やっていただきたい名作
見知らぬ少女と出会い、面倒を見る。恐らくこういった作風に心を揺さぶられやすいんだと思います。もう、とりあえずENDを二つにしたのが素晴らしいです。こいつを幸せにするのは俺の仕事じゃない、かつて母親が自分にしたこととは違う、そう自分に言い聞かせていたマクビーが、自分が幸せにすると覚悟を決める。選択肢によって結末はまるで違うのに、シャロンを幸せにしようとするのはマクビーだということはどちらも変わらない、そしてどちらにも確かな幸せが存在してる。これを統一したのが素敵だと思いました。
私はてっきり知らせる方のENDでは、シャロンは両親と暮らすようになり、マクビーがそれをたまたま見つける、あるいは手紙かなんかを受け取るようなかたちで幕を閉じるのかなと思ったら全然違いました。あの母親がシャロンのことを売り物の道具としか考えてなかったとは、なんと非情なことでしょう、それを知りまず最初に湧き上がってくる感情は怒りではなく、悲しみでした。幸せになってほしい、心の底からそう思いましたし、続きを読むのが怖くもなりました。
だからこそあそこでのマクビーの決断には感動とかそういった感情ではなく、感謝の気持ちが強かったですね。もちろんそれを可能にしてくれたシドさんにも。そこからダイジェスト形式で流れてくる三人の幸せそうな絵を見たらもう泣くしかなかったです。よかった、よかったねと。この絵の何がいいかって、背景が暖色なんですよね。掴み取った日々の温かさというものをこれでもかというくらい際立たせているんです。
そして知らせないで本当に「ゆうかい」することで得た幸せのEND。こちらも切なくも大好きな終わり方でした。このENDでは、先のENDとは異なり、マクビー一人でシャロンを守らなければなりませんでした。シャロンのために尽くし続けた彼は疲れ切っていた。そんな彼を、自分の人生をかけてまで自分を守った彼のためにもシャロンは普通の幸せそうな女の子を演じ続ける。これだけ見るBAD ENDのようなのですが、違いましたね。先程も触れたとおり背景も暖色ですし、これも幸せのかたちなんです。
友達なんていなくてもいい、男なんてできなくてもいい、シャロンが本当に望んでいたのはマクビーだけだった、二人でいることが何よりの幸せだったんだと。二人が幸せならば、あとはどうでもいい。投げやりにも見えますが、私は素敵だなと感じました。自分が壊れるよりもこの人と一緒に居れなくなることの方が辛い。これを純愛と言わず何と呼ぶか。そこに責任やら後悔といった言葉は必要ない、大切なのは、幸せなのは、二人でいること。私としてはこちらのENDの方が好きかもしれません。
全ての物語を読み終えた後に見るタイトル画面のズルさといったらですね、本当に素晴らしい作品でした。