読み進めるほどに好きなキャラクターが増え、元々好感度の高かったキャラクターは更に磨かれていく。総じて満足度の高い一作だった。
ひょんなことから戦国時代に転生した主人公が信長を名乗る少女と出会う…ということで今回は冠する通り戦国を舞台にしたお話となっている。恋姫無双シリーズを存分に楽しんだ身としてはこの戦国無双シリーズも非常に楽しみで、長年温めていた。
こちらは三国志とは違って多くのエロゲで扱われている題材なため、題材に対するワクワク感は薄いが、前シリーズ同様に愛らしい女の子たちが多く登場するのでまあ気分は上がる。此度はどの武将、知将を好きになっていくのか、プレイ前からそわそわしていた。
まずは本作のボリュームについて触れていきたい。本編は三十一章あり、本編後に解放されるアフター(北条編)が八章、おまけに章の合間に幕間劇と呼ばれる身にシナリオが複数用意されている。そのため、その辺のフルプライスエロゲと比べてもかなりボリューミーで、恋姫無双シリーズでもここまでボリュームのある作品はなかった。
そのためキャラクター達と関わる時間も長く、それが本作を最後まで楽しんでプレイ出来た大きな理由に繋がっているのかなと。長ければいいというわけではないし、中弛みがなかったかといえばそんなことはないが、かなり充実した時間だった。振り返れば振り返るほどに幕間劇の存在が生きていたと思う。
さて、次に内容についてだが、先ほどもちらっと触れた通りかなり尺が長いので、まあ常に右肩上がりに面白かったわけではない。序盤となる十章あたりまでは基本的に出逢いのお話であり、織田から足利、浅井と少しずつ交友の幅が広がっていく。久遠がメインヒロインでガンガン前に出ていくのかなと思っていたら、実は剣丞隊の活動の方が目立っていて驚いた。読み進めれば読み進めるほどに剣丞隊のみんなが好きになっていくし、詩乃ちゃんのことを好きになっていく。久遠?ああ、そんな妻いましたね(笑)。
十五章辺りから物語も盛り上がってきて、十七章を読んでいる頃にはもう夢中になっている。十七章は結構尺があったらしいが、そんなことを忘れてしまうほどに読み耽っていた。これまでイージーすぎた戦いに初めて転機が訪れ、絶望がキャラクターだけでなく、プレイヤーにまで届く。軽く振り返ってみても頬が緩んでしまう至福の時だった。
ただ、北条から先の武田、そして上洛編に関しては気持ちが沈んでいったというのが正直な感想で、読んでいて心が躍る瞬間もなければ、落胆してしまう場面もちらほら。物語的には鬼と武将たちの総力戦ということで盛り上がっているのだが、交友関係に目を向けるとかなり駆け足気味で、お話的にはダレ気味という中々に大変なことになっていた。
エーリカの使い方及び最後の展開もかなりチープで、個人的には最後の最後で楽な方に行ってしまったなぁと。吉野の御方の登場に心躍ったプレイヤーなどいるのだろうか。ただ、最後の戦いでは、自分の好きなキャラクターの見せ場がしっかり用意されていたり、胸熱な展開が用意されていたりもしたので、嬉しい瞬間もいくつかあったなぁと。そういった点も含めて振り返ると全体を通して楽しくはあった。
北条編は…朧ちゃんが思い描いていた通りの扱い、キャラクターしていて口角が急上昇した。痛いくらいがいいじゃないぞまったく、すっごい可愛いじゃないか!
とまあこんな具合で内容に関しては多少の不満あれど、全体を通してかなり楽しませてくれた。いかんせん好きなキャラクターが多いので、嬉しい場面に溢れていて、それがこの満足感に繋がっているのかなと思う。それでは最後にお気に入りのキャラクター達について触れていく。当然だが、この五人以外にも好きなキャラクターはたくさんいる。本当に大体どの陣営にも一人は好きなキャラクターがいたから困る。
◆結菜
織田家で一番好きなのは久遠…ではなく結菜だった。これはまあ声優さんの補正も多少はあったのだが、単にツンデレでかわいいだけではなくて、最初から最後まで姉さん女房的なスタンスでいてくれたのが大きい。作中で放置され気味にもかかわらず、剣丞と会いたいとわんわん泣くのではなく(他意はない)、愛する夫を信じて待ちつつ久遠を支えてくれる。こんなに出来た妻は中々いないだろう。
◆詩乃
来ました本作のメインヒロイン。初見はモブかと思っていたが、まさかこんなに輝きを放ったキャラクターになるとは…。剣丞隊の中では勿論、全キャラクターの中でもかなり優遇されている印象を受けた。いちいち圧倒的な愛らしさでぶん殴ってくるので、その度に悶えていたし、彼女の上目遣いを見るだけで心が満たされた。後半に差しかかって、主人公が自らの危険を顧みない行動に出た時も、彼女だけは泣いて止めていた。これをメインヒロインと呼ばずして何と呼ぼう。
◆梅
高飛車系お嬢様だと思ったらダーリン大好き系ちょろ女さんで笑ってしまった。どっちも好きな属性なのですぐに好きになったし、物語が進むにつれて芯が太くなっていくのも非常に良かった。特に武田から合流する場面の彼女は印象深い。いつの間にか凄くイイ女になっていて、静かにつぶやく「お帰りなさいまし」が胸に響いた。戦力としても欠かせない存在になってくれたのが本当に嬉しい。
◆一葉&幽
この二人だけまとめて書いているのは、二人だからこそなためである。この二人にどれだけ楽しませてもらったか…恩義すら感じる。普段は漫才をしているくせに、戦場になるとこの二人にしか目がいかなくなってしまうほどの活躍を見せ、敵を圧倒する。こんなの好きにならないはずもないだろう。
「余はな。楽しい。今、生きているのだと実感する。二畳の床の間に座っている時は、生きているのではなく、生かされているだけであった」
「だから余は、この時間がずっと続けば良いと願っている」
最終戦の一葉の台詞が凄く好きで、彼女の言葉を聞いた幽の反応も格別に良い。
本当に最高で最強の二人だった。
◆鞠
癒し枠だと思ったら内面はかなり大人びていて、おまけに腕っぷしも作中最上位クラス。好きになるのは必然と言えるほどに安定感のあるキャラクターだった。けれども完璧ではなくて、時たま年相応の不安を零す場面があるのも凄くいい。そういった意味でも長尾編は面白かったなと思う。後の薫とのやりとりといい、本当に進めば進むほど磨かれていくので、まさに目が離せない子だったなと。
続くEXシリーズでの彼女たちの活躍を祈っている。