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asteryukariさんのD.C.II Dearest Marriage ~ダ・カーポII~ ディアレストマリッジの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
D.C.II Dearest Marriage ~ダ・カーポII~ ディアレストマリッジ
ブランド
CIRCUS
得点
87
参照数
310

一言コメント

かけがえのない仲間たちが紡ぐ、たくさんの思い出と経験が詰まった物語。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

馬鹿やって喧嘩して、恋をして…決して平和とは言えない騒がしくて楽しい彼らの学園生活にもとうとう終わりが来てしまったのだと、OPを見た瞬間にふと実感してしまった。

本作は義之たちが卒業するまでを描いた「Graduation Days」と音姫との結婚及び新婚生活を描いた「Married Life」、そして「Dear to......」の三つのお話が用意されている。

これまで本編とそれから10以上の話が収録されているFD達をやってきた身からすると三つというの少ないのではないかと。もっと言えばすぐ終わってしまうのではないかと危惧していたのだが、文章量はそれなりにあってしかもシナリオの質も良いからホッとした。そしてクリアした今は本当に幸せな気持ちで包まれている。

一気にバーッと語っても良いのだが本当にそれぞれの話に良い部分がいくつもある作品なので、話ごとに感想を述べていく。


『Graduation Days』 
自分たちの卒業式と、それから卒業パーティに向けて準備をしていくお話であり、あの楽しかった学園生活が終わるのだと思うと読んでいて感傷的な気分になった。しかしながら当事者である彼らはというと全く悲観的ではなくて、本当に卒業するのか疑問を抱いてしまう位には明るく楽しく学園生活を送っていた。最期だからしんみりではなく、最期まで楽しくやろうという彼らの気概が伝わってくるかのようで、こちらとしても嬉しい気持ちになる。

そうやって卒業の時を迎えたからこそ…こんな緩急の効いた攻撃を喰らったらダメージを追わないはずもなく、彼女達を見て私も涙ぐんでいた。一番強がっていた委員長がまさかの号泣してるのはずるい...。ただ、惜しい所もあって、卒業後は皆で打ち上げみたいな光景を望んでいた身としては友人たちの群れから脱し、音姫と過ごすことを選んだ義之を見て少し残念に思ってしまった。最期くらいあの三バカで過ごしてくれよと。そして、そんな身勝手な願いをこの作品は見事に叶えてくれた。

もうあのカラオケのシーンには喜びしか詰まっていなくて、私が望んだ以上の景色が広がっていた。またいつも通りバカみたいな勝負を持ち出してきたと思ったら…あんな幸せな罰ゲームは見たことがない。最強のバカ三人は、最高の仲間だった。


『Married Life』
渉や小恋たちは島を離れ、義之は仕事に勤しみと、音姫との結婚生活が本格的に始まる。まさにタイトルの如く話が進行していくわけだが、長期休みなると大学生となった渉たちが帰ってくるので、それほど寂しさはない。というか本当に頻繁に帰ってくるので笑ってしまった。

大学に行って、自由な時間が増えて友達もたくさんできて…けれどどこか物足りなさを感じる。やっぱりあの頃が良かったと呟く渉たちを見て笑顔が止まらなくなってしまった。そうそう、そういう小言が聞きたかったのだ。同室でバカ三人が語らうシーンなんかもしっかりと用意されていて、良いなぁと。

そして、ようやっと迎えた結婚式は…ああ、感動するってこういう感覚だったなぁと、その幸せすぎる光景の連続をただただ見つめていた。親友が幹事をやっているのも勿論最高だし、エリカやまゆきからの祝福の言葉も涙を誘う。けれどそれら以上に胸にきたのは、やはりさくらとのワンシーン。

「ありがとう。俺と音姉たちを引き会わせてくれて」
「ボクの方こそ…ありがとう」

さくらと義之の関係性を知っているからこそ、涙が出るし、彼らの人生を追ってきた立場だからこそ、くるものがある。あの泣きながら微笑むさくらさんの姿は一生忘れることがないだろう。


『Dear to......』
本作をプレイする前はてっきり結婚生活を描いて終わりだと思っていたので、本当に驚いたし、彼女たちの子供がⅢのあの娘だと気付いた時は鳥肌が立った。

新たに始まった家族の物語はまさに幸せそのものであり、義之と音姫は勿論、周りの桜姫に対する反応も実に良いものだった。そして、ここでもさくらさんが凄く良い。笑顔が印象的な彼女だが、本作では一番の泣き虫だったのではないだろうか。泣きながら笑っている彼女を見て私も泣いた。

そして、終盤になると正義の魔法使いの因果が如く、辛く悲しい展開が待ち受けている。まあ画面が滲んでいくような状態で読んでいたのだが、桜姫の強く逞しい姿が描かれていたりと、ただただ悲しい物語で終わっていない点が良かった。最後に迎える展開に関しては思うところもあるけれど、彼女たちの事が大好きなので嫌いとは言えない。Ⅱの終着点に相応しいものだったなと思う。



軽く振り返ってみるだけでも涙が出てくるような、本当にたくさんの幸せが詰まった作品だった。D.C.Ⅱという作品に関わった全ての登場人物たちにお礼を言いたいくらいだ。

本当にありがとう。