まさしく原石と呼ぶに相応しい、基本に忠実且つプレイヤーを楽しませる要素に富んだ一作だった。RPGの面白さを改めて体感できる。
姉妹作品と呼ばれる「イストワール」をはじめとし、数多くのフリーRPGに影響を与えたとされる本作。プレイしたことはなくても、名前を知っているユーザーは多いのではないのだろうか。私もその一人でいつかやってみたいと思っていた。
システムはRPGツクール2000で、ストーリー重視というよりはひたすらにダンジョン探索を楽しもうという感じの作品である。自由度が高いという噂は聞いていたが、いざプレイしてみると本当に自由で驚く。初手から絶対に後半に戦うであろうボスと戦うことが出来たり、逆に戦わずに走り抜けることが出来たり。ダンジョンはダンジョンで隠し扉があったり、予想外にへんてこなマップが存在したり。こんなに自由なんだと思わずにはいられないほどに至る所で選択肢があった。
ただ、ある程度進行すると攻略手順も決まってくるのでそこは惜しいが、それを差し引いても魅力が残った。
まず良かったのが戦闘である。システム自体は他のツクール作品と変わらないのだが、この作品は属性耐性や状態異常耐性にかなり重きを置いている。火や水といった属性は勿論の事、刺突か斬撃かなんかも本作ではかなり重要で、そこをどれだけ注視するかでボス攻略の難易度も大きく変動する。これが実に面白かった。
私が愛しているRPGたちも、まさにこの仕様を継承しており、ルーツが見えたような気がした。レベルを上げることで勝てるようになるのも悪くはないが、やはり敵に合わせて武器防具戦術を考え、それが見事に噛み合った時の爽快感に勝ることはない。それをわかっているんだと言わんばかりに本作は様々な種類の強敵を用意してくれた。
中でも私が苦戦したのは天界龍アドーナで、長きに渡る戦いの末に倒したときは思わず笑みが零れた。アドーナに限らずだが、後半のボスは初見で勝てないパターンが多い。しかしだからこそここまで楽しむことができたのだと思う。一回目で敵の攻撃の属性・耐性を見極め、二回目以降は練った策を試していく。そうやって試行錯誤して敵を倒していくのが非常に気持ちいい。
また、独特な世界観も本作の大きな魅力である。閉ざされた島という不思議な舞台で、魔神と協力しながら世界の謎を紐解いていく。そんな少し異質で少年心を擽る設定が私にもしっかりとハマった。物語が迎える結末及び世界の謎についても、実にこの時代らしいもので、じんわりと胸の奥底に沁みてくるような程よい余韻を残してくれた。イストワールや魔王物語物語が本作に影響を受けたのがよくわかる。
諸々クリア後に訪れることができるスタッフルームでも核となる事実は伏せられていて、それがまた本作を一層味わい深いものにしていたなと。全部明かしてしまうのも、それはそれでスッキリするかもしれないが、読んで咀嚼する楽しみというか、そういったものを大切にしてくれるのもまた嬉しい。
たしかに今プレイしてしまうとシステム面やシナリオで物足りなさはあるけれど、RPGの基本且つ注視してほしい要素にはしっかりと意識が届いており、本作の存在に感謝すら覚えた。良い作品というものはいつまで経っても良い。それを強く実感した。