ヴェンデッタ√はルシードの親友としての在り方、アスラの子としての生き方など見ごたえのあるシーンばかりでバトル物としての熱さだけでなく、人を想う気持ちの熱さも伝わってくる良い作品でした。
lightの燃えゲーということでドキドキしながら始めたわけですが、もう開幕からワクワクが止まりませんでした。顔に傷があり七つの刀を装備してるキャラとかカッコよくないわけがないんですよね。ヴァルゼライドを物語の中で非常に重要なキャラだと印象付けさせるのが上手かったです。また、他のキャラもモブだと思っていたキャラが実はめちゃめちゃ強かったり、ルートによって敵味方関係が変化したりしたので、最後までワクワク感を保ったままプレイすることが出来ました。
ルートごとに感想を述べていきますと、まずはミリィ√について。この√は物語の始めから終わりまで一貫して家族物語でしたね。本当の兄妹ではなくてもその和気あいあいとした生活は本物でした。それ故にゼファーがミリィの両親に手をかけたことが発覚した時は私自身、同情で育て上げたのかなと勘繰ってしまったのですが、ミリィはそれでも五年という長い時間自分を育て上げてくれたことに感謝しつつ、本人の口から本人の意思を聞きたいと言っていました。優しく、そして強い女の子ですね。一悶着あってからこれまでは義理の関係だった二人がようやく本当の家族になっていく様子はとても美しかったです。この√は全体としてみれば序章であり、物語の核となるヴァルゼライド閣下等の戦闘描写はそれほど多くないのですが、次々に正体を明かしていく魔星達には今後の物語の期待値を膨らませる役として十分な働きをしてくれたと思います。そして後半いきなり魔星として出てきたにもかかわらず、ルシードvsゼファーとアスラvsジンの戦いが良かったですね。前者は親友、臆病者同士の戦いとして、きっかけこそルシードの狂乱というふっかけられたような形でしたが、今までの日常では見られなかったお互いの本音をぶちまけて戦う姿は見ていて気持ちが良かったですね。また、後者は疑似とはいえ親子対決であり、勝利したのに笑いながらなぜか涙を流すアスラと、負けたが今まで恐らくは歯がゆくて言えなかった“最高傑作”と伝え死にゆくジンには涙を誘われました。しかもこの“最高傑作”という言葉、これで“ばかむすこ”と読むんですよね、熱すぎる...。
次にチトセ√について、この人は強気な武人かと思いきや、ゼファーのことを忘れられず好き好きな女の人なんですよね。容姿も好きなんですが、肩肘張って生きているように見えて実は乙女な部分がたくさん見られる、そんな女性が好きなのでプレイしていて飽きませんでした。この√でヴァルゼライドの本当の目的とは何かが見えて来て話も盛り上がっていき、計画を止めるにはあの英雄、ヴァルゼライドを倒すしかなくなるのですが、この戦闘がまた熱いんですよね。ヴェンデッタ√の戦闘が凄いため終わった後にふと忘れがちですが、この戦闘も同じくらい良いです。今まで任務のため、帝国のために戦ってきたチトセが自分の気持ちに正直になり、ゼファーと共に生きるためにヴァルゼライドの前に立ちはだかる。それは私情でありながらも全てのものは突き詰めれば私情が関係するんですよね。対してヴァルゼライドはヴァルゼライドでかっこよく、「邪悪を滅ぼす悪の光、“悪の敵”になりたい」と言う。ここまで意思が強い人間はもはや化物。また、この戦闘を評価している大きなポイントとして勝ち方が非常にかっこいいんですよね、喉元噛みちぎって勝つ。その姿はヴェンデッタの吟遊詩人としてではなく、チトセの、女神を守るための銀狼として姿。こういうの大好きです。そんな燃える場面のほかにもチトセの元に「友達として、家族として」とゼファーを笑顔で送り出したヴェンデッタにも心を打たれ、最終√では絶対守ってやるからな、という気持ちになりました。
最後にヴェンデッタ√について、後半のバトルはどれも熱すぎて止まらなくなりました。そしてヴァルゼライドはやはり化物。まずは他の√では決して協力しなかったアスラとジンがヴァルゼライドに親子として挑むシーンは鳥肌もの。ヴァルゼライドと戦ってるように見えて実はヴァルゼライドを通してする初めての親と息子の対話しているようでした。これまで魔星として、造られた存在として己の存在意義の不足に苦しめられ、どれだけ戦いを繰り返しても埋まることのなかった胸に空いた風穴を気にして生きてきたアスラが、そんなのどうでもよくなるくらい楽しいことを見つける。それはまるで親に初めてかまってもらえて喜ぶ子供の様で、説教ではなく親子談義のような温かさを感じました。結局二人はヴァルゼライドに勝てず、お互いの望んだ夢である“作品の完成”には至れないのですが、二人にとってそのようなことはもはや重要ではないのです。この戦いを通じて結果以上に大事なものを掴めたんですから。最後もヴァルゼライドはそっちのけで目線で会話してますし。ジンが勝ち誇ったように消えていく姿は頑固な父親のそれで、それを見てやれやれと呆れると同時に安堵するアスラはさしずめ改心した悪餓鬼といったところ。そのやりとりは紛れもない親子でした。
また、恐らくこの作品の中で一番好きなシーンとして挙げるとしたら、ルシードvsヴァルゼライドですね。もうルシードが良い奴すぎて泣けます。ミリィ√ではヴェンデッタのために親友と戦っていた彼が、愛する二人のために戦う。未練はちょっぴりあるけど嫉妬はなく、愛情と友情を渡さないがために、二人の笑顔を取り戻すために戦っている姿を見て、泣きながらプレイしていました。喉の奥をキュっと締めつけられながら、それでもマウスを進める手が止まらない、そんな感覚でした。人を本当の意味で愛したことがないヴァルゼライドに対して、「そんなことも出来ないくせに、“他人のために生きてます”とか訳分からないことを何故言えるんだ」という問いは実に的を得たものでしたし、その後、最後の力を振り絞って勝つことではなく二人の逆襲へ誘う“案内人”としての選択をし、ゼファーにヴェンデッタを託し満足気に消えていくのも良かったです。彼は案内人として散っていきましたが、その姿は誰が見ても親友だったと思います。
ラストはDiesを彷彿とさせる一騎打ちという名目の総力戦でしたが、ここは正直、先の二戦が熱かったため冷めました。あれだけ孤軍奮闘していたヴァルゼライドが融合を選んだのには不満がありましたし、綺麗に退場したキャラをまた使うのはあまり好きではありませんでした。これはDiesもそうなのですが...。
総評すると熱い場面も十分あり、泣ける場面もある良い作品でした。ただ、主題歌が合ってなかったかなと思います。普通にOPで流れるだけならよかったのですが、熱い戦闘シーンであまり盛り上がらない主題歌を流されてもですね、それまで流していたBGMのままにしてほしい。そんな場面が多々ありました。また登場キャラは違えど、続編があるのでそちらもプレイしたいですね。ただ、思ったよりシルヴァリオ ヴェンデッタという作品のキャラに魅了されてしまったので、まだこの作品に浸っていたいというのが正直な感想です。それぞれのキャラが個々に自分の意志をもって戦っているのがとても好みでしたし、主人公自身もルートによって妹、相棒、姉と異なった関係に愛を注ぎ、そのどれもが最終的には皆“彼女”という関係に変わっていくのが良くできていたと思います。