共通√の掛け合いが面白く、個別も中々良かった。ただ、個別の題材は良かったのに尺が短すぎて、あっさり過ぎるように感じた。
残念な青春事情というタイトルの通り性格、境遇が残念なキャラが多く存在するのですが恐らく一番残念なのは“俺”に当たる主人公ですかね。優柔不断で流されやすく、そのくせ変な時だけ真面目になる。主人公に振り回されるヒロイン達が可哀想でした。それは個別√にも影響していて燐音√と咲耶√は主人公がいざこざの原因と言っていい。ただ、話の展開としては悪くはなかったので残念な主人公には変わりないが、嫌いとまではいかなかったです。
ルートごとに見ていくとまず共通√の掛け合いが良かったですね。かつての友人との間で起きたことをトラウマに人と仲良くなることを恐れていた燐音が、非公式生徒会に興味を持ち自ら仲間に入れてもらうように頼むことや変人たちがする行動にツッコミを入れる燐音。とにかく燐音のキャラと声優さんがハマっていました。多少のくどさはありましたが、それでも毎回会話を見るのが楽しかったです。燐音以外にもいじられ役、ボケ役になることが多い咲耶。マスコットキャラクターとして場を和ませるちまち。知識豊富なおっとり系先輩である棗。筋肉バカ担当の慶次。常識人であるがノリがいい道太郎という誰一人キャラが被っていないほど個性的なメンバー(燐音は変人の集まりだと言っていた)でグループとしても個々のキャラのつながりを見てもいい関係でした。特に親友ポジションである二人は何かと主人公を気遣う場面が多く、共通√が終わり各個別√に分岐する際に主人公の交際の成功を願って二人はその場を後にしたりするなど親友としての良さが出ていました。
個別ごとの感想を述べますと、まずは燐音√について。この√は主人公の駄目っぷりが目立ってました。恋人の練習として半ば流れに身を任せたように燐音とキスをしたりしていたのに、急に我に返ったようにこんなことをしては駄目だと言う。いや遅いよ...今更何言ってるんだ。また、燐音も燐音で咲耶が主人公のことを好きなことに気付き、関係を壊したくないがため遠慮する。もう十分、非公式生徒会のメンバーを巻き込んで壊しかけていることに気付いていないんですよね。周りを見ているようで周りが見えていない。コミュ障らしいといえばそうなのですが、プレイ当初から割と気に入ってたキャラだったので少し冷めてしまいました。逆にこの√では咲耶が光っていたと思います。自分の思いの丈をまっすぐ燐音にぶつけており、勿論私情も大いに含まれていましたが正しいことばかりで主人公と燐音の両方に怒りをぶつけていたのが筋が通っていて良かったと思います。ただ、どの√もそうなのですが、あっさりと解決しすぎな印象を受けました。
次に咲耶√に関して、このルートも燐音√以上に主人公がクソでした。四年間という長い時間を咲耶がどんな思いで過ごしてきたか、いくら鈍感だからと言っても限度があります。それに加え変なプライドから咲耶がラブレターを貰ったと知っても自分はモヤモヤしているにもかかわらず、関係ないと突き放してしまうなんてそりゃあ親友も見過ごせませんよ。ましてや咲耶が主人公のこと想っていた時間と同じくらい咲耶を想っていた慶次なんて。慶次が私の言いたいことを代わりに代弁してくれていたのでスカッとしましたね。また、咲耶が長い間主人公のことが好きだったということを強調するためにも、過去の出来事などを回想程度でいいので入れて欲しかったです。そうなると咲耶以外のキャラにも過去の話を組み込む必要が出てくるので難しいことはわかりますが、それでもやはり必要だったと思います。
続いて棗√。この話は特に可もなく不可もなくという感じで、先輩という立ち位置から他のメンバーより一足早く卒業してしまうのでそれを題材に組み込むのは、まあそうなるよなぁと。ただ、この話では主人公の存在が棗にとってどれだけ大きかったが語られており、それまで優等生だった彼女を屋上に連れ出し仲間に加えるというエピソードは、軽い思い出話の様で棗にとっては一生忘れられない出来事だったんだろうなという彼女の感謝の気持ちが伝わってきました。
最後にちまち√についてですが、共通√であれだけ癒し系マスコットとしてキャラを立てていた彼女が実は一番重い過去、状況にあるということにただ、唖然とするばかりでした。しかしながらこれは急な無駄シリアスではなく、守銭奴という設定を考えればあり得る展開だったので、まだ投げずに進めようと思うことが出来ました。しかし両親から電話がかかってきた時に主人公とちまちが揉めるシーンがあるのですが、そこで仲直り後すぐ性行為を始めたところで思わずため息が出ました。自分達が今どういう状況にあるか、せめて問題が解決してからにしような。そう思いましたね。まあ解決もこれまたあっさりで電話をかけてきた時は聞く耳持たずのような様子であった両親が会ってみると物分かりが良すぎて思わず吹きましたね。いや、それでええんか...。エッチシーンとイチャイチャに分量を割いた結果、話の本筋である部分が浅くなってしまったように感じました。
エピローグではタイトル画面の回収及び非公式生徒会が受け継がれている様子が描かれていて良かったのですが、果たして受け継ぐ必要はあったのか、自分達の作った自分達だけのグループという形に収めた方がいいのではないかと思いましたがまあいいでしょう。
全体としていえることはやはり個別√が荒かったかなと思います。話の核となる部分は良かったのですが、あっさり解決しすぎている。また、匠√に関してはあってないようなものだったので省きましたが、匠の視点で見た時の非公式生徒会について考えた時に、いくら学園祭を盛り上げるために行動しているのであっても、他の生徒から見れば余計なことをして問題を起こしている陽キャ集団にしか見えないなと思いました。私自身は彼ら達の視点でプレイしていたので気にならなかったのですが、そういった視点で見ると全然楽しめなそうだなと感じましたね。エロゲ―をこれまでプレイしてきた人ならそんなこと気にならないとは思いますが。