長かった彼らとの旅もこれが最後。その事実が今はとても悲しい。本当に最後まで目一杯楽しませてくれた。ここまで連れてきてくれた彼らに感謝。
さてさてやってきた最終章、長きにわたるこのシリーズもとうとう終わりかと、本当に「START」を押す手が震えた。
ステラの一件でプリマヴェーラ共々多大なダメージを負った私。あれだけの悲しみを背負ったのだ、これからどんな希望や明るい未来が待っているのかなと期待に満ち溢れていた。まあ、待ち受けていたのは更なる絶望の、それも連鎖であったわけだが…。Season3えぐすぎる…。
ステラがその身を挺して守った祐司くん。一命を取り留め、プリンをねだる姿にどれだけの人が救われただろうか、そんな希望に満ち溢れた世界を見せておきながら一気に叩き落す。にしてもあれはやり過ぎだろうと、怒りなど通り越して呆然とした。開いた口がふさがらないとはまさにあの時の状況を言うのだろう、殺す必要はあったのかと、思わず作品に向かって問いたくなったほど。
しかしながらリチャードを修羅にさせるため、中国との間で軋轢を生ませるために必要であったものだとすぐに気付く。ガブリエルとはなんて下衆で最低な男なのだろうか、結局彼のことは最後まで好きになれなかったし、好きになるはずもない。そういったキャラクターではないのだから。
そうして悶々としている私をあざ笑うかのようにこの作品は更なる絶望を押し付けてくるのだった…。
アランの活躍で回避したのだからと慢心していたのがいけなかった。この作品が、ガブリエルがそんな生温いわけがない。あんなに純粋に優しくて、何も悪いことをしていない彼女がなぜあんなことに。直前に兄である梅九さんとも和解して、アランともくっついて、もう明るい未来がすぐそこまできているはずだったのに…。
薬指を撃ち抜くシーンでもう駄目だったし、それを見て普段の冷静さを欠き、嘆く梅九さんを見てもう怒りと悲しみの涙でいっぱいだった。「はッ、離せぇえええぇ!!梅雪ぇええぇッ、今行くぞぉおおおッ、ぅおおぉおおおおおッ!!」あんなの泣かないわけがないのだ。
そう、もうここでキースには怒りしか残らなくなってしまった。たしかに彼のステラを想う気持ちや、度々出てくる回想にはついつい涙を流してしまうが、あれだけはだめだ。それくらい彼の罪は重い。できれば梅九さんに八つ裂きにされて欲しかったのだが、それは梅雪の望んだことではない。それを何よりも遵守し、冷静でいることに努めた梅九さんがまたかっこいい…。この後の活躍もあり、梅九さんはシリーズの中でも一二を争うくらい好きなキャラクターだ。
また、そんな彼が認めたアランも同様に素晴らしい。Season3からのポッと出くらいに考えていたかつての私を思いっきりぶん殴ってやりたい。彼の真っすぐさには何度も胸を震わせられた。さすがプリマヴェーラの一員だ。
そんなこんなで辛くて苦しいSeason3も幕を閉じ、ついにLast Seasonがやってくる。リチャードの指揮下でプリマヴェーラはかつてのケイレブと同じか、それより酷い状況に。夜の女を守るなど欠片もない悪の組織になり果てていくのが辛い。ここでジャンヌが登場するわけで、ようやく現代に繋がってくる。
そして忘れてはいけないのがレオ・獅子神の帰還だろう。やっぱり彼がいると安心する。そして最後までカッコいい男だった。特にローズ奪還作戦の時のキースとの一戦。あれは胸が躍った。キースのことがあまり好きではなかったのもあり、よくやってくれたよと、いやぁ実にスカッとした。にしても相変わらず無茶苦茶な強さだった。なんだよ、パラソルに空いた穴って..。.
やはりレオは終始かっこよかったし、ワンダリングドッグも良い働きをしていた。ツェンが好きなので彼女の活躍の場が随所で見ることが出来たのも嬉しい。彼女は本当に強くて逞しい女の娘だ。今まで軽く流され気味であったオリバーの死も、彼女を通してより重いものだと実感できた。そりゃあハメたやつは許せないよなぁ…。
また、復讐の連鎖を止めるべく動き出した中国サイドもたまらない。梅九とアラン、そして小蘭の三人がもう好きで好きで仕方ない。というか小蘭ちゃんが有能すぎる。いつも足りないピースを埋めてくれるような存在で、作中における陰の功労者は彼女なのではと思うほど。でも彼女は称賛されるより月餅を貰った方が何倍も嬉しいだろうなぁ。月餅を巡る彼女とアランのやり取りが大好きだ。梅九も言っていたが、仲が良くなると言語の壁って超えられるのだ。日本人と中国人はわかり合えない。そんなことを言っていた頃が懐かしい。「見ているかい、梅雪ちゃん」と、感傷に浸ってしまった。
そして全員集合の最終決戦は勿論熱かった。仲間を集めるくだりもかなり好きで、かつての宿敵たちを味方につけて段取りを決める光景がとても新鮮だった。まあその相手というのがプリマヴェーラというのが何とも皮肉なのだが。
まず対戦カードが素晴らしい。アランとキース、レオとサイラスは予想できたが、アルフレッドとミゲルは予想外だった。
そういえば彼らは一作目でナイフ使いとして恐れられていた二人だったなと、ここにきてその二人を初めてぶつけさせてみるというのが面白い。まあ面白いのは戦いというよりも掛け合いで、そこにテキーラまで混ざってきて本当に殺し合いをしているのかと、笑いながら眺めていた。
また、ワンダリングドッグの決着をつけてくれたのも個人的にかなり嬉しくて、最後はオリバーの蹴りを模倣して、四人で勝つ。嬉し涙が零れてしまったよ。
アランとキース戦はまさかあんな結末を迎えるとは。最後まで優しくてかっこいい男だった。どうか向こうの世界で梅雪となかよくやってほしい。梅雪はきっとひとしきり罵声を浴びせた後に、お疲れさまなんて言うんじゃないかな。ああ、本当に中国陣営が好きだ。
そしてレオとサイラス戦。敵でありながらサイラスのリチャードに対する想いが熱かった。最後までリチャードの親友として側に居続けた。彼は途中で愚かなことをしていることに気付いた、あるいは最初からそうだったのかもしれないが、そんなことは重要ではない、理屈ではないのだ。リチャードを支え、共に戦い続ける。彼にとってはそれこそが何よりも大切なものだったのだから。
やがて全ての戦いが終わり、残ったのはガブリエル。彼がどんな結末を迎えるのか、それが何よりも見たかった最期なのかもしれない。呆気ない最期だったが彼に相応しい。オリバーも彼に苦しめられていた一人だったのだ。にしてもアンジェが殺されていたとは。まあ伏線はあった。内から~とはそういうことだったのか、梅九さんえげつない…。
全ての過去が伝えられ、ローズが隠居していたことや、レオと結婚していることがわかったり。あのシーンには救われた。しっかりと日本名だったあたり完璧な隠居生活を送れていたようで何よりだ。
本当に読みごたえのある作品だった。集中して読んでいたのもあり、読了後は一気に寂寥感の波が押し寄せてきた。待ってくれ、まだこの作品を読んでいたいし、彼らと一緒にいたい。こんなにも毎話毎話楽しんで読んでいた作品も少ないだろう。喜びのあまり笑みが零れてしまう。
この作品に出会えた事を誇りに思う。ありがとう…!