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asteryukariさんのローズガンズデイズ シーズン​3の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
ローズガンズデイズ シーズン​3
ブランド
07th Expansion
得点
86
参照数
70

一言コメント

これまでキャラクターにばかり目がいっていたのだが、本作は話に夢中になっていた。読んでいて純粋に面白いのだ。時代背景を上手く生かしたお話の数々を堪能させてもらった。そして涙も...。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

明らかになったツェルの正体と徐々に化けの皮が剥がれ始める王。そして物語はさらなる展開へ…。今までも十分面白かったのだが本作は桁が違った。プレイしていてここまで震える作品をやったのは何作ぶりくらいだろうか、胸が苦しくなるほどドキドキしたし、過呼吸に成るほど嗚咽を漏らしながら泣いた。冗談ではなく本当にプレイ後はしばらく立ち上がることができなかった。それほどまで深く深くまでこの作品にのめり込んでしまったのだ。

そしてここにきて改めてこのシリーズの凄さを理解した。ああ、こんなにやばいんだ。こんなのを前にして冷静に立ち振る舞うなんて到底無理だ…と。

本作はとにかくお話が面白い。勿論、今までも相当面白かったのだが、本作は今まで以上に物語を時代背景や周りの情勢と絡めることで、より深みのある話に仕上がっていた。まあ深みがあるなんて言うとアレなのだが、私は自分でも驚くくらい夢中で読み進めてしまった。

醤油戦争の話はなかなか興味深くて、これは現代でも生き続けている課題だなぁと物思いにふけってしまうこともしばしば。文化を取るかお金を取るか、私だったらどうするか、きっと彼らのように哀れな日本人の一人になってしまうんだろうなぁ...。

だからこそクロ―ディアの悲痛な叫びはとても突き刺さった。
「私が真心を込めて作った丼の脇に、1$で食べられるブタの餌があったら、百人が百人それを選ぶ!!それが今の日本人なんですのッ!!」
「味がわかりそうな偉そうなことを言ってるくせに、見ているのは値段だけッ!!」

こんな現実を間に当たりにしたローズ及びプリマヴェーラの選択がこれまた素晴らしいのだ。このまま中国に服従してしまえばそりゃあ自分達は楽かもしれない。だが、子供たちは、何の咎もなく、永遠に服従し続ければらない。いわば権利の剥奪なのだ。それではローズの理想も、リチャードが目指す未来もやってはこない。だからこそ“今”より、“未来”の同胞を選んだのだと。流石にシビれたよ…前作、前々作と変わらず彼らの「強さ」がこの作品には描かれていた。

加えてその選択には中国陣営では到底考えられないものだというのも良い。あれほど老人とのコネクトが太い国だ。ここにきてそれを逆手に取ってくるなんてな、気持ちが良いの一言だ。

またこの戦争においてワンダリングドッグの絆についても描かれていて、やはりどうしても前作、前々作ほどの熱さ、かっこよさはないけれど、胸に染みるシーンがあったのも事実だ。特にツェルの正体が分かった時の三人の反応、これがとても以外で故に印象的だった。オリバーがあんなに情に熱いとは。いや、彼の性格からしてああいった反応を見せるのは予想できたのだが、他のメンバーが黙り込み、彼だけがあんなにも必死になるとは思わなかった。
「お、お前らがそんなに薄情だとは思わなかったッ!!」
まさに魂の叫びだ。このシーンを見て彼のことがかなり好きになった。

この四人は散り方も綺麗で、切ないのにどこか希望に満ち溢れていた。始めは物足りなさを感じていた三人、いや四人だったが、いつの間にか作品にとっても私にとっても欠かせない存在になっていたのだなと、彼らの成長っぷりに笑みすら零れた。


そして始まる次の物語。たった3話しかないのにこれでもかというくらい色々なモノを詰め込んできた。そしてそれは決して混在せずに一つ一つが確実なダメージを与えてくる。初めにも言った通り、本当に過呼吸になるくらい涙を流した。

また視点が変わり、今度はアランという人物視点の話が増える。ひょうきんだけど腕っ節には自信があって、活躍の場も多い。うん、彼を連想させるカッコいい系の主人公だ。すんなり彼を受け入れることができたし、相棒のキースの役柄も嫌いではなかった。

好きなシーンはいくつもあるが、やっぱりアルフレッドだ。彼が出てきた時はまあ笑ってしまった。しかも会話の内容がまた…。一作目が好きな人であればたまらないだろう、そう、誰も彼も「レオ・獅子神」という存在を忘れられないのだ。無論私も。

思えば後半は視点こそ違えど、プリマヴェーラの初期メンバーの懐かしさと成長に重きを置かれた話が描かれていた。そしてこれを語る上で最も欠かせないキャラクターがステラになるわけだ。ここからは文章もついつい感傷的になってしまいそうだ…。ガブリエルころせ。





ローズが倒れて初めて自分の役割に気付いた彼女。彼女の補佐を務めるようになってからの彼女は今まで生活とは一転していた。かつて、美術品のように丹念に手入れをしていた自慢の長い髪は、いつの間にか痛み、砂埃で汚れていた。しかし、その微笑みは、夜の女であった時に見せたどんな笑顔より輝いていたのだ。

また、祐司の面倒を見るようになってから彼女の結婚観も変わり、今までは高身長金持ちイケメンを求めていたが、今は家族を大切にする人じゃないとダメ、それが何よりも重要だと言いうようになっていた。あの彼女がこんな母親のようになっていくのなんて…反則だ。

そうしてこれからキースと温かい家庭を育んでいくのだと、そう思っていたし期待もしていた。ああ、こいつならステラを任せられる、頼んだぞと。

だからまあ…きつかったね。あれはきつい。こんな急に涙って出るものなのかと、笑っちゃうくらい泣いたね。加えてメリルやサイラス、そしてリチャードを見て再度、涙を流した。ずっと喉の奥が締め付けられているような、そんな苦しみを味わった。でもそうやって悲観しているのは私だけで、目の前の皆はちゃんと彼女が守ろうとした、背負おうとしたものの事を考えている。それを知って、再再度、涙を流した。

こんなにも絶望的な状況下に置かれていても、彼らはこれまで感じた「かっこよさ」や「逞しさ」を持っていて、本当にこの彼らは凄いなと、感服した。次に待ち受けている物語は正真正銘の最後、「ラストシーズン」だ。彼らがどんな結末を迎え、どんな未来に繋げたのか、それが明らかになる。読み切れるだろうか。