心理学的要素を取り入れながらも、話はもっと単純で純粋な想いから成るもの。彼女がようやく手に入れたモノ、それが少しでも続いていったらいいなと思う。
強盗と言うのだから、てっきりもっと悪に染まった人物が主人公なのかなと思っていたが、普通に良い青年でホッとした。まあ強盗に入ったのは間違いないので、「良い」と言うと語弊があるが。
そんな主人公が娼婦であるところのトラ子と出会い、自身の問題と向き合っていくお話なのだが、MVPはやはりトラ子さんだろうなと。勿論、自分のため、トラ子のため、愛する妹たちのために腹を決め行動する主人公なんかはかっこいいのだが、それに勝るのがトラ子さん。
一つの出来事で周りの環境が一気に変わる。これは良いことも悪いことも同じであるが、今回は後者だった。全てを失い、何もする気がなくなった彼女。それもデリヘルの勧誘も断る気力がないほどに。トラ子の台詞の多くに「…」が使われていて、やっと本音で話しているのだなということが理解できた。そして彼女の悲しみというか、やるせなさなんかも。
心を開き始めてからの彼女は、それはもう弱弱しく、それが本当の彼女であることもわかった。気丈に振る舞っていた女の子が弱みを見せ始める、こういうのにどうも弱いみたいだ。これからも一緒にいると約束してほしい、愛していると言ってほしい。そう求める彼女はまるでガラス細工のようであった。
事が片付いてからは、どちらの結末にしろ妹二人も抱え込むことになるのだが、これも良かった。主人公が大切にしている家族だからか、弟を思い出してか、あるいはそのどちらもか。何にせよ彼女の人柄の良さが伝わってきた。何もかも彼女に引きずられる、本当にヒモみたいになってしまったわけだが、それもまあいいだろう。
そういえばタイトル画面もクリアしてから見てみると良くできている。ペットで彼氏で大切な人で。やっと掴んだ幸せだ、彼女含めあの四人に少しでも長く幸せが続くことを願う。
ちなみに例の勝負は勝った。嘘つきババアめ
おまけも本当おまけなのかと思う程ボリュームがあり、お母さんに関する出来事が読めたのは収穫だった。