ただ敵を倒すのではなく、戦いの中で何を思うのか。決して明るい内容とは言えないが読み応えのある素晴らしい作品であった。
タイトルの如く登場人物たちが少女達(少年も少数ながら存在する)が魔法戦士となって地球を侵略する未知なる生物たちと戦うお話。不思議な生き物に力を与えられるという所まではまあよく見るタイプだったが脊髄に注射し、しかもその際は激痛が走るという妙に現実的。注射されてから叫ぶ流れが定番と化していて少し笑ってしまった。
さて、本作のやってみての感想だが、まずはゲーム性について。もはや見慣れた光景ではあるが、相変わらずゲームには戦略性があり、ユーザーを飽きさせない確かな面白さを秘めていたなと。
慣れてきたのか今作の場合はあまり苦戦する場面がなく、詰まるという事はほとんどなかった(最終戦のマルチノイドΩはあまりの硬さにやや焦ったが…)。しかしながら余裕でとんとこ進められたわけでもないので、やはりその辺の戦闘バランス調整はしっかりしていたなと。終盤こそ千代子が強くなりすぎて笑ってしまったが、あれぐらいやってくれた方が私としては嬉しかった。ちまちま殴る戦いが最後まで続くよりはよっぽどいい。
またキャラクターの動きにバリエーションがあるのは勿論、キャラクターの技、ステータスがそのままキャラクターの性格、生き方を反映している点が素敵だったなと思う。防御面は脆いが耐久力はあって、反撃の際にはとてつもない力で対抗する。千代子なんかは非常にわかりやすかった。
といった感じで操作性の悪さを除くと快適にプレイできたかなと。終盤は仲間キャラクターが増えすぎて一ターンが数十分かかったりすることもザラだったが、それを含めても楽しい時間だったなと今は感じる。「楽しかった」と感じたのは勿論、ゲームシステムにハマったからだけではない。お話の方も凄く出来が良かったからだ。
主な内容としては冒頭に述べた通りだが、ただ魔法少女として戦い勝って終わりな作品ではない。戦いの中で得るものだけでなく、失うものまできちんと描かれており、時にそれらはキャラクター達へ大きな影響を及ぼすこともある。端的に言ってしまえば決して明るいとは言えない作品だったが、それがあったからこそ、ここまでハマることが出来たのだと思う。
本作の主人公、霧島千代子は学力も低ければ運動神経が良いわけでもなく、おまけに自分の心に潔癖さを求めているタイプのキャラクターという事で、周りからは疎外されていた。そんな彼女が魔法少女となり、様々な苦悩を背負って、それでも前を向いて歩いていくというのが本作の最大の見所だ。
そんな彼女にとっての大きな山場であり、私自身、プレイしていて初めに衝撃を受けたのが遥が命を落とす場面。序盤に八千代さんが亡くなった事についてもまあ驚いたが、「え…」と声を出してしばらく固まってしまったのは遥の時だった。
遥は主人公の古くからの幼馴染で親友ともいえる存在で、しかも中盤辺りではもはや姉妹と言っても良いであろうやりとりをいくつも見せてくれた。その彼女が途中で退場だなんて、そんなわけがないだろうと、祈るような気持ちでしばらく見守っていたが、亡くなったキャラクターとして物語は再び動き出した。
当然、千代子は正気でいられるはずもなく、いつもなら私も愚図ってないで立ち直れよなどと思うのだろうが、本作においてはあまりにも千代子に同調しすぎてそんな考えすら生まれなかった。親を失ったすぐ後に唯一にして無二の親友を失うだなんて、そんなの辛いなんて言葉では到底言い表せないだろう。
でも彼女は立ち上がってくるわけだ。正直、中盤辺りまでは彼女より主人公が似合うキャラクター(琴音とか)がいるのではないだろうかと思う瞬間もあったが、振り返ってみると彼女以上に主人公に相応しい魔法少女はいなかったなと。ブラックホールのように皆を巻き込み、導いてくれるだなんて芸当は彼女にしかできない。
そんなまさに主人公たる姿を見せてくれた千代子はやはり魅力的で、本当に良いキャラクターを起用してきたなと。彼女の有志を追うことが出来ただけでも本作をプレイした価値があったと思う。かなり高感度の高いキャラクターだった。
しかしながら、だからといって千代子が最も魅力的だったかというと、そうではない。他者を巻き込むことが出来ず、ただ一人歩き続けた少女、「矢島唯」。彼女こそが私の最も好きなキャラクターだ。
勉強、運動共に優秀で、正義感も強い。まさに主人公に相応しい器であった彼女だが、物語が進行するにつれて徐々に過激な行動をとるようになる。やがて主人公たちの輪から抜け、己の矜持の下一人で行動することになる。
そんな一匹狼の彼女がなぜ、いつもピンチの時になると現れてくれたのか。また、なぜあれほどまでに憎んでいたテロメアを助けようと尽力したのか。その全てを理解した時に彼女の事が頭から離れなくなった。
自身のアジトで八千代を慰める際に発した台詞にも上記の想いは込められていて、あとになってそのシーンを読み返した時は涙が出てしまった。本当にただ愛されたかった、自分の居場所がほしかっただけなんだなぁと。どれだけ努力しても手に入らないものを千代子は全部持っている。その事実が彼女にとってどれほど残酷であったか。それを踏まえて再度38話を読み返すと涙が止まらなくなる。
思い返してみると本当に素敵なキャラクターの揃った作品だったなぁと。物語の締め方も良く、読後はとてつもない満足感と寂寥感を得ることが出来た。
本当にこの作品をプレイしてよかった。