ErogameScape -エロゲー批評空間-

asteryukariさんのせんすいぶ!の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
せんすいぶ!
ブランド
Escu:de
得点
79
参照数
193

一言コメント

チームスポーツの熱さと温かさが詰まった良作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ブランドの特色を見ても、パッケージを見ても十中八九はHシーンがメインの作品だろうなと、そう思っていたのだが…プレイしてみると全くの見当違いだった。確かに水着の女の子達は可愛いし、精液を連想させるような粘ついた液体を身に纏ったりすることも多々あるので、えっちなのは間違いない。けれど、本作をプレイした者でそちらにばかり目が良くユーザーが少ないかと思う。それほどまでにこの作品はきちんとスポーツしていた。


タイトルにもある通り、作品独自の水上スポーツ「戦水」が本作の大きなキーとなっており、戦水部員であるヒロイン達が戦水経験のある主人公のサポートの下、戦水の高みを目指していく。初めて戦水という競技を目にした時の感想は「ああ、エロゲらしいな」だった。先にも述べた通り、要はぶっかけあいなのでこれが面白くなることなど到底予想できなかったのだ。


しかし、物語が進行するにつれて段々と彼女達の熱に感化されていく事となる。スポーツ自体に魅力は感じないが、何かに向かって真剣に取り組んでいる彼女達に惹かれたのだ。しかも個人スポーツではなく、チームスポーツなので話が進む度にヒロイン達の絆も深まっていく。そんな光景を見て面白くないわけがない。いつの間にか「ふざけたスポーツ」と思う自分に恥じるようになっていた。


チームメンバーが集まり、彼女達の具体的な目標「全国戦水大会優勝」への歩みが始まると、そこからはもう止まらない。戦水にかける彼女達の情熱に当てられ、彼女達が一つ勝負を掴む度にこちらまで嬉しくなる。また、練習以外でも日々一緒にいることから、日常風景にも温かさが生まれいく事となる。これがとても良くて、主人公とヒロインの関係だけでなく、ヒロインとヒロインの関係に焦点を当ててくれたのが実に私好みだった。チームスポーツという題材の扱い方をよく理解している。


そんな仲間の輪が大きな魅力の作品なので、好きなキャラクターも自ずとヒロイン達の誰かになるかなと思っていたのだが…私が好きになったのはまた別の魅力を秘めた少女だった。至高にして孤高の女王、彼女こそが私にとってのナンバーワンだったのだ。


チームプレーを必要とせず、単騎で次々に勝利を収めていく。そのバトルスタイルだけでも中々惹かれるものがあったのだが、みとルートで更にもう一段階化けてくれた。


彼女がなぜ最強に拘るのか、どうして浮舟陸の名に執着するのか。その全てを皐が吐露した瞬間、もう彼女しか見えなくなってしまった。主人公に直接ぶつけるのではなく、みとに対してというのがまた素晴らしくて、本当にこの作品は私のみたいやりとりばかりを見せてくれるなと。普段は弱気なみとがそこだけは一切譲ろうとしないのが素敵だ。


そんなわけでルートもみと√が一番良かったなと思う。皐好きとしては辛い部分もあるが、辛いからこそ嬉しいというか、物語を通じて一層皐の事を好きになれたと今は思う。本当に素敵な女の子と巡り会わせてくれた事に感謝の言葉しかない。


といった感じで概ね満足のいく内容だったが、他の個別√がやや微妙だったのと、それからゲーム性についても考えると手放しには褒められないかなと。特に後者のゲーム性に関してはつまらなくはないにしても、何度もやるものでもない。もっと言ってしまえば物語の熱を冷ましてしまう場面もあったので…。ただ、勝利する喜びを共有できるという点では意味があったため、やはりもう少し上手く作ってほしかったなぁと。


何はともあれ想像以上に収穫の多い作品であったことは間違いない。スポーツ系で且つ夢中になれる作品は少ないので、個人的には大満足だ。